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Photo: Shoko Matsuhashi

2023/10/04(水)Vol.479

パリ・オペラ座バレエ団 エトワール・インタビュー(3) 
ポール・マルク インタビュー
2023/10/04(水)
2023年10月04日号
バレエ
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Photo: Shoko Matsuhashi

パリ・オペラ座バレエ団 エトワール・インタビュー(3) 
ポール・マルク インタビュー

2024年2月のパリ・オペラ座バレエ団日本公演に向けたエトワールへのインタビュー・シリーズ。3回目は、前回のパク・セウンが「自身と共通するところが多い」と語った、パートナーのポール・マルクです。

「舞台上で感情をマネジメントすることはしていません。舞台上で湧き出た生の感情をそのまま出すことで、お客さまにも本当の感情が伝わります」

2020年の年末にエトワールに任命されてから、早2年半。今年はウェイン・マクレガー作品にも挑戦して好評を博したポール・マルクは、来年の日本公演で『白鳥の湖』に出演します。「共通点が多い」と語るジークフリート王子の役作りやパク・セウンとのパートナーシップ、日本への想いなどを聞きました。

――2024年の日本公演では『白鳥の湖』に出演されますね。ポールさんが踊られるジークフリート王子は、どんなキャラクターですか?

ポール・マルク:ジークフリートは大人になる途中で、まだ若くて分別がないところがあります。そんな子どもが、大人に変わる途中の段階で恋に落ちたと解釈しています。彼は物静かで柔らかい性格で、特に優しすぎるところとナイーブ(世間知らず)なところは僕自身にも共通していると感じます。とても共感できるキャラクターです。

パリ・オペラ座バレエ団 ヌレエフ版「白鳥の湖」より
Photo: Yonathan Kellerman/OnP

――ポールさんが悲劇の主人公を演じるとき、どのような工夫をしていますか?

ポール:一番難しいのは、短い時間の中で多くの出来事を語らないといけないことです。約2時間半のバレエの中で、たくさんのシーンがあり、それに伴い多くの感情があります。それをお客さまにクリアに見せて、メッセージを的確に伝えることがもっとも難しいです。
ただ、舞台上で感情をマネジメントすることはしていません。舞台上で湧き出た生の感情をそのまま出すことで、お客さまにも本当の感情が伝わります。それがアーティストとして生きる上で、素晴らしい部分だと感じています。

――ヌレエフ版『白鳥の湖』の好きなところを教えてください。

ポール:たくさんありますね! 僕は大きな愛の物語が好きなので、全幕を通して好きなのですが、強いて言うならば第2幕のオデットとのアダージオと、第4幕のロットバルトとのシーンが気に入っています。

パリ・オペラ座バレエ団 ヌレエフ版「白鳥の湖」より
Photo: Yonathan Kellerman/OnP

――今回の日本公演では、パク・セウンがパートナーですね。彼女はあなたにとって、どんなパートナーですか?

ポール:僕たちは本当に相性がよくて、仕事だけでなく、プライベートでも仲の良い友人です。彼女と踊るのはいつも心地よく、コミュニケーションもうまく取れます。たとえば何かを言ったとき、彼女が相手なら「もし間違えてとらえられたらどうしよう」と思うような怖さがまったくありません。性格も似ているところが多いですよ。彼女も僕も優しくて柔らかく、相手を辛抱強く待つことができます。そして常に笑顔です。
妊娠と出産で1年間、彼女はお休みしていましたが、今年5月に復帰するタイミングで一緒に『マノン』を踊ることができました。初めて一緒に踊る作品でしたが、再会が嬉しく、素晴らしい体験となりました。

今年6月パリ・オペラ座で踊った「マノン」より、パク・セウンと
Photo: Svetlana Loboff/OnP

――ポールさんがエトワールになって、今年で2年半が経ちました。どんな変化がありましたか?

