2024年2月のパリ・オペラ座バレエ団日本公演に向けたエトワールへのインタビュー・シリーズ。2回目はパリ・オペラ座バレエ団にアジア人として初のエトワールに任命されたパク・セウンです。
2021年、アジア人として初のエトワールに任命されたパク・セウン。今年1月に出産し、6月に舞台復帰したばかりの彼女に、復帰までの道のりや生活の変化、そして2024年2月の日本公演で踊る『白鳥の湖』への想いを聞きました。
――2024年の日本公演では『白鳥の湖』の主役を踊られますね。ヌレエフ版『白鳥』の好きなところは?
パク・セウン:ほかのヴァージョンでは、オデットが白鳥らしいのに対し、オディールは人間らしいキャラクターとして描かれることが多いと思いますが、以前リハーサルでコーチから「オデットは動物的な白鳥でありながら、とても人間的な部分があるとヌレエフは見ていた」と教わったことがあるんです。ですから、ヌレエフ版を踊るときは白鳥らしい動きをしつつも、人間のプリンセスであることも忘れずに踊らないといけない。そういう、オデットの人間的な性質を探すことが面白いと感じています。
踊りとしては、常に身体をきれいに見せる必要があるので、クラシック作品の中でも一番大変な演目ですね。大切なのは背中を開くこと、そして腕とあごと脚の位置を考えながら踊り続けることです。
パリ・オペラ座バレエ団 ヌレエフ版「白鳥の湖」
photo: Julien Benhamou/OnP
――特に好きなシーンはありますか?
パク:ジークフリート王子に初めて出会うシーンは特に大好きです! 短い場面ですが、たくさんの要素があります。オデットは静かな悲しみに満ちていますが、王子と出会い、彼に対して内に秘めてきたものを打ち明け、助けを求めることでようやく本物の愛を見出します。第2幕のアダージオもとても好きです。
――日本公演でのパートナーはポール・マルクですが、彼はどんなパートナーですか?
パク:彼と私はすごく似ていると思います。たとえば、動き方やテクニック、さらにストーリーの語り方などですね。あと、感情表現の温度感も共通しています。ダンサーによっては最初から最後までずっと熱いままという人もいますが、私は低いところからゆっくりと感情を高めていく踊りが好きなんです。ポールも同じタイプで、クレッシェンドで感情を高めていき、最後にパッと発散させるところが似ていると思います。
今年6月、産休明け最初の舞台が『マノン』だったのですが、そのときのパートナーもポールでした。彼と踊るといつも心地よくて、リハーサルでも本番でも普段以上にいろいろなものを出すことができます。
〈オペラ座ガラーヌレエフに捧ぐー〉より ポール・マルクと
Photo: Kiyonori Hasegawa
――パクさんは今年1月にお子さんを出産されて、6月に舞台に復帰されたんですよね。
パク:ええ、1月20日に娘が生まれてから約6週間後、3月6日からレッスンを開始しました。いきなりポワントでフェッテすることはできないので(笑) 最初の週はバーレッスンだけ、次の週はセンターも少し......という感じで、ゆっくりと。5月1週目から『マノン』のリハーサルを始めて、1カ月半準備して本番でした。
――お嬢さまが生まれたことで、どのような変化がありましたか?
パク:やはり時間のやりくりは大変ですね! リハーサルが終わっても、ダンサーの脳はずっと動き続けています。特にドラマティックな作品の場合、どうやって物語を語るかを常に考えているので、映像を見直すなど、復習にとても時間がかかります。でも、子どもがいると、帰宅したら娘に食べさせて、寝かしつけて、おむつを替えて......と忙しくて、なかなか時間が取れない。21時ごろに一度寝てくれるので自由な時間ができるのですが、私も睡眠をとらないといけないし、娘もまだ小さいのですぐ起きてしまいます。
でも、夫がかなり手伝ってくれるので、助かっています。1日の最初のミルクは彼があげてくれるので、私はその分、睡眠時間を確保できます。だから娘は夫とのほうが仲良しなんです(笑)。
Photo: Shoko Matsuhashi
――エトワールになって2年が経ち、これからどんな演目や役柄にチャレンジしていきたいですか?
パク:私は『眠れる森の美女』が好きなので、オーロラを踊りたいと願っています。オペラ座では10年近く『眠り』を上演していないんですよ。前回私はソリストでフロリナ王女とダイヤモンドの精、あと妖精も踊りました。ヌレエフ版はかなり難しいので「踊りたい!」と言いながらも、そのあとにたくさん練習しないといけないこともわかっているのですが(笑)、カンパニー側にもリクエスト済みです。
――日本公演では、どんなことが楽しみですか?
パク:日本が大好きです。日本の食事も好きですし、日本のファンの方々の雰囲気も好きです。毎回温かく受け入れてくださって、よいエネルギーをくださいます。
実は、よく日本語でメッセージをいただくんですよ! 自動翻訳にかけて読んでいるのですが、とても優しいメッセージが多くて嬉しいです。ちなみに、ジェルマン・ルーヴェは日本語が上手で、日本でタクシーに一緒に乗ったら運転手さんと日本語で会話していました。彼くらい流ちょうに話せるようになりたいな、と思っています。
取材・文:富永明子(編集者・ライター)
振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)
2024年
2月8日(木)18:30
2月9日(金)18:30
2月10日(土)13:30
2月10日(土)18:30
2月11日(日)13:30
振付:ケネス・マクミラン
2024年
2月16日(金)19:00
2月17日(土)13:30
2月17日(土)18:30
2月18日(日)13:30
2月18日(日)18:30
振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)
2024年
2月8日(木)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ
2月9日(金)18:30
オデット/オディール:パク・セウン
ジークフリート王子:ポール・マルク
2月10日(土)13:30
オデット/オディール:ヴァランティーヌ・コラサント
ジークフリート王子:ギヨーム・ディオップ
2月10日(土)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ
2月11日(日)13:30
オデット/オディール:アマンディーヌ・アルビッソン
ジークフリート王子:ジェレミー=ルー・ケール
振付:ケネス・マクミラン
2024年
2月16日(金)19:00
マノン:ドロテ・ジルベール
デ・グリュー:ユーゴ・マルシャン
2月17日(土)13:30
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム
デ・グリュー:マチュー・ガニオ
2月17日(土)18:30
マノン:ドロテ・ジルベール
デ・グリュー:ユーゴ・マルシャン
2月18日(日)13:30
マノン:リュドミラ・パリエロ
デ・グリュー:マルク・モロー
2月18日(日)18:30
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム
デ・グリュー:マチュー・ガニオ
・指揮:ヴェロ・ペーン(「白鳥の湖」) / ピエール・デュムソー(「マノン」)
・演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
S=¥27,000 A=¥24,000 B=¥21,000
C=¥17,000 D=¥13,000 E=¥10,000
U25シート=¥5,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり