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2021年カーテンコールより <br>Photo: Kiyonori Hasegawa

2024/04/03(水)Vol.491

第17回世界バレエフェスティバル
観る者の熱狂の理由
2024/04/03(水)
2024年04月03日号
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バレエ

2021年カーテンコールより
Photo: Kiyonori Hasegawa

第17回世界バレエフェスティバル
観る者の熱狂の理由

3年に一度、バレエファンを熱狂させる〈世界バレエフェスティバル〉。コロナ禍の中でも前回開催を乗り越えた今回、そのボルテージはもと通り、いえ、コロナ禍前にも増して高まっているでしょう。ここではまず、半世紀近く続く熱狂の理由を、今回の出演者たちにも触れながら、バレエ評論家の柴田明子さんにご紹介いただきます。

見逃したくない!
類をみないスターの競演、新星への期待、充実の演目

この夏、オリンピックとほぼ時期を同じくして、バレエ界でも3年に一度の一大イベント、世界バレエフェスティバルが開催される。今回でなんと17回目。初回は1976年というから、約半世紀近くにわたり、コロナ禍の前回も規模を縮小しネット配信を行うなどして、バレエファンに愛され続けてきた公演だ。これほど長い間、観る者の熱狂を誘う「バレエフェス」の魅力とはなんなのか。

まずはやはり、豪華絢爛なスターの競演だろう。通常は異なる国の異なるバレエ団で踊るダンサーたちが、同じ日の同じ舞台に集まる。しかも主役を踊る花形ばかり。ときには、ほかのバレエ団のダンサーと組んで踊ると聞けば、これはもう見逃せない。今回の公演でも綺羅星のごとき出演者たちが待っている。
フランス、パリ・オペラ座からは、華やかな存在感で圧巻の舞台を見せるオニール八菜。ここ日本でエトワールに任命され、私たちにとっては特別なユーゴ・マルシャン。入団直後からガラ公演でも頻繁に来日し、日本に居ながらにしてその成長を見守る幸運に恵まれたドロテ・ジルベール。いまや、かつてオペラ座を率いたカリスマ、ルドルフ・ヌレエフのようなオーラと貫録をまとったマチアス・エイマン。錚々たる顔ぶれが並ぶ。

ロシアはマリインスキー・バレエ。バレエフェス常連の大花、ディアナ・ヴィシニョーワ。鮮やかなテクニックとスピードで観る者の目をくぎ付けにするキム・キミン。そして、満を持して永久メイが初参加する。まだファーストソリストだが、ロシア帝国時代から続くこのバレエ団らしさ、優美でたおやか、まるで空気に溶け込んでしまいそうな幻想性を、いまもっとも体現しているダンサーと言っても過言ではあるまい。

英国ロイヤル・バレエ団からは、マリアネラ・ヌニェス、サラ・ラム、ワディム・ムンタギロフというお馴染みのダンサーに加え、ヤスミン・ナグディ、リース・クラーク、ウィリアム・ブレイスウェルが初参戦。シェイクスピアの国らしい演劇性と最旬の作品を踊りこなすプリンシパルが6人もやってくる。

2003年、第10回世界バレエフェスティバルで初登場となったフリーデマン・フォーゲルが、ガラで踊って観客を驚愕させた「太陽に降り注ぐ雪のように」より。相手役はアリシア・アマトリアン。
Photo: Kiyonori Hasegawa

ほかにも、20世紀を代表する振付家モーリス・ベジャールと共に時代を築いてきたジル・ロマン、ボリショイ・バレエからオランダに移籍し進境著しいオリガ・スミルノワ、パートナーの美を際立たせるマルセロ・ゴメス、ギリシャ彫刻のように美しく情熱的なロベルト・ボッレ。出演者の素晴らしさについては、枚挙に暇がない。
もちろん、スターを観るのは大いなる喜びだ。しかしながら、バレエフェスのもうひとつの魅力は、スター誕生の瞬間に立ち会えることではないだろうか。そう書いて思い浮かぶのが、今回も参加するフリーデマン・フォーゲルとダニール・シムキンである。

フォーゲルがバレエフェス初日に登場したとき、多くの観客たちは「ああ、またフレッシュな新人が出てきたな」としか思わなかったかもしれない。だがその2週間後、彼に度肝を抜かれるのである。現代の若者が持つ乾いた空気と瑞々しい感性が同居している。その底知れぬ魅力に取りつかれてしまったのだ。その後、シュツットガルト・バレエ団を代表するダンサーへと成長し、来日のたび、胸を打つ舞台を見せてくれているのは周知の事実だろう。

ダニール・シムキンの世界バレエフェスティバル初登場は2009年、第12回。写真は「パリの炎」より。
Photo: Kiyonori Hasegawa

一方、シムキンは舞台に登場した瞬間、観客たちを虜にしてしまった。柔軟な肢体、空中でそのまま止まるかと思う軽やかな跳躍、緩急自在の回転。万雷の拍手とは、まさにあのときのこと。日本で踊る機会が少ないので、バレエフェスでの来日を心待ちにするファンも多いのではないか。
さて、今回も新星は誕生するのか。現時点ではまだ出演者がすべて発表されていないが、フォーゲルと同じシュツットガルト・バレエ団入団後、わずか3年でプリンシパルになったマッケンジー・ブラウンはその筆頭の予感がする。

2021年カーテンコールより
Photo: Kiyonori Hasegawa

最後に、バレエフェス三つ目の魅力として上演演目をあげたい。たとえば、同じ「白鳥の湖」でも、バレエ団によって物語や演出、衣裳が異なる。それを見比べる楽しさ! また、バレエ団の来日公演ではあまり上演されない、現代振付家の作品や新作に出会える貴重な機会でもある。そしてバレエフェスでは、最終演目は、一部例外はあったが「ドン・キホーテ」のグラン・パ・ド・ドゥと決まっている。このトリを今回は誰が誰と踊るのか。想像している時間もまた楽しい。

柴田明子(バレエ評論家)

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第17回世界バレエフェスティバル

公演日

●Aプログラム
7月31日(水)18:00
8月1日(木)18:00
8月2日(金)14:00
8月3日(土)14:00
8月4日(日)14:00

●Bプログラム
8月7日(水)18:00
8月8日(木)18:00
8月9日(金)14:00
8月10日(土)14:00

●全幕特別プロ「ラ・バヤデール」
7月27日(土)15:00
主演:マリアネラ・ヌニェス、リース・クラーク

7月28日(日)15:00
主演:オリガ・スミルノワ、キム・キミン

●ガラ
8月12日(月・祝)

会場:東京文化会館(上野)

入場料[税込]

Aプロ、Bプロ
S=¥29,000 A=¥27,000 B=¥23,000
C=¥19,000 D=¥16,000 E=¥10,000
コーセーU25シート=¥5,000
*親子割引[S,A,B席]あり

予定されるプログラムおよび出演者

*プログラム内容および出演者の詳細は公式サイトをご覧ください。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ ほか
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団