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Photo: Shoko Matsuhashi

2023/09/06(水)Vol.477

パリ・オペラ座バレエ団 エトワール・インタビュー(1)
オニール八菜インタビュー
2023/09/06(水)
2023年09月06日号
バレエ
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バレエ

Photo: Shoko Matsuhashi

パリ・オペラ座バレエ団 エトワール・インタビュー(1)
オニール八菜インタビュー

2024年2月に来日するパリ・オペラ座バレエ団。新芸術監督にジョゼ・マルティネスを迎えてからの初めての来日であるほか、4年ぶりとなる"バレエの殿堂"への期待は高まるばかり! エトワールへのインタビューをシリーズでご紹介します。トップをバッターはパリ・オペラ座バレエ団で日本人として初めてエトワールに任命されたオニール八菜!

「舞台上ではっきりと『八菜が踊っている』と伝わるような、自分らしい踊りを毎回心がけたいと思っています」

パリ・オペラ座バレエ団で日本人初のエトワールとなって初めての日本の舞台が先頃の〈オペラ座ガラ─ヌレエフに捧ぐ─〉。2024年2月にはいよいよパリ・オペラ座バレエ団とともに来日を果たすオニール八菜。任命から半年が経った今の心境や変化、来日公演にかける想いを聞きました。

――改めて、エトワールに任命されたときのお気持ちをお聞かせください。

オニール八菜:任命されるとはまったく思っておらず、ほかの人たちから聞いてもいなかったので、120%本当のサプライズでした。任命されてすごく嬉しかったのと同時に、ホッとした気持ちもちょっとありましたね。
というのも、私はそれまで、コリフェ、スジェ、プルミエール・ダンスーズと毎年とんとん拍子に昇進してきたんです。だから、その勢いのままでエトワールまで行けるかな? という感じもありました。でも実際は7年もかかって、その間に親しいダンサーがどんどん任命されて、私だけ置いていかれた気もして......。さらに、時期によっては、踊りたかった役ができずにつらいときもありました。でも、その7年間、いつでも自分の踊りに集中して、私のコーチであるフロランス・クレール(元パリ・オペラ座バレエ団エトワール)についてもらって、土日も休まずに精一杯練習してたんです。だからようやくエトワールになれて、ホッとしています。

――オニールさんはコロナ禍でも、ご自分の踊りと向き合っていらしたと聞きましたが、どんな練習をされていたのですか?

オニール:コーチのフロランスに見てもらって、踊りをゼロから全部やり直しました。大げさに聞こえるかもしれませんが、全然大げさではなく、立ち方から脚の使い方、手の使い方、動くときにどこに力を入れるかなど、本当に踊り方を全部変えたんです。
そのおかげで、以前と比べて自分が踊りたいように踊れるようになりました。今では「私はこう踊りたい」と迷いなく踊れるようになったので、誰かに何か言われてもブレることがなくなりましたね。

〈オペラ座ガラーヌレエフに捧ぐー〉より
Photo: Kiyonori Hasegawa

――任命からしばらく経って、具体的にどんな変化がありましたか?

オニール:エトワールに選ばれたことでパニックになったり、おろおろしたりすることもなく、堂々と踊れている気がします。年齢的にも30歳と大人なので「エトワールになったから頑張らなきゃ」というようなプレッシャーを自分にかけることも、周りからかけられることもなく、自分らしく毎日頑張れていますね。
でも、ひとつ変化があって、それは今までは踊らない日でも毎日劇場に行かないといけなかったのが、エトワールになってからは自分が踊る日だけ行けばよくなったこと(笑)。その分、次の公演の準備にあてたり、体のケアをしたり、ポワントを縫ったりすることに時間が使えます。

Photo: Shoko Matsuhashi

――今後、エトワールとしてどんなことにチャレンジしていきたいですか?

オニール:私は入団してちょうど12年が経って、引退までも12年とちょうど節目のタイミング。まだあと12年もあるので、やりたい役は全部踊りたいです。特に『ジゼル』はキャラクター的にも憧れている踊りのひとつで、来シーズンにオペラ座でついにデビューできるので楽しみです。あとは新しい振付家との出会いも大切ですし、踊りたいクラシック作品もたくさんあります。あとは、舞台上ではっきりと「八菜が踊っている」と伝わるような、自分らしい踊りを毎回心がけたいと思っています。

〈オペラ座ガラーヌレエフに捧ぐー〉より マルク・モローと
Photo: Kiyonori Hasegawa

――2024年の来日公演では『白鳥の湖』の主役を踊る予定ですね。

オニール:『白鳥の湖』は2015年、私が22歳のときに初めて主役を踊った作品で、ずっとまた踊りたいと願っていたけれど、踊れなかった作品のひとつ。それをエトワールとして、しかも日本で再チャレンジできるのは嬉しいです。
最初に踊ったときから10年近く経っているので、以前とは違った踊りができるのが楽しみ。『白鳥の湖』は、音楽の取り方も足の動きも含めて、私の体にはヌレエフ版が一番踊りやすいと感じています。細かく考えてオリジナルな白鳥を作り上げたいですね。
私はいつも、今のお客様にもつながるような踊りがしたいと考えています。特に、今を生きる若い人たちの考え方にも伝わる感じは大切にしたい。そうでないとフレッシュさが欠けてしまうので、今回の『白鳥の湖』でも若い方にも理解してもらえるように、モダンな表現を心がけたいと思っています。

パリ・オペラ座バレエ団 ヌレエフ版「白鳥の湖」
Photo: Yonathan Kellerman/OnP

パリ・オペラ座2024年日本公演の詳細についてはコチラから
https://www.nbs.or.jp/stages/2024/parisopera/

取材・文:富永明子(編集者・ライター)