NBS News Web Magazine
NBS日本舞台芸術振興会
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
Photo: Shoko Matsuhashi

2024/05/22(水)Vol.494

〈第17回世界バレエフェスティバル〉特別インタビュー(3)
オニール八菜
2024/05/22(水)
2024年05月22日号
バレエ
TOPニュース
インタビュー
バレエ

Photo: Shoko Matsuhashi

〈第17回世界バレエフェスティバル〉特別インタビュー(3)
オニール八菜

〈世界バレエフェスティバル〉出演ダンサーのインタビュー・シリーズ3回目は、今年2月のパリ・オペラ座バレエ団日本公演『白鳥の湖』で気品あふれるオデットとオディールを踊ったエトワール、オニール八菜。今夏、ついにエトワールとして出演を果たす〈世界バレエフェスティバル〉への意気込みや、前回出演した際の思い出、最近オペラ座で出演した作品について話を聞きました。

踊りを通してお客さまと繋がるために、モダンな表現を心がけたい

――今年2月はついにエトワールとしての来日となりましたね。ヌレエフ版の『白鳥の湖』はオニールさんにとって、どんな作品なのでしょうか?

オニール八菜:ヌレエフ版の『白鳥の湖』は約10年前、私が22歳のときに初めて主役を踊った作品です。その後コロナ禍もありましたし、私自身も成長したので、以前とはまったく違う"白鳥"をお見せできると感じた機会でした。
私にとってはヌレエフ版が一番踊りやすいバージョンです。コーチであるフロランス(・クレール)先生から『役に120%入り込めれば絶対に全部うまくいく』と言われたのですが、ヌレエフ版はまさに入り込んで踊れる作品。ステップが多くて難しい振付ではありますが、自然と物語に入り込めるので、精神的にも体力的にも集中を切らさずに踊ることができるんです。

パリ・オペラ座バレエ団2024年日本公演『白鳥の湖』より、ジェルマン・ルーヴェと。
Photo: Kiyonori Hasegawa

――エトワールになって2年目、今のオニールさんが大切に心がけていることは?

オニール八菜:モダンであること。たとえば、フロランス先生はご高齢ですが、考え方がとてもモダンな方で、現代に合わせてアップデートなさっています。それは今を生きるお客さまに伝わる踊りをするために必要なことですよね。私たちは踊りを通してお客さまと繋がるので、モダンな表現を心がけたいと思っています。

――最近、オペラ座で出演された舞台で印象に残っているものを教えてください。

オニール八菜:去年10月にジェローム・ロビンズのプログラムに出演して踊った『アン・ソル』『イン・ザ・ナイト』『コンサート』の3作品がとても印象的でした。ロビンズは以前『ゴルトベルク変奏曲』に出たことがあるくらいで、3つとも初めて踊る作品でしたが、素晴らしい経験となりました。
『コンサート』ではコミカルな役柄に挑戦して、これは思った以上に難しかったですね。ちょっとでもタイミングを外すとつまらなくなってしまうので、演技も特訓しました。私はやっぱり、コミカルよりもドラマティックな役が合うかなぁと思うんですけど(笑)、でもとても楽しかったです。
『アン・ソル』はユーゴ(・マルシャン)と踊ったのですが、ふたりがまとう空気感をどう作るかに工夫が必要でした。ロビンズの特徴でもありますが、シンプルな動きのなかで、私たちだからこその空間や空気感をどう作るか......バランスが難しかったのですが、とてもよい経験になりました。
そして今年5月には、ずっと願っていた『ジゼル』を踊ります! 相手役はジェルマン(・ルーヴェ)なので、とても楽しみです。

Photo: Shoko Matsuhashi

――さて、今年は〈世界バレエフェスティバル〉2回目の出演が決まりましたね。前回、出演が決まったときは、どんなお気持ちでしたか?

オニール八菜:子どものころから憧れてきた大スターたちが出演してきたバレエフェスにまさか自分が出られるなんて、本当にびっくりしました! 10代のころ、初めて観たバレエフェスにはシルヴィ・ギエム、アニエス・ルテステュ、オレリー・デュポンなどが出ていて、オペラ座に憧れていた私は目をハートにして観ていました(笑)

――初めて出演してみて、いかがでしたか?

オニール八菜:とても楽しかったですね。公演数が多いので大変ではありますが、回数を重ねるほどリラックスできるようになって、前回とちょっと変えてみたり、新しいチャレンジをしたりできるのが楽しくて。そもそも、マチアス(・エイマン)と踊れること自体、とても嬉しかったです。
それから、ほかのカンパニーのダンサーとの交流も楽しい思い出です。コロナ禍だったので久しぶりに舞台に立つことができるダンサーもいて、「やっと踊れる!」というポジティブな雰囲気が広がっていました。憧れていたオリガ・スミルノワに会えたのも嬉しくて、彼女の『ジュエルズ』のダイヤモンドは特に素敵でした。

第16回世界バレエフェスティバル『海賊』より、マチアス・エイマンと。
Photo: Kiyonori Hasegawa

――舞台上から感じた、バレエフェスのお客さまはどんな印象でしたか?

オニール八菜:バレエが大好きな方々の集まりなので、客席はさすがにすごい熱気でした。ほかのガラ公演よりもっと、集中力を切らさずに観てくださっているのが感じられます! その空気の中、しかも素晴らしいダンサーたちの中で踊るのは緊張感もありますが、うきうきするようなお祭り気分も感じられますね。
バレエフェスのいいところは、世界中のカンパニーの、さまざまな個性を持つダンサーを一度に観られるところ。同じ作品を踊っても、ダンサーの個性によって微妙に違う。その違いを楽しみながら、お気に入りを見つけていただけたらと思います。

第16回世界バレエフェスティバルのカーテンコールより。
Photo: Kiyonori Hasegawa

取材・文:富永明子(編集・ライター)

公式サイトへ チケット購入

第17回世界バレエフェスティバル

公演日

●Aプログラム
7月31日(水)18:00
8月1日(木)18:00
8月2日(金)14:00
8月3日(土)14:00
8月4日(日)14:00

●Bプログラム
8月7日(水)18:00
8月8日(木)18:00
8月9日(金)14:00
8月10日(土)14:00

●全幕特別プロ「ラ・バヤデール」
7月27日(土)15:00
主演:マリアネラ・ヌニェス、リース・クラーク

7月28日(日)15:00
主演:オリガ・スミルノワ、キム・キミン

●ガラ
8月12日(月・祝)14:00

会場:東京文化会館(上野)

入場料[税込]

Aプロ、Bプロ
S=¥29,000 A=¥27,000 B=¥23,000
C=¥19,000 D=¥16,000 E=¥10,000
コーセーU25シート=¥5,000
*親子割引[S,A,B席]あり

*プログラム内容および出演者の詳細は公式サイトをご覧ください。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ ほか
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

関連記事