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Photo: Fabrizio Sansoni-Teatro dell’Opera di Roma

2023/07/05(水)Vol.473

ローマ歌劇場2023年日本公演
ミケーレ・マリオッティ インタビュー(前編)
2023/07/05(水)
2023年07月05日号
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オペラ

Photo: Fabrizio Sansoni-Teatro dell’Opera di Roma

ローマ歌劇場2023年日本公演
ミケーレ・マリオッティ インタビュー(前編)

9月のローマ歌劇場日本公演で同歌劇場音楽監督としては初めての来日となるミケーレ・マリオッティ。この6月下旬には東京交響楽団の指揮者として日本のオーケストラを初めて指揮。リハーサルの合間に応えてくれたインタビューを2回にわたってご紹介します。
前編では、ローマ歌劇場音楽監督としての意欲的な取り組みと『トスカ』の作曲家プッチーニについて。

「プッチーニの作品には偉大な愛を感じます」

東京交響楽団とのリハーサルが予定よりも早く終わると連絡があったインタビュー当日、お疲れのためか?と一瞬不安もよぎったが、軽やかな足取りと笑顔で現れたマリオッティ。「東京交響楽団には音楽を作り出す自由さがあります。とても素晴らしい音楽家たちなのです」と、スムーズなリハーサルにとても満足してのことだったのだ。実際、翌日のコンサートでは彼が目指すものを見事に生み出している素晴らしい演奏が繰り広げられた。美しい音と繊細な音のニュアンス、ドラマ性を感じさせるシューベルトの「ザ・グレイト」は聴衆を幸福にした。

では、ローマ歌劇場のお話を。

――まずはじめに、ローマ歌劇場の音楽監督を引き受けられた、その決め手となったことは?

マリオッティ:いくつかの理由があります。なかでも大きなものといえば、ローマだから、ですね。ご承知の通りローマ歌劇場はイタリアの首都の歌劇場です。ここで起こることはよくもわるくもみなさんに注目されます。私はボローニャ歌劇場では12年間指揮をして来ましたが、その後にローマ歌劇場に来ることは私にとってステップアップです。よりインターナショナルな舞台に立てると思ったのです。すでに、昨年のシーズン・オープニングでは『カルメル派修道女の対話』を指揮しましたし、来年は『ピーター・グライムズ』を振ります。こうして私自身のレパートリーも広がっています。

――シーズン開幕といえば、昨年、就任最初の2022/23 シーズンプログラム発表の際に、一気に向こう3シーズンの開幕演目が発表されたことにとても驚きました。

マリオッティ:そうですよね、私も驚いた(笑)。普通ではないけれど、ローマ歌劇場が未来に対する継続性を重視していることを示したプレゼンテーションだったと思います。

――いま現在、ローマ歌劇場における手ごたえはどのように感じていらっしゃいますか?

マリオッティ:劇場はいまとても重要な時期だと考えています。それは、変化のときだから。以前、マエストロ(リッカルド)・ムーティによって変化がもたらされましたが、それと同様にね。実は今度、オーケストラと合唱団のオーディションを行うんです。これによってまた新しい空気が吹き込まれるはずです。いまも私は劇場で、みんながとても情熱をもって、やる気にあふれていると感じているので、今後にもとても期待しています。

Photo: Lorenza Daverio

――オーディションは恒常的にやっていかれるんですか?

マリオッティ:コンスタントにかどうかは決まっていませんが、今年と来年はやることにしています。

――マリオッティさんの音をつくっていくため、ですね?

マリオッティ:あはは(笑)。1年目のいまもすでに素晴らしいんですよ。オーケストラは、どのように音楽をつくっていこうとしているかを即座に理解してくれました。お互いに理解し合えたんです。これは毎日の努力の積み重ねによって実現するものなんです。

――相思相愛......ですね。

マリオッティ:それと、新しいことがもう一つあります。シンフォニーのシーズンをもつことにしました。これはオーケストラと合唱団にとって、とても重要なことなんです。オーケストラはピットに入ってオペラを演奏するだけでなく、舞台に上がっての演奏もしなくちゃ(笑)

――オペラのシーズン中に?

マリオッティ:そうです。

――ますますお忙しくなりますね!

マリオッティ:幸せな努力ですよ。

ローマ歌劇場音楽監督として、忙しくなるのは幸せな努力、と語るミケーレ・マリオッティ
Photo: NBS

――日本公演の演目についてうかがいます。まずは『トスカ』について。

マリオッティ:すごく素晴らしい作品です。永遠に、です。今回『トスカ』を振れることはとても幸せです!

――プッチーニに対して、ローマ歌劇場では〈三部作〉を20世紀の作品と組み合わせて上演されます。今年は『外套』と『青ひげ公の城』、来年は『修道女アンジェリカ』とダラピッコラの『囚われ人』、その後『ジャンニ・スキッキ』とラヴェルの『スペインの時』。これが発表されたときに、プッチーニに対して、特別なお考えがあるのかと思いました。

フランコ·ゼッフィレッリ演出『トスカ』第3幕
Photo: Teatro dell'Opera di Roma

マリオッティ:特別な考えということではないです。ただ、プッチーニの作品には偉大な愛を感じます。私自身、年を重ねることで成熟し、それとともにプッチーニの偉大さがより理解できるようになりました。プッチーニという作曲家は彼が生きた時代のはるか先をいくものをつくったのだということを感じます。音楽的語法や上演がどうあるべきか、といった点でね。20世紀の作品と組み合わせることで、プッチーニがいかに20世紀的な音楽家であったか、を知ってほしいと思いました。今年の『外套』と『青ひげ公の城』は、印象主義と表現主義を混ぜるような感じだったでしょう。

――お客さまの反応は?

マリオッティ:とてもよかった!

――特別なことはないとおっしゃいましたが、プッチーニへのお考えはたっぷりあるとわかりました。

[後編につづく]

[インタビュー 2023年6月23日]

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ローマ歌劇場2023年日本公演
「椿姫」全3幕
「トスカ」全3幕

公演日

ジュゼッぺ・ヴェルディ
「椿姫」全3幕

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ソフィア・コッポラ
9月13日(水)15:00 東京文化会館(上野)
9月16日(土)15:00 東京文化会館(上野)
9月18日(月・祝)15:00 東京文化会館(上野)

[予定される主な出演者]
アルフレード:フランチェスコ・メーリ
ヴィオレッタ:リセット・オロペサ
ジェルモン:アマルトゥブシン・エンクバート

ジャコモ・プッチーニ
「トスカ」全3幕

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
9月17日(日)15:00 神奈川県民ホール(横浜)
9月21日(木)15:00 東京文化会館(上野)
9月24日(日)15:00 東京文化会館(上野)
9月26日(火)15:00 東京文化会館(上野)

[予定される主な出演者]
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
スカルピア:ロマン・ブルデンコ

入場料[税込]

S=¥59,000 A=¥52,000 B=¥45,000
C=¥37,000 D=¥30,000 E=¥20,000
U29シート=¥8,000
U39シート=¥15,000 ※U39シートは9/13(水)「椿姫」、9/21(木)「トスカ」限定での販売となります。

ローマ歌劇場2023年日本公演公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/roma/index.html

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