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Photo: Silvia Lelli-Teatro dell'Opera di Roma

2023/06/07(水)Vol.471

ローマ歌劇場2023年日本公演に向けて
ローマ、ミラノ最新情報!
2023/06/07(水)
2023年06月07日号
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オペラ

Photo: Silvia Lelli-Teatro dell'Opera di Roma

ローマ歌劇場2023年日本公演に向けて
ローマ、ミラノ最新情報!

秋の日本公演に向けて準備が進められているローマ歌劇場の様子を田口道子さんが届けてくれました。ジャンブローネ総裁の意欲あふれる言葉は日本公演への期待をますます高めます。ソニヤ・ヨンチェヴァ、アマルトゥブシン・エンクバートのミラノでの活躍ぶりも!

「イタリアを代表する歌劇場による、イタリアを代表する作曲家の作品を上演します。
重厚で豪華な舞台装置のプロダクションを日本で上演するのは、総合芸術としてのオペラを楽しんでもらいたいからです」

久しぶりに訪れたイタリアは活気に溢れている。コロナ感染の恐怖など微塵も感じられないほど街中は人でいっぱいだ。今まで自粛生活に耐えてきた反動かホテルは満室、レストランも満席状態だ。そして、劇場にも人々が足を運ぶようになって、やっとコロナ前の状態に戻ってきたようだ。ミラノ・スカラ座もローマ歌劇場もチケットの売り切れが続いている。
今年9月の日本公演を間近に控えたローマ歌劇場で、準備の様子を見てきた。

フランチェスコ・ジャンブローネ総裁
Photo: Fabrizio Sansoni-Opera di Roma

まずはジャンブローネ総裁にお話を伺った。「コロナ禍を乗り越えて劇場が順調に活動を回復し、4年ぶりの日本公演が実現することをとても嬉しく思っています。ローマ歌劇場はイタリアの首都にあるイタリアを代表する歌劇場です。今回はイタリアを代表する偉大な演出家ゼッフィレッリのプロダクションである、ローマを舞台にした名作『トスカ』とイタリアを代表する世界的なデザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニがデザインした衣裳の『椿姫』を上演しますが、イタリアを代表する著名なヴェルディとプッチーニの、世界で最も愛されている作品をイタリアの若手で現在最も将来を嘱望されているミケーレ・マリオッティの指揮で、日本の皆様に鑑賞していただくことに大きな誇りを感じています」と満面の笑みを浮かべて語ってくれた。
確かに、ローマ歌劇場には旅公演に適した仕込みの簡単な『トスカ』もあるのだが、敢えて重厚で豪華な舞台装置のプロダクションを日本で上演するのは、日本の観客に総合芸術としてのオペラを楽しんでもらいたいからだという。「オペラは声の饗宴のみではないのです。舞台装置も衣裳も重要な要素であることをお見せしたいのです。ゼッフィレッリの生誕から100年を記念する見ごたえのある上演になるに違いありません」と総裁は強調した。

2018年日本公演『椿姫』の建て込み一日目。舞台上は工事現場さながら。
『椿姫』第1幕、ヴィオレッタのサロンの壁は最も大型の装置の一つ。2018年日本公演の際は、車体後方が扉となっている一般的なトラックでは運び出しに支障があるため、車体側面が開くトラックが用いられた。

「この舞台装置を用いて日本の劇場で上演するためには多くの問題を解決する必要がありました。大道具のスタッフ数名が、道具の手直しのためにこの2カ月ずっと工房で働いています」と美術部長のデッラチョッパ氏は言う。船に乗せる道具や衣裳が無事に横浜に着いて、東京文化会館と神奈川県民ホールの舞台の仕込みが終わるまで彼は気が気ではないだろう。

『椿姫』、ヴィオレッタのサロンで華やかな輝きを放つシャンデリア。2018年日本公演の際には輸送中に一部破損が生じたため、職人が修復。

さて、ミラノに戻るとスカラ座では『アンドレア・シェニエ』を上演していた。ヨナス・カウフマン、ソニア・ヨンチェヴァ、アマルトゥブシン・エンクバートが名を連ねるキャストでは、チケット売り切れも不思議ではない。最近、専属歌手のようにスカラ座で頻繁に主役を演じているバリトンのエンクバートを聴いてみようと出かけた。モンゴル出身のバリトンはここ数年ヨーロッパで目覚ましい活躍をしている。確かに迫力ある美声と説得力のある表現は素晴らしいと思った。驚いたのは観客の反応だった。ジェラール役の彼が「国を裏切る者」を歌い終わると歓声と共に拍手が起こり、なかなか鳴り止まないのだ。長年スカラ座に足を運ぶ私の初体験だった。ヨンチェヴァも素晴らしかった。彼女のアリア「母は死にました」にも大きな拍手が送られた。ローマ歌劇場日本公演ではこの二人が『トスカ』のタイトルロールと『椿姫』のジェルモンとして登場する。観客を魅了すること間違いない。声の饗宴と舞台美術の両方を満喫できる9月の公演がとても楽しみだ。

取材・文:田口道子(演出家)

ミラノ・スカラ座『アンドレア・シェニエ』カーテンコールの模様の動画をご覧いただけます。
[ソニア・ヨンチェヴァfacebookより]
https://fb.watch/kV5quncdm-/

公式サイトへ チケット購入

ローマ歌劇場2023年日本公演
「椿姫」全3幕
「トスカ」全3幕

公演日

ジュゼッぺ・ヴェルディ
「椿姫」全3幕

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ソフィア・コッポラ
9月13日(水)15:00 東京文化会館(上野)
9月16日(土)15:00 東京文化会館(上野)
9月18日(月・祝)15:00 東京文化会館(上野)

[予定される主な出演者]
アルフレード:フランチェスコ・メーリ
ヴィオレッタ:リセット・オロペサ
ジェルモン:アマルトゥブシン・エンクバート

ジャコモ・プッチーニ
「トスカ」全3幕

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
9月17日(日)15:00 神奈川県民ホール(横浜)
9月21日(木)15:00 東京文化会館(上野)
9月24日(日)15:00 東京文化会館(上野)
9月26日(火)15:00 東京文化会館(上野)

[予定される主な出演者]
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
スカルピア:ロマン・ブルデンコ

入場料[税込]

S=¥59,000 A=¥52,000 B=¥45,000
C=¥37,000 D=¥30,000 E=¥20,000
U29シート=¥8,000
U39シート=¥15,000 ※U39シートは9/13(水)「椿姫」、9/21(木)「トスカ」限定での販売となります。

ローマ歌劇場2023年日本公演公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/roma/index.html