古典バレエの名作として知られる『白鳥の湖』。東京バレエ団創立60周年記念公演の第5弾として、数ある演出版の中でもとりわけドラマティックな演出のブルメイステル版が、4月26日から4日間にわたり上演されます。主演には、沖香菜子、柄本弾、宮川新大といった実力派に加え、榊優美枝、中島映理子、生方隆之介といったフレッシュな顔ぶれが登場!
今回は、近年の全幕作品上演で立て続けに主演を務めるソリストの中島映理子に、作品への思いや意気込みを聞きました。
――2021年の入団以降、2022年『ラ・バヤデール』のニキヤ、2023年『ジゼル』のタイトル・ロール、子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』のキトリに続き、今回ブルメイステル版『白鳥の湖』で主演されます。今のお気持ちをお聞かせください。
中島映理子:パリ・オペラ座バレエ団に入団して初めて経験したクラシック作品が『白鳥の湖』、さらに東京バレエ団でもブルメイステル版『白鳥の湖』でしたので、配役が発表されたときは、驚きとともに、不思議な縁を感じました。
パリ・オペラ座バレエ団ではコール・ド・バレエ(以下コール・ド)を踊ることで初めてバレエ・ブラン(白のバレエ)を経験し、東京バレエ団ではコール・ドとブルメイステル版オリジナルの"アダージオ"の姫を踊り、群舞の難しさを痛感しました。コール・ドの立場から見ていたオデット/オディールを今回踊らせていただくというのはとても感慨深いです。
――ジークフリート王子役の生方隆之介さんともに初役ですね。
中島:これまで『ラ・バヤデール』では宮川新大さん、『ジゼル』では柄本弾さんといった先輩方にサポートしていただいた部分が大きかったのですが、今回はお互いに初めてなので、一から一緒に創りあげていく感じですね。教えていただくことで学べることもあれば、試行錯誤しながら得られることもあって、それぞれの良さを日々実感しています。
稽古に入る前から一緒に自主練習をしているのですが、すべてが初めてなので、一つひとつの動きを細かく確認しながら合わせています。隆之介くんとは、これまでに子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』のキトリとバジル、『眠れる森の美女』のフロリナ王女と青い鳥などで一緒に踊ってきていますし、同じ年で出身地も私が埼玉の北のほう、隆之介くんが群馬なので親近感もあり(笑)、なんとなくわかり合えている部分はあるのかな、と勝手に思っています。
――パートナリングで工夫されていること、気をつけていることはありますか。
中島:今回特に大事だと思っているのが「タイミング」と「距離感」です。難易度が高いテクニックが多く盛り込まれているので、音楽に合わせて音取りに集中しすぎると、タイミングや互いの距離にずれが生じてしまいます。基本的なことですが、まずは互いの動きをしっかり見て、自分たちのタイミングというのを常に意識していきたいですね。それらができるようになって、さらに振りを身体にしっかり染み込ませたうえで、音にきっちり合わせていく作業に入れれば。間に合うのかな......と時々不安になりますが、間に合わせます!
――役作りはどのように?
中島:『ジゼル』のときに感情を表現したくて、表情をつけたり、大きく動いたりしていたら、(斎藤)友佳理さんから「中身が全然見えてこない」と言われたことがあって。「気持ちで動いて。そのほうが観る人に伝わるし、あなたの良さが出るから」と。そうおっしゃっていただいて、自分が形から入ろうとしていたことに気づきました。そこから、このときジゼルはどう思っているのか、何を考えているのか......と、もう一度ジゼルというひとりの女性の心と向き合い直して、"気持ちで動く"ということがなんとなくわかってきたように思います。
『白鳥の湖』は音楽がリードしてくれる部分が大きいですが、そのぶん音楽に負けない表現力も求められるので、"気持ちで動く"ということを強く意識していきたいです。またブルメイステル版は、第3幕の王子の花嫁選びのための舞踏会のディヴェルティスマンが、余興ではなくロットバルトの手下という設定なので、その中でオディールがどう立ち居振る舞うのかということも深めていけたら。友佳理さんから「ここは白(鳥)と黒(鳥)をはっきり見せたほうがいい」「目の使い方ひとつで表現が変わる」など細部までご指導いただいているので、自分でもどんなオデット/オディールになるのか楽しみです。
――見どころを教えてください。
中島:ブルメイステル版の見どころはなんといっても第3幕。先ほどの話と重複しますが、舞踏会の客人たちすべてが悪魔が遣わした者たちで、王子をだまし篭絡しようとするので、ここでしか見られない独特な雰囲気を味わえます。それと、東京バレエ団といえば!といわれる第2幕の一糸乱れぬバレエ・ブランでしょうか。
――最後に意気込みをお聞かせください。
中島:本当に自分が真ん中に立っていいのだろうか......という不安は正直あります。でも、最初に主演を踊らせていただいた『ラ・バヤデール』の開演前に、友佳理さんが「あなたがすべての責任を負う必要はない。私に全部の責任があるのだから何も心配せずに、音楽に任せて踊ればいい」と言ってくれたのがとても心強くて、以降、その言葉を思い出すだけで緊張やプレッシャーから解放されるんです。それに、東京バレエ団は全員が一緒に舞台を創ろうという結束力が強く、頼もしい先輩や同期、後輩たちばかり。その素晴らしい環境の中で、踊れることに感謝しつつ、お客さまに楽しんでいただける踊りをお見せできるよう、これからあと1カ月強、全力で稽古に励みます!
取材・文:鈴木啓子(編集・ライター)
4月26日(金)18:30
4月27日(土)15:00
4月28日(日)15:00
4月29日(月・祝)15:00
指揮:アントン・グリシャニン
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
S=¥14,500 A=¥12,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥2,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり
[予定される出演者]
オデット/オディール:沖 香菜子(4/26,4/28)、 中島映理子(4/27)、 榊 優美枝(4/29)
ジークフリート王子:宮川新大(4/26,4/28)、生方隆之介(4/27)、柄本 弾(4/29)