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2023/11/01(水)Vol.481

アントニオ・パッパーノに年間最優秀指揮者賞
2023/11/01(水)
2023年11月01日号
TOPニュース
オペラ

アントニオ・パッパーノに年間最優秀指揮者賞

オペラにおける最も情熱的なアーティスト
パッパーノには勤勉に努力するDNAが組み込まれている

2023年10月、「第63回ミュージカル・アメリカ・アワード」で英国ロイヤル・オペラの音楽監督アントニオ・パッパーノが年間最優秀指揮者に選ばれました。この賞は、舞台芸術への顕著な貢献を果たしたクラシック音楽のアーティストを表彰するもので、作曲家、指揮者、器楽奏者、アンサンブルなどがそれぞれ選出されます。「ミュージカル・アメリカ」は1898年に週刊新聞として創刊され、さまざまなかたちでの出版を続け、現在は、舞台芸術の国際ディレクトリ(MusicalAmerica.com)でもあり、その年次ディレクトリには世界中の芸術団体14,000を超える詳細なリストが掲載されています。年間最優秀賞の選出は1960年から始まり、1992年から器楽奏者、指揮者、作曲家、歌手の受賞が発表されてきました。
アントニオ・パッパーノの選出は、クラシック音楽およびオペラにおける最も情熱的なアーティストの一人と認められたもので、「現在は英国ロイヤル・オペラの音楽監督を務めているが、来年にはロンドン交響楽団の首席指揮者として、その手腕を発揮することが期待されている」と発表されています。また、パッパーノの生い立ちにも触れ、「イタリア移民の家庭に生まれ、父親の歌の生徒たちにピアノを弾きながら育った彼には、勤勉に努力することがDNAに組み込まれている」とも。

この受賞にちなんでのインタビュー記事では、パッパーノが英国ロイヤル・オペラの音楽監督として最長記録を打ち立てることとなった背景として、キャリアのはじめの頃からの数々の経験が自身の言葉で語られているのも興味深いところです。
受賞が発表された10月、パッパーノは英国ロイヤル・オペラで《ニーベルングの指環》の新制作、『ラインの黄金』のリハーサルを行っていました。1987年にダニエル・バレンボイムのアシスタントとして《指環》の制作に携わったことを思い返しながら、「大規模なプロジェクトを計画する方法と、それを長期にわたって導く方法を学び、さらにそれを毎年どのように発展させ、演出家と指揮者が構築するものを歌手とともにどう続けていくかを考える場だった」と語っています。また、ベルギーの王立モネ劇場で音楽監督を務めた10年間は「音楽監督としての自分がどうあるべきかを知った」と。
インタビュー記事は、自分自身がかなりの努力家であることを認めるパッパーノが「特にリハーサル室では私はとても容赦ないんです。私は細部にこだわる人間なので、仕事が骨の折れる作業になることもあるけれど、自分の思考のプロセスにみんなを巻き込むために、常に私が追求する理由を明らかにしようとしています。」と語る言葉で結ばれています。
2024年の日本公演を待ついま、このパッパーノだからこその素晴らしい演奏、上演への期待が膨らみます。