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Photo: クレールとヌレエフ <br>写真提供:フロランス・クレール

2023/11/15(水)Vol.482

パリ・オペラ座バレエ団『白鳥の湖』
フロランス・クレールが語るルドルフ・ヌレエフ
2023/11/15(水)
2023年11月15日号
バレエ
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バレエ

Photo: クレールとヌレエフ
写真提供:フロランス・クレール

パリ・オペラ座バレエ団『白鳥の湖』
フロランス・クレールが語るルドルフ・ヌレエフ

来年2月のパリ・オペラ座バレエ団来日公演では、ルドルフ・ヌレエフ振付の『白鳥の湖』が上演されます。元エトワールであり、現在は多くのダンサーの指導にあたっているフロランス・クレールは"ヌレエフ世代"の一人で、ヌレエフのクリエーションに直接かかわってきました。そんなフロランスさんに、ヌレエフ作品の魅力や彼との思い出について聞きました。

「ヌレエフは『舞台上で自由になるためには、自分に誠実にたくさん練習するしかない』と言っていました」

――フロランスさんが踊られたヌレエフ作品を教えてください。

フロランス・クレール:ヌレエフが振付けた作品はすべてですね。『白鳥の湖』に『ジゼル』『ロミオとジュリエット』『ドン・キホーテ』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』『シンデレラ』......。それから『マンフレッド』や『ワシントン・スクエア』のクリエーションも一緒にやりましたね。とにかく全部です。

――ヌレエフによって見出されましたが、彼に選ばれたとき、どんな気持ちでしたか?

クレール:私がまだコール・ド・バレエとして踊っていたときから、ヌレエフはさまざまな作品に私を選んでくれました。1979年に『マンフレッド』を創作するときは、まだエトワールになったばかりだった私をパートナーに抜擢してくれたのです。貴重な機会をもらえて嬉しかったのですが、尊敬している相手と踊ることにかなり緊張もしていました。彼は私をリラックスさせるため、いつも笑顔で接してくれて、とても優しかったですよ。いたずら好きでしたしね(笑)。魅力的な紳士でした。それからはずっとパートナーとして踊ることができて、彼が亡くなるまでずっと親交がありました。
彼はみんなから尊敬されていて、愛らしい人でした。コール・ド・バレエに対して満足がいかず、怒りを見せることもありましたが、それは数秒のこと。彼はすべてにおいて確信を持って発言するので、信頼されていました。私も今、コーチとして彼と同じでありたいと思っています。

ヌレエフ版「眠れる森の美女」でオーロラを踊るフロランス・クレール
写真提供:フロランス・クレール

――あなたがヌレエフから受け継いだと感じているものは?

クレール:ヌレエフから受け継いだことのひとつに、ダンサーの個性を大切にするということがあります。彼は、ダンサーが皆、同じような踊り方をするのを嫌いました。ダンサーにはそれぞれ個性があり、役に対する解釈もそれぞれ違います。すべて違っていて当たり前なのだから、ダンサーは自分の見方や解釈を信じて、自分の個性を使って踊るべきだという教えを若いころに受けて、衝撃を受けました。パは同じだけれど、全員それぞれ違っていることが重要なのです。私も指導の際は、その考えを継承しようと思っています。

――踊りの面では、ヌレエフからどんなことを教わりましたか?

クレール:彼をいつも観察することで、自分の踊り方をかなり変えました。たとえば、身体の重心の持って行き方――彼の踊りの非対称性は特徴的で、それを習得すると体が解放されて自由に踊れるようになります。彼の踊り方はその後のバレエ教育にも取り入れて、継承しています。

ヌレエフ振付『白鳥の湖』
Photo: Yonathan Kellerman/OnP

――あなたはリハーサルで指導をするとき、どのようなことをダンサーに伝えていますか?

クレール:どの演目でも同じなのですが、ヌレエフは「舞台上で自由になるためには、自分に誠実にたくさん練習するしかない」と言っていました。踊ることの幸せを追求し、自分のためにダンスを踊らなければならないと。そのためにはしっかりと事前の準備をしておくことが大切だということを、私も伝えるようにしています。
それから、私自身の踊りを真似させないように気をつけています。私が感じたことはあくまで個人的なことで、ほかの人も同じように感じるわけではありませんから。指導のときは、ダンサー自身がどうしたいのかをまず見て、それから指導を行うようにしています。

――来年2月のパリ・オペラ座バレエ団の日本公演では、ヌレエフ版『白鳥の湖』が上演されます。最後にフロランスさんのお好きなところを聞かせてください。

クレール:とくに男性の踊りが好きですね。あと、演出も素晴らしいです。たとえば、ヌレエフ版では悪魔と家庭教師が同一人物ですが、振付だけで王子と彼の関係性が伝わるようになっています。手を置く動作ひとつでも、その関係性がわかりますよ。
『白鳥の湖』はおとぎ話ですが、お客さまにはぜひ白鳥になってしまった王女さまの物語に入りこんで観ていただきたいです。そして最後は涙してくださることを期待しています。

ヌレエフ振付『白鳥の湖』
Photo: Yonathan Kellerman/OnP

取材・文:富永明子(編集者・ライター)

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パリ・オペラ座バレエ団2024年日本公演
「白鳥の湖」全4幕
「マノン」全3幕

公演日

「白鳥の湖」全4幕

振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)

2024年
2月8日(木)18:30
2月9日(金)18:30
2月10日(土)13:30
2月10日(土)18:30
2月11日(日)13:30

「マノン」全3幕

振付:ケネス・マクミラン

2024年
2月16日(金)19:00
2月17日(土)13:30
2月17日(土)18:30
2月18日(日)13:30
2月18日(日)18:30

公演日時と予定される主な配役

「白鳥の湖」

振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)

2024年
2月8日(木)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ

2月9日(金)18:30
オデット/オディール:パク・セウン
ジークフリート王子:ポール・マルク

2月10日(土)13:30
オデット/オディール:ヴァランティーヌ・コラサント
ジークフリート王子:ギヨーム・ディオップ

2月10日(土)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ

2月11日(日)13:30
オデット/オディール:アマンディーヌ・アルビッソン
ジークフリート王子:ジェレミー=ルー・ケール

「マノン」

振付:ケネス・マクミラン

2024年
2月16日(金)19:00
マノン:ドロテ・ジルベール
デ・グリュー:ユーゴ・マルシャン

2月17日(土)13:30
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム 
デ・グリュー:マチュー・ガニオ

2月17日(土)18:30
マノン:ドロテ・ジルベール
デ・グリュー:ユーゴ・マルシャン

2月18日(日)13:30
マノン:リュドミラ・パリエロ
デ・グリュー:マルク・モロー

2月18日(日)18:30
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム 
デ・グリュー:マチュー・ガニオ

会場:東京文化会館(上野)

・指揮:ヴェロ・ペーン(「白鳥の湖」) / ピエール・デュムソー(「マノン」)
・演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

S=¥27,000 A=¥24,000 B=¥21,000
C=¥17,000 D=¥13,000 E=¥10,000
U25シート=¥5,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり