今秋のローマ歌劇場日本公演に先駆け、1月に〈名歌手シリーズ〉コンサートで来日し、サントリーホールの聴衆総立ちの喝采を受けたヴィットリオ・グリゴーロ。"次はオペラを!"と望んだファンの声が高まるのも当然のことでしょう。ローマ歌劇場、『トスカ』、そしてカヴァラドッシについて熱く語ってくれたインタビューをご紹介します。
――まず、あなたにとってのオペラ『トスカ』とは?
グリゴーロ:最も素晴らしい作品だと思っています。『トスカ』でカヴァラドッシを歌った後は、1カ月半くらいは『トスカ』から抜け出せない。それだけエネルギーを必要とするんです。
――ズバリ、あなたのカヴァラドッシ像とは?
グリゴーロ:彼は自分がどういう状況に置かれているのかをわかっている人。情熱的で芸術家で、その時代の活動家として政治や社会に興味を持っていた人です。そしてトスカに対しては自分の知らないものに魅かれるということで愛したのです。私はいまの時代のカヴァラドッシです(笑)。
――子どものころに羊飼い役で共演されたパヴァロッティのカヴァラドッシの影響を受けていると感じますか?
グリゴーロ:彼と共演したのは13歳のときだったので、それほど直接的なことはないでしょうね。ただ、彼が私に"君はナンバーワンになるすべてを持っている"という言葉をくれたことは大切に思っています。
パヴァロッティと共演したときのグリゴーロ
Photo:ヴィットリオ・グリゴーロFaceboookより
――ローマ歌劇場ではすでに『トスカ』のカヴァラドッシを歌っていらっしゃいますが、ゼッフィレッリ演出は今回が初めてですね。
グリゴーロ:はい、『トスカ』はないけれど、彼の『椿姫』『ボエーム』『カルメン』では歌っています。最初はローマ歌劇場の『椿姫』でした。以来、ゼッフィレッリとは深い友情で結ばれていました。彼からは、「ヴィットリオ、君はもっとディーヴォでなければいけないよ」と言われました。私は主役を務めるときも、みんなとワイワイ仲良くやっていたんですが、ゼッフィレッリはスター然とした人が好きだったので、そう言ってくれたのでしょう。
ゼッフィレッリとグリゴーロ
Photo提供:ヴィットリオ・グリゴーロ
――ローマ歌劇場ではパヴァロッティ、そしてゼッフィレッリとも印象的なエピソードがあるんですね。
グリゴーロ:そして私はローマを愛しています! 生まれはちがうけれど、私のなかにはいつもローマがあります。だから、ほかのどの歌劇場以上にローマ歌劇場とは幸せな関係があると感じています。劇場の良し悪しとか重要性といったことではなく、私にとってどれほど大切か、という意味で。
Photo: Shoko Matsuhashi
――今回のトスカ役ソニア・ヨンチェヴァさんとは以前にも『トスカ』で共演していますね。共演を重ねることで積み上げられていくものはありますか?
グリゴーロ:ソニアとの関係は通常とは少しちがうストーリーがあります。というのも、まだ彼女がデビューして間もないころ、ドイツのツアーでイタリア人のテノールを探していて、そのオファーが私のところに来たんです。彼女の声を聴いて、私はすぐに承諾しました。そしてそのツアーの後、今度は私のアルバムにも彼女に参加してもらって『ロメオとジュリエット』の曲を一緒に歌ったんです。
――彼女の声とご自分の声との相性を確信できたということですね。
グリゴーロ:そうです。最初から、彼女には才能があると思いました。聴いてすぐに! いまでは彼女はオペラ界で重要な歌手、スターになりました。だから今度の『トスカ』は日本の観客にとって最高の機会になると思います。
Photo: Shoko Matsuhashi
――以前、ご自身がワインをつくられていることから、声とワインの熟成は似ているとおっしゃっていました。ご自分の声もワインのように熟成されてきたと感じるきっかけがあったのでしょうか?
グリゴーロ:声は徐々に変わってきたので、いつ、ということではありません。極端なことを言えば、オペラを歌うたびに変わってきたといえるでしょう。私がつくっているワインに「OPERA VIVA」(オペラ・ヴィーヴァ)という名前をなぜつけたかというと、「生きているオペラ」という意味なんです。ワインはボトルに入れますが、たとえばこれを、オペラの役柄をボトルに入れたとします。するといずれもボトルのなかでも熟成を続けるんです。ということは、5年後に私がカヴァラドッシを歌うとしたら、それはいまの私が歌うカヴァラドッシとはちがうんです。今年の秋に『トスカ』の公演に来た人が、5年後に私の同じ声を聴こうと思ってはダメなんです。声はどんどん変わっていく、いまの声、いまの歌はいまだけのもの。5年後にはちがう声、ちがう歌になるんですから。それが必ずよくなるかどうか、というのとは別の話だけどね(笑)。
――いまを聴き逃すと、先がよくても悪くてもわからないということですね。
グリゴーロ:そうです、楽しみにいらしてください!
インタビュー 2023年1月26日
自身の農園にて
Photo提供:ヴィットリオ・グリゴーロ
指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ソフィア・コッポラ
9月13日(水)15:00 東京文化会館(上野)
9月16日(土)15:00 東京文化会館(上野)
9月18日(月・祝)15:00 東京文化会館(上野)
[予定される主な出演者]
アルフレード:フランチェスコ・メーリ
ヴィオレッタ:リセット・オロペサ
ジェルモン:アマルトゥブシン・エンクバート
指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
9月17日(日)15:00 神奈川県民ホール(横浜)
9月21日(木)15:00 東京文化会館(上野)
9月24日(日)15:00 東京文化会館(上野)
9月26日(火)15:00 東京文化会館(上野)
[予定される主な出演者]
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
スカルピア:ロマン・ブルデンコ
S=¥59,000 A=¥52,000 B=¥45,000
C=¥37,000 D=¥30,000 E=¥20,000
U29シート=¥8,000
U39シート=¥15,000
※U39シートは9/13(水)「椿姫」、9/21(木)「トスカ」限定での販売となります。
ローマ歌劇場2023年日本公演公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/roma/index.html