NBS News Web Magazine
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
NBS日本舞台芸術振興会
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
Photo:  Victor Santiago

2023/08/16(水)Vol.476

ローマ歌劇場2023年日本公演
ヨンチェヴァが語る『トスカ』
2023/08/16(水)
2023年08月16日号
TOPニュース
インタビュー
オペラ

Photo: Victor Santiago

ローマ歌劇場2023年日本公演
ヨンチェヴァが語る『トスカ』

いよいよ開幕まで1カ月となったローマ歌劇場日本公演。今回が日本でのオペラ・デビューとなるソニア・ヨンチェヴァのトスカへの期待が高まります。彼女にとってのトスカとは? どのように歌い、どのように演じようとしているのか.....。とても丁寧に答えてくれたメール・インタビューから、彼女自身がトスカという役にどれほど真摯に向き合っているかが窺われます。

「トスカは声楽的にも、演技者としても、とてもやりがいのある役。彼女のめくるめくような多くの感情を舞台上で描写するのはとてもエキサイティングです」

ローマ歌劇場日本公演の『トスカ』は、待望の日本でのオペラ・デビューとなります。これまで、世界中のさまざまなプロダクションでトスカを演じられていることからも、あなたの最高の当たり役の一つと考えている観客も多いと思います。あなたにとってトスカとは?

私がトスカを喜んでお引き受けすることが多いのは、まず私の声にとても合う役柄であり、私が歌うことを決めたほかの役柄と同じように、私自身の個人的な解釈を与えることができ、おそらくは、あまり顧みられることのないニュアンスを強調することもできると信じているからです。
私の解釈とは、トスカの"若さ"、それに伴うすべて、つまり彼女の感情の激しさや、衝動性、さらには、あどけない純真さを強調することです。同時にもう一方で、彼女の誠実さ、妥協を好まない姿勢も表現したいと思っています。トスカは声楽的にも、演技者としても、とてもやりがいのある役です。彼女のめくるめくような多くの感情を舞台上で描写するのはとてもエキサイティングです。

ヨンチェヴァ演じるトスカ(ウィーン国立歌劇場2021年公演より)
Photo: Wiener Staatsoper / Michael Pöhn

近年、プッチーニのヒロインに重点的に取り組んでいらっしゃいます。最近は『マノン・レスコー』のロールデビューや『蝶々夫人』など。プッチーニのヒロインを歌うのは、どのような点が魅力だと思いますか? 他の作曲家、たとえばヴェルディを歌うのと比べて、どのように違いますか?

絶対的な傑作を生み出した2人の音楽の天才、ヴェルディとプッチーニについてお話ししてみましょう。
まず、プッチーニはおそらく、ヴェルディに比べてより音楽の展開が速く直接的で、他のどの作曲家より、感情の急所を突いてくるようなところがあると思います。それゆえに、彼のオペラには、必然的に感情がかき立てられ、私自身が夢中になってしまう可能性があるので、プッチーニを歌うのは簡単ではありません。 一方、ヴェルディは歌手に多くの技術的な要求を課しますが、おそらくヴェルディのオペラでは、歌手はそこまで夢中になって我を忘れるようなリスクを冒さないでいられるという利点があると思います。
私は常にヴェルディを"uomo di teatro"(「劇場の人」)、プッチーニを"uomo di cinema"(「映画の人」)だと考えてきました。 ヴェルディは、静寂、非常によく選ばれた言葉、そして非常に特別なハーモニーに熱心で、一種の演劇的な思考に近いと感じます。プッチーニの場合は、物語を特定のやり方で、感情豊かに描写することに情熱を注いでいました。 私にとって、これが二人の作曲家の主な違いだと思っています。でも、私はプッチーニもヴェルディもオペラの舞台で演じるのが大好きです!

今回共演する指揮者のミケーレ・マリオッティさん、ヴィットリオ・グリゴーロさん、ロマン・ブルデンコさんについて教えていただけますでしょうか? また、フランコ・ゼッフィレッリの美術・演出による舞台について何を期待されますか?

マエストロ・マリオッティも、ヴィットリオ・グリゴーロさんも優れたアーティストです。お二人ともこれまでに何度か共演していますが、本物の芸術家だと思いますし、彼らの若さとともに、私たちは舞台上でたくさんの火花を散らし、素晴らしい結果になると思います。ロマン・ブルデンコさんと一緒に歌うのは初めてですが、彼がとても素晴らしい声を持っていて、舞台上では燃え上がるような表現者であることは知っています。とても充実したチームになるはずで、本当に楽しみにしています。
ゼッフィレッリのプロダクションに関しては、彼の『トスカ』の舞台で演じることが本当に待ちきれません。彼は、自分が演出したオペラの音楽と物語の中に真実を求めていた、偉大な芸術家でした。 それが、彼の演出した舞台が、いまだに"最高傑作"である理由だと私は思います 。

あなたは、美しい歌唱だけではなく、演技においても常に高い評価を受けています。役柄を創造するときには、どのようなプロセスで? また、演技とはあなたにとってどのような意味をなすものでしょう?

オペラは、音楽と演劇の融合として生まれました。オペラ歌手は、音楽と演劇の両方に貢献しなければならないと私は強く信じています。これが、役柄をお引き受けするときのプロセスの第一段階です。まず役柄が自分の心に訴えかけてくるものでなければならず、私自身の声と合うかを確認すると同時に、そのキャラクターが興味深いと思えなければなりません。たとえば、『アイーダ』には素晴らしい音楽がありますが、キャラクターは私の心にあまり語りかけないのです。
私はスコア(楽譜)だけでなく、台本の文学的な面も研究します。 そして少しずつ魔法とでもいうように命が吹き込まれ、新しいヒロインが誕生するのです。 舞台では私が役になり、彼女の喜びや苦しみを経験します。舞台が終わったときに、ソニア・ヨンチェヴァは戻ってくるのです。

公式サイトへ チケット購入

ローマ歌劇場2023年日本公演
「椿姫」全3幕
「トスカ」全3幕

公演日

ジュゼッぺ・ヴェルディ
「椿姫」全3幕

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ソフィア・コッポラ
9月13日(水)15:00 東京文化会館(上野)
9月16日(土)15:00 東京文化会館(上野)
9月18日(月・祝)15:00 東京文化会館(上野)

[予定される主な出演者]
アルフレード:フランチェスコ・メーリ
ヴィオレッタ:リセット・オロペサ
ジェルモン:アマルトゥブシン・エンクバート

ジャコモ・プッチーニ
「トスカ」全3幕

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
9月17日(日)15:00 神奈川県民ホール(横浜)
9月21日(木)15:00 東京文化会館(上野)
9月24日(日)15:00 東京文化会館(上野)
9月26日(火)15:00 東京文化会館(上野)

[予定される主な出演者]
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
スカルピア:ロマン・ブルデンコ

入場料[税込]

S=¥59,000 A=¥52,000 B=¥45,000
C=¥37,000 D=¥30,000 E=¥20,000
U29シート=¥8,000
U39シート=¥15,000 ※U39シートは9/13(水)「椿姫」、9/21(木)「トスカ」限定での販売となります。

ローマ歌劇場2023年日本公演公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/roma/index.html