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Photo:  NBS

2023/11/15(水)Vol.482

上野水香紫綬褒章を受章
2023/11/15(水)
2023年11月15日号
TOPニュース
バレエ

Photo: NBS

上野水香紫綬褒章を受章

" 続けてきて良かった"
感謝の気持ちを込めて

すでに報じられた通り、東京バレエ団ゲスト・プリンシパルの上野水香が、令和5年「秋の褒章」紫綬褒章を受章しました。紫綬褒章は、科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた者を対象とする褒章です。
受章にあたって行われた上野の囲み取材では、上野自身の喜びと感謝の気持ち、これまでのキャリアを振り返っての感想と今後への思いなどが語られました。

受章の報せを受けたとき「信じられないという気持ちが最初でした。それからすぐに嬉しさと同時に、続けてきて良かったという気持ち、そしてこれまで出会った多くの皆さんにありがとうという気持ちが込み上げて来て、涙がとまらなくなってしまいました」と静かに語る上野水香。
5歳からバレエを始めた上野にとって、今年はキャリアの40周年。これまでのキャリアはあっという間だったか?という記者からの質問に、「長かったです」と笑顔で即答したのには理由がありました。
「私はこれ以上やっていても.....と思うことは何度もありました。でも、そのたびに私をバレエに引き戻すなにかがあったんです。周囲の方から絶対にやめてはダメ、君は偉大になるんだから、自信をもちなさいと励まされたことも.....。実は東京バレエ団でも、一度だけ退団届を出したことがありました。30代の前半ころです」
冒頭で述べた"続けてきて良かった"という思いには、こうした葛藤の日々があったからだったのです。

多くの出会いのなかで、感謝をささげたい人がたくさんいるというが、自分のキャリアにおいて重要と考える二人として、自分を見出してくれたローラン・プティと、いまでは上野の代表作といわれる『ボレロ』の振付家モーリス・ベジャールを挙げました。
「『ボレロ』は、小さいころから憧れていた作品でした。東京バレエ団での最初のレパートリーとして踊らせてもらうことになったとき、まさかこんなに早くチャンスがめぐってくるとは思っていなかったんです。ベジャールさんから直接指導を受けていまも踊っているのは世界で何人か、という状態ですので、私は最後の世代の一人ということなります。ですから、この作品を大切にしていきたいと、あらためて思っています」

『ボレロ』について、悩むことも多かったと言います。
「あらゆることを分析してやれることはやったけれど、納得できる踊りができていない、と悩みました。踊り続けるなかでどんどん辛くなっていったこともありました。ようやく自分が"これだ"と感じることができたのは、コロナ禍で皆さんを元気づけたいと演じたときのこと。皆さんが熱狂してくださるなかで、ある意味何も考えずに没頭した状態で踊ったときでした。ようやく自分の『ボレロ』を踊れるようになってきたんじゃないかと。日本人で女性で唯一の『ボレロ』の踊り手と言われることが嫌で、不安になった時期もあったのですが、『ボレロ』を踊りたい!と言えるようになったいまは、そうした時間があったからだと思えます」

『ボレロ』を踊る上野水香
Photo: Shoko Matsuhashi

取材の終わりには、バレエを愛し、バレエを通して自身の生き方を見つめる彼女の思いが語られました。 「私が踊ることで周りが熱くなり、その熱が私自身に力をくれます。私が踊ることが皆さんの力になったり、何かしらの役に立っているなら、バレエを踊ることは私の使命なのだと感じています。来年、東京バレエ団は創立60周年を迎えますが、私も在籍20年となりますから、バレエ団にとっても私にとってもメモリアルイヤー。未来のことはわからないけれど、できることを精一杯やっていきたいと思っています。
いつか踊ることができなくなるときが来たとしても、素晴らしい作品はずっと残っていきます。それを次の世代に伝えていくこともいずれはしていくことになると。芸術にはゴールがないし、怪我を含めていろいろな不安もたくさんあります。でも、踊り続けるからには限界を目指したい、ベストを尽くして、明日を楽しみに生きたいと思っています」

伝達式は11月13日(月)、都内で行われました
Photo: HONEST

2024年、3月には東京、浜松、横須賀で〈上野水香オン・ステージ〉が開催されます。東京バレエ団の仲間たちとともに行うこれらの公演は、すでに開催が決まっていましたが、今回の受章を受け「上野水香 令和5年秋の褒章 紫綬褒章受章記念公演」として開催されることとなりました。上野水香は、『ボレロ』はもちろん、東京公演ではアロンソ振付の『カルメン』も踊ることが正式決定しました。見応えたっぷりの魅力的な公演をお楽しみに! 

公式サイトへ チケット購入

上野水香 令和5年秋の褒章 紫綬褒章受章記念公演
〈上野水香オン・ステージ〉

【東京公演】東京・春・音楽祭2024

2024年
3月19日(火)19:00
3月20日(水・祝) 16:00

会場:東京文化会館

予定される演目[東京公演]
「カルメン」
「タイス」(「マ・パヴロワ」より)
「ドン・キホーテ」(抜粋)
「ボレロ」

入場料 [東京公演](税込)

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥2,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

【浜松公演】(静岡県浜松市)

2024年
3月30日(土)13:00

会場:アクトシティ浜松・大ホール

予定される演目[浜松公演]
「白鳥の湖」第2幕より
「Nocturne for Three」
「ボレロ」
「ドン・キホーテ」(抜粋)

入場料 [浜松公演](税込)

S=¥12,000 A=¥9,000 B=¥6,000
C=¥4,000 D=¥3,000 
*D席のお取り扱いはアクトシティ浜松のみ

【横須賀公演】(神奈川県横須賀市)

2024年
3月31日(土)16:00

会場:横須賀芸術劇場・大劇場

予定される演目[横須賀公演]
「白鳥の湖」第2幕より
「Nocturne for Three」
「ボレロ」
「ドン・キホーテ」(抜粋)

入場料 [横須賀公演](税込)

S=¥12,000 SP=¥11,000 A=¥9,000
B=¥6,000 学生券=¥2,000 
*SP席は段差のない前方のエリアとなります。
*SP席、学生券のお取り扱いは横須賀芸術劇場のみ

※上演作品と出演者の詳細は公式サイトhttps://www.nbs.or.jp/stages/2024/mizuka-ueno-tours/をご覧ください。