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Photo: Laura Scaccabarozzi

2023/09/06(水)Vol.477

ローマ歌劇場2023年日本公演
初来日! アマルトゥブシン・エンクバート
2023/09/06(水)
2023年09月06日号
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Photo: Laura Scaccabarozzi

ローマ歌劇場2023年日本公演
初来日! アマルトゥブシン・エンクバート

開幕目前となったローマ歌劇場日本公演。『椿姫』でジョルジョ・ジェルモン役を演じるアマルトゥブシン・エンクバートは、モンゴル出身のバリトン。欧米ではすでに優れたヴェルディ・バリトンとして認められています。初来日を前に答えてくれたメール・インタビューをご紹介!

ジェルモン役はメト、日本でデビューを飾り、
ますます特別なレパートリーに!

今回が日本デビューとなります。まず日本の観客に向けて、あなたのキャリアについて教えてください。

私は2009年までモンゴルの国立芸術文化大学で学んだ後、まずモンゴルの国立オペラ・バレエ・アカデミック劇場で活動を開始しました。そして同じころに大きな国際コンクールに参加し始めたのです。 チャイコフスキー国際コンクールで第2位、ドミンゴ主宰のコンクール「オペラリア」で第1位、BBCカーディフ国際声楽コンクールで観客賞などを受賞しました。これらの賞のおかげで、私は世界的に名前が知られるようになり、2016年からは国際的に歌う機会を得ました。 ドイツで『リゴレット』を16回歌ったことがヨーロッパでのキャリアの始まりでした。その後、世界中の最も有名なオペラハウスのいくつかで歌うようになり、今に至っています。

ヴェルディの役柄があなたのレパートリーの中心となっているようですね。あなたのキャリアのなかで、日本で歌う『椿姫』のジョルジョ・ジェルモン役との関わりについて教えてください。

ヴェルディのオペラは私のレパートリーの重要な部分を占めていて、なかでも最もよく演じる役の 1つが、『椿姫』のジョルジョ ジェルモンです。
2016年にモンゴルで初めて歌い、その後ナポリのサン・カルロ劇場、そして3年連続でアレーナ・ディ・ヴェローナでも歌う機会に恵まれました。最近、メトロポリタン歌劇場(メト)へのハウスデビューを果たし、この役は私にとってさらに特別なものになりました。今回、 ローマ歌劇場日本公演でジェルモン役に選ばれたことを大変光栄に思います。

ジョルジョ・ジェルモンを歌う上で重要なポイントは? また 『椿姫』の中で、解釈上、重視している特定のシーンや瞬間はありますか?

オペラの中で、ジェルモンは上流階級の家庭の出身で、たとえ息子の愛を犠牲にしてでも、家族の評判を守ることを優先します。第 2幕では、私の役柄はやや強引に見えるかもしれません。なぜならジェルモンは、息子にヴィオレッタ・ヴァレリーの病気と彼女を待ち受ける運命など構わず、彼女と別れるように勧めるからです。しかし、オペラが進むにつれ、自分の行動が愛する息子に悪影響を及ぼしていることに気づき、ヴィオレッタの元に戻るよう真実を告げますが、時すでに遅し、となるのです。
ジェルモンの力強く厳格な性格は、オペラの最終幕では柔らかく温かい性格としてあらわすことが必要です。この変化を反映するために、私は声の音色を変えることを意識しています。

ヴェルディのレパートリー以外に、『トスカ』のスカルピア役のようなプッチーニのオペラ作品や、『アンドレア・シェニエ』のジェラール役のようなヴェリズモのレパートリーも歌っていらっしゃいます。プッチーニやヴェリズモの作品とヴェルディを歌うことの違いは感じますか?

『椿姫』はヴェリズモ・スタイルの最初のオペラの 1つだと思っています。
私は"ヴェルディ・バリトン"と考えられているので、ジェルモンの役は私の声にぴったりだと言わざるを得ません。ただし、ヴェルディのオペラは、ヴェリズモ・スタイルを代表するプッチーニやジョルダーノのオペラとは大きく異なることに注意することが重要です。 最初、これらのヴェリスモの作曲家の作品を歌うのは、私にとって少し挑戦的でした。しかし今では、たくさんの練習と経験を通して、ヴェリスモ・オペラを歌うのに慣れてきて、ずっと楽に感じられるようになりました。

自分の声の性質についてどう思われますか?

