NBS News Web Magazine
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
NBS日本舞台芸術振興会
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
Photo: Mary Brown

2023/04/19(水)Vol.468

フロランス・クレールが語る
〈オペラ座ガラ〉とヌレエフの思い出
2023/04/19(水)
2023年04月19日号
TOPニュース
バレエ

Photo: Mary Brown

フロランス・クレールが語る
〈オペラ座ガラ〉とヌレエフの思い出

〈オペラ座ガラーヌレエフに捧ぐー〉は、"ヌレエフ世代"の一人フロランス・クレールのもと開催されます。プログラム、ダンサーの選択だけでなく、リハーサルのコーチを行うことにもこだわったというクレール。ヌレエフとともにパリ・オペラ座の黄金時代を担った彼女がこの公演に込めた思いをパリ在住の大村真理子さんに語ってくれました。

クラシック・バレエへの愛、そして師であるヌレエフへの敬意が込められた念願の実現

「素晴らしいダンサーたちを集めた小さなカンパニーの来日公演といったイメージなんですね、この〈オペラ座ガラ─ヌレエフに捧ぐ─〉は。大きなインスピレーション源となったのは、私も参加していた"ヌレエフ&フレンズ"です」

この夏のガラのアーティスティック・ディレクションを司るフロランス・クレールがこう語る。"ヌレエフ&フレンズ"はルドルフ・ヌレエフが1974年から1991年まで続けたグループ公演だ。フロランスはもちろん、シャルル・ジュド、イザベル・ゲラン、マニュエル・ルグリたちが参加して世界を巡った。ヌレエフをパートナーに、彼女は『ナポリ』『ゼンツァーノの花祭り』をこの公演で何度も踊ったそうだ。
「若かった私は彼に対して気後れしてしまって......だから私がリラックスできるようにと、彼はいつも気遣ってくれました。彼の目をみてください、笑みが感じられるでしょ。彼がパリ・オペラ座の芸術監督になる以前から一緒に踊る機会に恵まれて、例えば1979年に彼が『マンフレッド』を創作した際は、私をパートナーに選んでくれました。あいにくと彼は足を怪我してしまって、踊れたのは公演最終日だけでしたけど。彼との舞台はいつも楽しかったですね」

「ライモンダ」ルドルフ・ヌレエフと
写真提供:フロランス・クレール

今回のガラで踊られる『ライモンダ』では、彼女もライモンダ役で創作に参加している。"真の美しいクラシック・ダンス"と彼女が評するこの作品が出来上がるまで、実に時間がかかったそうだ。創作参加者は朝10時から夜の10時までヌレエフのために体のコンディションを整えて待機し、毎日が興奮の日々。創作ダンサーであることに幸せを見出しているダンサーたちの間には、健全な競争心があったと当時を振り返る。
「ダンサーたち、ダンス芸術、カンパニーに対する尽力という点でヌレエフは、素晴らしい模範でした。そして仕事に対する勇気、自己拘束。"ヌレエフの子供たち"と呼ばれる私たち世代はこうしたことを彼から学んでいます。みんなが仕事の虫だったんです。ヌレエフ自身も夜の外出がどれほど長引いても、翌朝は必ずバーの前にいました」

休日に。クレールとヌレエフ
写真提供:フロランス・クレール

これがイコール、オペラ座の黄金時代なのだ。この良き時代を懐かしむだけでなく、パリ・オペラ座に取り戻したいと彼女は心の中で願っているに違いない。〈オペラ座ガラーヌレエフに捧ぐー〉のプロジェクトにおいて、プログラムもダンサーの選択も自身で行い、さらにリハーサルのコーチを行うことに彼女はこだわったという。このガラで初めて日本の観客を前に踊る作品もあるダンサーたちは、オペラ座の舞台と並行して、来日前に彼女との稽古の時間をたっぷりとる必要があるだろう。
「それを承知で参加するダンサーばかり。そうでなければ、私は選ばなかったでしょう。内容が充実したプログラムに対して全員がモチベーションに溢れ、やる気満々ですよ。今、私はかつて舞台で踊ったのと同じくらい、教えることに喜びを見出しています。現役時代にオペラ座で教師のジェニア・ポリアコフとアレクサンドル・カリウニのクラスレッスンから学んだこと、そしてヌレエフのクラスレッスンでの姿の記憶。これが今も私のエスプリにしっかりと刻まれています。それを若いダンサーたちに可能な限り伝えたいと願っているので、私自身も毎日トレーニングを欠かしません」

かつてロシアのカンパニーにあった個人コーチのシステムは素晴らしい結果をもたらすと評価する彼女。ガラの出演者の中には彼女が個人コーチ的にみているダンサーも含まれていて、互いの間に真のわかちあいがあるという。
「このガラの企画は長く温めていたものです。コロナ禍の影響で、やっと今年実現できることになりました。その間に私が選んであったダンサーたちはエトワールに任命され、プルミエールに上がって......これは嬉しい驚きでした」

Photo: Mary Brown

"ヌレエフ&フレンズ"のツアーでダンサーたちが幸せだったように、このガラに参加するダンサーたちも幸せであって欲しいと願う彼女。ソリストに限らず全員が持ち味を発揮できるプログラムを用意した。〈オペラ座ガラ─ヌレエフに捧ぐ─〉には、彼女のダンサーたちとクラシック・バレエへの愛、そして師であるヌレエフへの敬意がたっぷりと込められているのだ。

取材・文 大村真理子 パリ在住、エディター

公式サイトへ チケット購入

ルドルフ・ヌレエフ 没後30年記念
〈オペラ座ガラーヌレエフに捧ぐー〉

公演日

【Aプロ】
7月26日(水)19:00
7月27日(木)19:00

【Bプロ】
7月29日(土)13:30
7月29日(土)18:00
7月30日(日)14:00

会場:東京文化会館(上野)

入場料[税込]

S=¥18,000 A=¥16,000 B=¥14,000
C=¥10,000 D=¥7,000 E=¥5,000
U25シート=¥3,000
*2演目セット券[S,A,B席]あり
*ペア割引あり[S,A,B席]
*親子割引[S,A,B席]あり