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ヤスミン・ナグディ <br>Photo: NBS

2023/01/18(水)Vol.462

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演
ヤスミン・ナグディ インタビュー
2023/01/18(水)
2023年01月18日号
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バレエ

ヤスミン・ナグディ
Photo: NBS

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演
ヤスミン・ナグディ インタビュー

英国ロイヤル・バレエ団日本公演を前に、主演プリンシパルのインタビューをお届けする2回目はヤスミン・ナグディ。彼女自身のジュリエット像、振付家マクミランについて抱くイメージなど、フリーライターの小田島久恵さんのインタビューに応えてくれました。

「ジュリエットはとてもナチュラルで人間性のある役だと思っています。そういった観点からストーリーを伝えていくのは大変なことでもあるのですが」

――ヤスミンさんが初めてジュリエットを踊ったときのことを覚えていますか?

ナグディ:22歳のときで、ソリストとして初めての大きな舞台でした。マシュー・ゴールディングが相手役で、芸術監督のケヴィンから急遽言われたときは本当に驚きました。夢の演目だったので「あの中に入れてもらえるんだ」とわくわくしたのを覚えています。コール・ド・バレエで踊っていたときに色々なバレリーナのジュリエットを見てきましたが、それぞれ違った解釈をしていたと思います。そこからいいところを吸収して自分のジュリエットを作っていきました。ジュリエットはとてもナチュラルで人間性のある役だと思っています。チュチュも着ていないですし、人間的な演じ方が出来る。そういった観点からストーリーを伝えていくのは大変なことでもあるのですが。

『ロミオとジュリエット』ヤスミン・ナグディ&マシュー・ボール(2015年英国ロイヤル・バレエ団公演より)
Photo: Alice Pennefather

――プロコフィエフの音楽の存在感も凄いバレエですが、準備しているときはずっと聴いているのですか?

ナグディ:自分の血の中に音楽が流れるくらい聴きます。音楽と、あとフランコ・ゼッフィレッリの映画のジュリエットにインスピレーションを得ていますね。あのジュリエットは私の憧れです。私はマクミラン版しか踊ったことがないのですが、第3幕のベッドに座っているだけのシーンがとても好きなのです。ほとんどびくとも動かず、音楽にすべてを語らせ、観ている人たちはジュリエットの心の内側を想像するのです。ここまでにあったシーンをすべて回想し、客席に向かって静かに座っているだけで何が描かれているのか連想させる。すごいなと思いますし、あそこでは演じているというより、ジュリエットという存在になりきっています。すべての時間と空間が私の中で流れているのですね。

――改めてその場面の重要さを知りました。他に好きなシーンはありますか?

ナグディ:第3幕のベッドルームのパ・ド・ドゥです。力を失った人形のようにぐったりとして希望を失ってしまった動きをするのですが、ダンサーとしては面白い経験ですね。

――婚約者パリスと踊るシーンは、確かにとても特殊な動きです。マクミランという振付家に対しては、どのようなイメージを抱いていますか?

ナグディ:スタジオではいつもタバコをふかしていて、感動というものに関心がなかったという人だと聞いています。ダンサーが素晴らしい踊りを見せても、ポーカーフェイスでまったく感動を表さない。もしかしたら、その時代の振付家はそういう人が多かったのかも知れません。アシュトンもそんな人だったといいます。マクミランはそんなふうにスタジオにいて、頭の奥からはストーリーが湧き出していたのでしょう。とてもキャラクター性があって、ユニークな芸術家だと思います。

『ロミオとジュリエット』 ヤスミン・ナグディ(2019年英国ロイヤル・バレエ団公演より)
Photo: 2019 ROH. Helen Maybanks

――ジュリエットを踊り終わった後は、毎回どんな状態になりますか?

ナグディ:楽屋に戻ってもアドレナリンは出っ放しで、なかなか現実の入り口に戻れないですね。その日は一日ジュリエットが抜けない。彼女がステージで経験するジャーニーがとても素晴らしいので、踊った後もエモーションが続いていくんです。

――特にお気に入りのシーンはありますか?

ナグディ:第3幕でジュリエットが急に独りになってしまう場面が好きですね。家族が去ってしまったり、薬を飲んだりする場面です。たくさん人がいた後の一人の演技は、踊り甲斐があります。

――強烈な役なのですね。ヤスミンさんは10代の頃からバレリーナとして多くの受賞歴があり、早くに頭角を表してきた経歴がありますが、性格的にもストイックで妥協がないタイプなのではないでしょうか?

ナグディ:努力家という側面はダンサーには必要だと思います。そうした強い要望をなくしてしまうと、何かが死んでしまうのではないでしょうか。大きな目標を設定して、夢を大きく描いて......。海外でもたくさん踊りたいですね。新しい人々と出会いたいし、新しいパートナーとも踊ってみたい。そのことで私自身が成長できるのだと思います。ロミオも新しい相手だと、違った気持ちを引き出してくれるのです。今シーズンは3人のロミオと踊りました。それぞれ私の中の違った気持ちを引き出してくれるので、私も3タイプのジュリエットを踊ることが出来たんです」

取材・文:小田島久恵(フリーライター)

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英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演

公演日 [東京公演]

〈ロイヤル・セレブレーション〉
2023年
6月24日(土)13:00
6月24日(土)18:00
6月25日(日)13:00

【上演予定作品】
「ジュエルズ」より"ダイヤモンド" [全編](ジョージ・バランシン振付)
「田園の出来事」(フレデリック・アシュトン振付)
「FOR FOUR」(クリストファー・ウィールドン振付)
「プリマ」(新作)(ヴァレンティノ・ズケッティ振付)

ケネス・マクミラン振付「ロミオとジュリエット」
【公演日時と予定される主な配役】
2023年
6月28日(水)18:30
 ジュリエット:サラ・ラム
 ロミオ:スティーヴン・マックレー
6月29日(木)13:30
 ジュリエット:ヤスミン・ナグディ
 ロミオ:マシュー・ボール
6月29日(木)18:30
 ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
 ロミオ:セザール・コラレス
6月30日(金)18:30
 ジュリエット:ナターリヤ・オシポワ
 ロミオ:リース・クラーク
7月1日(土)13:00
 ジュリエット:アナ・ローズ・オサリヴァン
 ロミオ:マルセリーノ・サンベ
7月1日(土)18:00
 ジュリエット:マリアネラ・ヌニェス
 ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
7月2日(日)13:00
 ジュリエット:高田 茜
 ロミオ:平野 亮一

会場:東京文化会館(上野)

入場料 [東京公演](税込)

S=¥26,000 A=¥23,000 B=¥20,000
C=¥16,000 D=¥12,000 E=¥9,000
U25シート=¥5,000
*2演目セット券[S,A,B席]あり
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

[大阪公演]

「ロミオとジュリエット」
7月5日(水)18:30 
 ジュリエット:金子扶生
 ロミオ:ワディム・ムンタギロフ

会場:フェスティバルホール

[姫路公演]

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉
7月8日(土) 14:00

会場:アクリエひめじ 大ホール