先にも申し上げたように、私の声は"ヴェルディ・バリトン"だと認識されています。 私の声のユニークさはモンゴル出身であることに由来していると思います。モンゴル人は歌うことが大好きで、広い草原や山々、果てしなく続く風景に囲まれていると、思わず心を込めて歌わずにはいられないのです。

Photo: Laura Scaccabarozzi

日本でのオペラ・デビューでは、指揮者のミケーレ・マリオッティ、ヴィオレッタ役のリセット・オロペサ、アルフレード役のフランチェスコ・メーリと共演となります。 今回の共演者について、また今回の『椿姫』が、どのような舞台になることを期待していますか?

今回の日本公演における私の共演者たちは、世界のオペラ界のトップ・スター達です。マエストロ・マリオッティとは、以前『ルイザ・ミラー』で一緒に仕事をしたことがあり、光栄でした。 歌手と指揮者の関係は、公演を成功させるために極めて重要ですが、幸いなことに私たちは最初から良い相性でした。
フランチェスコ・メーリは素晴らしいテノール歌手で、これまで『ナブッコ』や『エルナーニ』で共演し、アレーナ・ディ・ヴェローナでは『椿姫』で共演しました。世界的なオペラ・スターのリセット・オロペサとは初共演となりますが、一緒に歌えることがとても楽しみです。全員で素晴らしいパフォーマンスをお届けできると確信しています。

レパートリーを選ぶとき、あなたにとって重要な点は何ですか?

私にとってヴェルディのオペラが主な焦点です。 今年、私はジョルダーノの『アンドレア・シェニエ』とヴェルディの『マクベス』という二つの新しい役でデビューする機会に恵まれました。どちらもミラノ・スカラ座においてでした。

少しプライベートなことについて、教えていただけますか?  例えば音楽一家で育ったのか、また、舞台以外のプライベートな時間には何をされているのか、など。

小さい頃から、覚えている限りずっと歌っています。 中学生のとき、「ヤルグイ」という子どもたちの歌のコンクールに参加するためにウランバートルに行きました。その後、何人かの声楽の先生と連絡を取りました。 ずっと歌手になりたいと思っていましたが、大学に入学して、オペラの名作品に触れてからオペラ歌手になるという夢が芽生えました。ブルガリアで教育を受けたメゾ・ソプラノ歌手である私の先生が、在学中の成功や卒業直後の国立オペラ・バレエ・アカデミック劇場への道に尽力してくれました。私の両親は音楽家ではありませんでしたが(中学校の教師です)、家族には歌手がたくさんいました。プライベートですか? スケジュールがとても忙しくて、自由な時間があまりありません。 でも、できる限り、私は両親や家族に会いに行きます。 日本に来る前にも彼らと数日間を過ごします。公演の合間には、リラックスしてストレス解消になるので、友達とビデオゲームを楽しんでいます!

日本デビューに向けてコメントをお願いします!

モンゴルと日本は長く友好的な外交関係を維持してきました。 私は日本で歌うことをずっと夢見てきましたが、この9月にその機会を得ることができ、とても興奮しています。 劇場に行くのが待ちきれません、また皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!

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ローマ歌劇場2023年日本公演
「椿姫」全3幕
「トスカ」全3幕

公演日

ジュゼッぺ・ヴェルディ
「椿姫」全3幕

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ソフィア・コッポラ
9月13日(水)15:00 東京文化会館(上野)
9月16日(土)15:00 東京文化会館(上野)
9月18日(月・祝)15:00 東京文化会館(上野)

[予定される主な出演者]
アルフレード:フランチェスコ・メーリ
ヴィオレッタ:リセット・オロペサ
ジェルモン:アマルトゥブシン・エンクバート

ジャコモ・プッチーニ
「トスカ」全3幕

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
9月17日(日)15:00 神奈川県民ホール(横浜)
9月21日(木)15:00 東京文化会館(上野)
9月24日(日)15:00 東京文化会館(上野)
9月26日(火)15:00 東京文化会館(上野)

[予定される主な出演者]
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
スカルピア:ロマン・ブルデンコ

入場料[税込]

S=¥59,000 A=¥52,000 B=¥45,000
C=¥37,000 D=¥30,000 E=¥20,000
U29シート=¥8,000
U39シート=¥15,000 ※U39シートは9/13(水)「椿姫」、9/21(木)「トスカ」限定での販売となります。

ローマ歌劇場2023年日本公演公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/roma/index.html