ポール:主役級の役が踊れるようになったことが一番大きいですね。小さなころからの夢だったので、もっとも嬉しい変化です。
これから踊りたいと夢見ている演目はたくさんあります。好きな作品が多くて(笑)ヌレエフ作品は全部踊りたいです。あとは『オネーギン』やバランシン作品、ロビンズ作品、そして『ボレロ』など......。バレエを踊ることが大好きなので、とにかくレパートリーのすべてを踊りたいです。

〈オペラ座ガラーヌレエフに捧ぐー〉「ゼンツァーノの花祭り」より
Photo: Shoko Matsuhashi

――最近では、今年5月にウェイン・マクレガー振付の『ダンテ・プロジェクト』に挑戦されましたね。

ポール:ええ、これまでコンテンポラリー作品を踊る機会は多くありませんでした。しかも『ダンテ・プロジェクト』はパリ・オペラ座で上演するのは初の作品だったので、何もわからない状態から覚えないといけないのは大変でしたね。難しくてチャレンジングでしたが、踊る喜びを感じられて、とても好きな演目でした。早い時期に再演できることを願っています。

――2022年からジョゼ・マルティネスが芸術監督に就任していますが、彼はどんな芸術監督ですか?

ポール:彼は注意深くて優しい方という印象です。常に聞く体勢でいてくれるので、何か助けてほしいことがあるときに話しやすく、安心感があります。僕は彼のダンサー時代を知らないので、少しずつ彼のことを知っていければと思います。

――ポールさんは何度も来日されていますが、日本の好きなところを教えてください。

ポール:初めて来日したのは、2009年にパリ・オペラ座バレエ学校の公演があったとき。そのとき、日本と恋に落ちました! 東京や大阪、京都、奈良に行ったことがありますが、全部が好きです。東京は特に好きな街で、スーツ姿の人の横にコスプレをしている人がいたりと、いろいろな人が混ざり合っているところが面白いなと思います(笑)
日本のお客さまは拍手が多くて、ダンスが心から好きで観てくださっていることが伝わってきます。今回も日本で踊れるのを楽しみにしています。

取材・文:富永明子(編集者・ライター)

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パリ・オペラ座バレエ団2024年日本公演
「白鳥の湖」全4幕
「マノン」全3幕

公演日

「白鳥の湖」全4幕

振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)

2024年
2月8日(木)18:30
2月9日(金)18:30
2月10日(土)13:30
2月10日(土)18:30
2月11日(日)13:30

「マノン」全3幕

振付:ケネス・マクミラン

2024年
2月16日(金)19:00
2月17日(土)13:30
2月17日(土)18:30
2月18日(日)13:30
2月18日(日)18:30

公演日時と予定される主な配役

「白鳥の湖」

振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)

2024年
2月8日(木)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ

2月9日(金)18:30
オデット/オディール:パク・セウン
ジークフリート王子:ポール・マルク

2月10日(土)13:30
オデット/オディール:ヴァランティーヌ・コラサント
ジークフリート王子:ギヨーム・ディオップ

2月10日(土)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ

2月11日(日)13:30
オデット/オディール:アマンディーヌ・アルビッソン
ジークフリート王子:ジェレミー=ルー・ケール

「マノン」

振付:ケネス・マクミラン

2024年
2月16日(金)19:00
マノン:ドロテ・ジルベール
デ・グリュー:ユーゴ・マルシャン

2月17日(土)13:30
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム 
デ・グリュー:マチュー・ガニオ

2月17日(土)18:30
マノン:ドロテ・ジルベール
デ・グリュー:ユーゴ・マルシャン

2月18日(日)13:30
マノン:リュドミラ・パリエロ
デ・グリュー:マルク・モロー

2月18日(日)18:30
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム 
デ・グリュー:マチュー・ガニオ

会場:東京文化会館(上野)

・指揮:ヴェロ・ペーン(「白鳥の湖」) / ピエール・デュムソー(「マノン」)
・演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

S=¥27,000 A=¥24,000 B=¥21,000
C=¥17,000 D=¥13,000 E=¥10,000
U25シート=¥5,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり