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Photo: Shoko Matsuhashi

2023/11/01(水)Vol.481

パリ・オペラ座バレエ団 エトワール・インタビュー(5) 
ジェルマン・ルーヴェ
2023/11/01(水)
2023年11月01日号
バレエ
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バレエ

Photo: Shoko Matsuhashi

パリ・オペラ座バレエ団 エトワール・インタビュー(5) 
ジェルマン・ルーヴェ

2024年2月のパリ・オペラ座バレエ団日本公演に向けたエトワールへのインタビュー・シリーズの5回目はジェルマン・ルーヴェ。エトワールとなって7年、自他ともに認める充実のいま、さらなる挑戦にも意欲的です。

「自分が表現したいように表現できるようになり、アーティストとして何がしたいかが見えてきました」

7年前にエトワールに任命された『白鳥の湖』で、来たる日本公演の舞台に立つジェルマン・ルーヴェ。新世代のエトワールとして日本の舞台に登場し強い印象を残したのは、任命から3カ月後のことでした。その彼がいま感じている心境の変化や最近のチャレンジについて、さらに『白鳥の湖』で共演するオニール八菜との熱い友情についても話してくれました。

――来年2月の日本公演で『白鳥の湖』に主演されます。今から約7年前、エトワールに任命されたときに踊ったのも、ジークフリート王子でした。7年間でどんな心境の変化がありましたか?

ジェルマン・ルーヴェ:23歳のときにエトワールに任命されて、今は30歳になりました。以前より舞台に立つときの怖さがなくなって、解放されたように感じています。自分が表現したいように表現できるようになり、アーティストとして何がしたいかが見えてきました。
いまは、体が動けるうちに、クラシックの演目をもっと踊りたいと思っています。それと同時に、コンテンポラリー作品や演劇などにも積極的に挑戦したいです。というのも、まったく異なるジャンルを経験してからクラシック作品に戻ると、表現が豊かになると感じるのです。芸術面での変化はもちろん、精神面でも新しいものを自分の中で感じられます。

パリ・オペラ座バレエ団 「白鳥の湖」より
Photo: Julien Benhamou/OnP

――クラシックとコンテンポラリーを行き来することを大切にされているのですね。

ルーヴェ:ええ、パリ・オペラ座のクラシック作品のレパートリーはほとんど踊ってきているので、次にまた同じ役を踊るときには、何か新しい要素――たとえばコンテンポラリー作品への挑戦やほかの新たなアーティストとの出会いで得られた発見、プライベートで知った新しい感情などを盛り込みながら踊れたら、より面白くなると思います。ですから、さまざまなことに挑戦していきたいですね。

――最近ではどんな新しい出会いや発見がありましたか?

ルーヴェ:昨年12月にピナ・バウシュ振付の『コンタクトホーフ』に出演した際は、芸術面で新たな発見がありました。普段、僕はソロで踊ることが多く、ある意味孤独なときもありますが、この舞台ではオペラ座というグループの一員として踊れて、集団とのつながりを感じることができました。

――今年はモーリス・ベジャール振付作品を多く踊られていますね。2月には『さすらう若者の歌』、4~5月には『ボレロ』と再び『さすらう若者の歌』を踊られましたが、どんな経験でしたか?

ルーヴェ:素晴らしい経験となりました! ちょっと驚いたのが、ベジャールの振付言語や世界観が近代的で、いま踊っても心地よかったことです。これらの作品が生まれたのは1960年~70年代ですが、時代を感じさせない作品だと思いました。
『さすらう若者の歌』は、2月のときはユーゴ・マルシャンと一緒に踊りました。この作品は、ふたりの男性の友情のような関係や、時にライバルとしての関係も描かれるのですが、実際に長年の友人であるユーゴと踊れたことで、作品の世界観に入りやすかったですね。
『ボレロ』を踊るのは小さいころからの夢だったんです。子どものころ、クロード・ルルーシュ監督による映画「愛と哀しみのボレロ」を親と一緒に観て以来、ずっと踊りたい作品でした。今回、初めてメロディ(中央で踊るダンサー)を踊りましたが、思い返してみるとリズム(メロディの周囲で踊るダンサーたち)に入ったこともなかったんです。オペラ座に入団して12年の間、『ボレロ』が上演されるときはいつも別の演目に入っていたからだと思います。ついに念願が叶いました。

――憧れてきた『ボレロ』を踊ってみて、どんな気持ちになりましたか?

