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高田 茜<br>Photo: Nobuhiko Hikiji

2023/02/01(水)Vol.463

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演
高田 茜インタビュー
2023/02/01(水)
2023年02月01日号
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バレエ

高田 茜
Photo: Nobuhiko Hikiji

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演
高田 茜インタビュー

英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのインタビュー3回目は高田茜。2016年の最高位昇進のニュースは日本のファンを大いに沸かせました。活躍を続け、今年6〜7月に予定される日本公演ではついにマクミラン振付『ロミオとジュリエット』に主演。憧れたジュリエット役に、どのように取り組んでいるかなど、フリーライターの加藤智子さんのインタビューに応えてくれました。

「演技をするうえで人生経験はとても大切。今度日本公演で踊るときは、もっと開放的なジュリエットになるかもしれません」

――プリンシパルとしての6年間、どのような日々を過ごされてきましたか。

高田 茜:いつもがむしゃらでした。プリンシパルになる以前からずっと自分の舞台に満足できず、苦しいことも多かったのですが、怪我で踊れない時期があったりコロナ禍を経験したりしたことで、「バレエができる!」「バーレッスンができる!!」──それが楽しいと純粋に思えるようになりました。これまで経験した一つひとつの舞台が心に残っているので、印象的な舞台を一つだけを挙げるのは難しいけれど、たとえば2017年にマクミランの『マイヤリング(うたかたの恋)』のマリー・ヴェッツェラを、怪我で降板したダンサーの代役として踊ったことでしょうか。全幕の主役を、4日ほどのリハーサルでつくり上げるという経験はそれまでなかったことです。

――翌年にはマクミランの『マノン』、さらに2019年には『ロミオとジュリエット』に主演されました。

高田:小さい頃からマクミランの全幕を踊りたいと思っていましたが、とくにジュリエットはコール・ド・バレエの頃からいろんなダンサーの舞台を見て憧れていました。

――初めてのジュリエット。役作りはどのように取り組まれたのですか。

高田:ジュリエットの生い立ちについて考えて、なぜそこまで恋い焦がれたのか、どうしてそういう感情になったのかと考えながら、でした。その一方で、マクミランの作品はすべて、決められたステップを踊るだけで物語が語られる、セリフを言っているように見えるので、変に何かをしようとせず、自然に出てくる感情に身を任せることもあります。ステップと次のステップのあいだに間があったりすると、そこに自分の感情を自由に入れることもできるんです。

『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥ(2022年〈ロイヤル・ バレエ・ガラ〉より)相手役はアレクサンダー・キャンベル
Photo: Kiyonori Hasegawa

――ジュリエットという女性について、どのように捉えて演じられましたか。

高田:あの時代の女性には自分を表現できる場はなかった。ロミオと恋に落ちることで、それがどんどん解き放たれていく、というイメージでした。最初からとても開放的なジュリエットを演じるダンサーは多いけれど、2019年に踊ったときの私はすごく内向的なジュリエットだったかもしれません。私自身がすごくシャイなので(笑)、どうしてもそこに寄っていってしまう。でも今度日本公演で踊るときは、もっと開放的なジュリエットになるかもしれません。そこはまだ、わかりません。演技をするうえで人生経験はとても大切だし、経験していないことを想像だけで表現しても真実味はない。最初に踊ってからこの数年、いろんなことがありましたから、私自身、どんなジュリエットになるのか楽しみです。

――見どころにあふれたバレエですが、とくに心を動かされるシーンはありますか。

高田:観ていて好きな場面は、第2幕のマキューシオの死、それに続くティボルトの死。彼の亡骸を前にキャピュレット夫人が激しく嘆くシーンが印象的です。主役以外のキャラクターにもその役自身の人生があって、それが表現されることで物語の厚みが増す。重要なシーンですね。演じていて好きなのは第3幕、ロミオと離れ離れになったジュリエットが、ベッドに一人座って葛藤するシーンがありますが、その直前の、家族全員がジュリエットを見放してからの一連の場面です。彼女はそこで、自分は一人ぼっちだと、もう誰もいないのだと気づく──。怖いですよね。10代という若さで、初めて一人になって、どうしたらいいかわからなくなってしまうのは。

――そうした場面の表現をどのようにして形にしていくのですか。

高田:どんな役でも、演じるときに考えることがあるのですが、人間の身体には、無意識に動いてしまう場所がある。落ち込んでいるときはこう、肩が前に出てしまうとか、胸が少し沈んでくるとか、伏し目がちになるとか──。そうした心理と動きについての本を読むのも好きですし、役作りをすること自体、楽しいですね。

高田 茜
Photo: Nobuhiko Hikiji

――英国ロイヤル・バレエ団の代表作にして、世界中の人々に愛され続けている作品ですが、その人気の秘密はどんなところにあると思われますか。

高田:人間味を感じさせるバレエだからではないでしょうか。人間って複雑で、楽しいだけの人生なんてない。言葉で言い表せないような気持ちを表現できるのがマクミランですし、ロイヤル・バレエ団ならではです。また、ダンサー一人ひとりがそれぞれに全く違う感情をもって演技する、そこがロイヤル・バレエ団の素晴らしいところですから、その違いも楽しんでいただけたら。ぜひ多くの方々に観ていただきたいと思っています。

インタビュー・文:加藤智子(フリーライター)

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/royalballet/

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英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演

公演日 [東京公演]

〈ロイヤル・セレブレーション〉
2023年
6月24日(土)13:00
6月24日(土)18:00
6月25日(日)13:00

【上演予定作品】
「ジュエルズ」より"ダイヤモンド" [全編](ジョージ・バランシン振付)
「田園の出来事」(フレデリック・アシュトン振付)
「FOR FOUR」(クリストファー・ウィールドン振付)
「プリマ」(新作)(ヴァレンティノ・ズケッティ振付)

ケネス・マクミラン振付「ロミオとジュリエット」
【公演日時と予定される主な配役】
2023年
6月28日(水)18:30
 ジュリエット:サラ・ラム
 ロミオ:スティーヴン・マックレー
6月29日(木)13:30
 ジュリエット:ヤスミン・ナグディ
 ロミオ:マシュー・ボール
6月29日(木)18:30
 ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
 ロミオ:セザール・コラレス
6月30日(金)18:30
 ジュリエット:ナターリヤ・オシポワ
 ロミオ:リース・クラーク
7月1日(土)13:00
 ジュリエット:アナ・ローズ・オサリヴァン
 ロミオ:マルセリーノ・サンベ
7月1日(土)18:00
 ジュリエット:マリアネラ・ヌニェス
 ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
7月2日(日)13:00
 ジュリエット:高田 茜
 ロミオ:平野 亮一

会場:東京文化会館(上野)

入場料 [東京公演](税込)

S=¥26,000 A=¥23,000 B=¥20,000
C=¥16,000 D=¥12,000 E=¥9,000
U25シート=¥5,000
*2演目セット券[S,A,B席]あり
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

[大阪公演]

「ロミオとジュリエット」
7月5日(水)18:30 
 ジュリエット:金子扶生
 ロミオ:ワディム・ムンタギロフ

会場:フェスティバルホール

[姫路公演]

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉
7月8日(土) 14:00

会場:アクリエひめじ 大ホール