ルーヴェ:クライマックスのころはすごく疲れてしまうので(笑)、空っぽになって、燃え尽きるような感じですね。でも、とても気持ちのよい感覚で、安心と満足感もあります。周囲を囲んで踊るリズムのダンサーたちの中には級友や友人もいて、彼らは頼りになる力強い存在です。彼らとお互いに喜びをシェアしているような気持ちになります。これからも何度も踊っていきたいです。

Photo: Shoko Matsuhashi

――友人といえば、今年はあなたの親友のひとりであるオニール八菜さんがエトワールに任命されましたね。

ルーヴェ:ええ! 八菜が任命されたとき、僕は『ジゼル』の舞台があって韓国にいたんです。それで時差のあるなかで朝4時に電話をもらって(笑) 本当に嬉しくて、そのあと眠れなかったほどです。その前から、すでに彼女は僕たちの心のなかでエトワールと同じ存在だったので、どうしてこんなに時間がかかるんだろうと思っていました。だから、「ようやく!」と思いましたし、本来彼女がいるべき地位に就いたと感じています。

――あなたは日本にいらっしゃる機会が多いですが、どのくらいになりますか?

ルーヴェ:日本で踊るようになって11年が経ち、10回以上は踊らせていただいています。フランスの次に多く踊っている国が日本ですね。それもこれも、日本のお客さまのおかげです。いつも温かく迎え入れてくださいますし、お客さまとはダンスへの情熱をシェアしている感覚があります。

――先日、パク・セウンさんにインタビューしたとき、ジェルマンさんの日本語がお上手だという話になりました!

ルーヴェ:簡単な言葉だけですよ。「わかりました」とか「ちょっと」とか。僕の日本語の先生は八菜なんです。実は八菜がフランスに来たばかりのころは、僕が彼女のフランス語の先生だったんです。だから今はそれが逆転して、日本に来るたびにいろいろな日本語を教えてくれています。「ビールください」とかね(笑)

取材・文:富永明子(編集者・ライター)

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パリ・オペラ座バレエ団2024年日本公演
「白鳥の湖」全4幕
「マノン」全3幕

公演日

「白鳥の湖」全4幕

振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)

2024年
2月8日(木)18:30
2月9日(金)18:30
2月10日(土)13:30
2月10日(土)18:30
2月11日(日)13:30

「マノン」全3幕

振付:ケネス・マクミラン

2024年
2月16日(金)19:00
2月17日(土)13:30
2月17日(土)18:30
2月18日(日)13:30
2月18日(日)18:30

公演日時と予定される主な配役

「白鳥の湖」

振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)

2024年
2月8日(木)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ

2月9日(金)18:30
オデット/オディール:パク・セウン
ジークフリート王子:ポール・マルク

2月10日(土)13:30
オデット/オディール:ヴァランティーヌ・コラサント
ジークフリート王子:ギヨーム・ディオップ

2月10日(土)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ

2月11日(日)13:30
オデット/オディール:アマンディーヌ・アルビッソン
ジークフリート王子:ジェレミー=ルー・ケール

「マノン」

振付:ケネス・マクミラン

2024年
2月16日(金)19:00
マノン:ドロテ・ジルベール
デ・グリュー:ユーゴ・マルシャン

2月17日(土)13:30
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム 
デ・グリュー:マチュー・ガニオ

2月17日(土)18:30
マノン:ドロテ・ジルベール
デ・グリュー:ユーゴ・マルシャン

2月18日(日)13:30
マノン:リュドミラ・パリエロ
デ・グリュー:マルク・モロー

2月18日(日)18:30
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム 
デ・グリュー:マチュー・ガニオ

会場:東京文化会館(上野)

・指揮:ヴェロ・ペーン(「白鳥の湖」) / ピエール・デュムソー(「マノン」)
・演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

S=¥27,000 A=¥24,000 B=¥21,000
C=¥17,000 D=¥13,000 E=¥10,000
U25シート=¥5,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり