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Photo: Shoko Matsuhashi

2024/08/07(水)Vol.499

シュツットガルト・バレエ団日本公演
記者会見レポート
2024/08/07(水)
2024年08月07日号
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バレエ

Photo: Shoko Matsuhashi

シュツットガルト・バレエ団日本公演
記者会見レポート

11月にシュツットガルト・バレエ団が待望の日本公演を行います。それに先立ち都内で記者会見が開催されました。〈世界バレエフェスティバル〉のために来日中の同団芸術監督タマシュ・デートリッヒと、4名のプリンシパル・ダンサー、フリーデマン・フォーゲル、エリサ・バデネス、マッケンジー・ブラウン、ガブリエル・フィゲレドが会見に登壇しました。

来日公演の演目はドラマティック・バレエの傑作『オネーギン』と『椿姫』

1961年から73年に急逝するまでシュツットガルト・バレエ団を率いたジョン・クランコは、言わずと知れた20世紀を代表する振付家だ。わけても『オネーギン』は特別な作品で、73年の初来日公演時の演目にも選ばれている。ジョン・ノイマイヤー振付『椿姫』は、ノイマイヤーが長らく芸術監督を務めたハンブルク・バレエ団の代表作という印象が強いが、初演はシュツットガルト・バレエ団である。そしてなんと今回、ステージングに協力するため、ノイマイヤー自身が日本ツアーに同行するという。

フリーデマン・フォーゲル
Photo: Shoko Matsuhashi

両作品に主演するフォーゲルは「二作は非常に異なる反面、ムーヴメントが登場人物の感情を雄弁に語る点では良く似ています」と語る。さらにクランコとノイマイヤーについては「言葉を使わずに複雑な物語を伝える感受性に恵まれた天才」と称賛。同じ演目を繰り返し演じることについては「何度演じても決して飽きることはなく、毎回共演者とともに新しい"旅"に出るような気持ちで臨み、役を100%生きることを大切にしています」と語った。

エリサ・バデネス
Photo: Shoko Matsuhashi

バデネスは「タチヤーナ(『オネーギン』)とマルグリット(『椿姫』)は、バレリーナにとって憧れの役。演じられることを誇りに思います」と語る。さらに「クランコの視点を継承する人々がいるおかげで『オネーギン』は上演のたびに作品を磨いていくことができます。」「『椿姫』はノイマイヤーがツアーに帯同しますが、彼はダンサーに合わせて作品を進化させる振付家。同じ演目でも毎回異なる舞台に仕上がります」と語った。さらに両作品の違いや共通点についても触れた。バデネスの解釈によると『オネーギン』は第2幕と第3幕の間に10年ほど時間が経過しており、タチヤーナは結婚し子供ももうけている。タチヤーナを初めて踊った22歳の頃は、短い休憩時間に若い娘から大人の女性に成長することが難しかったそうだ。タチヤーナと比較すると、「マルグリットは舞台の上で変化を遂げる役」(バデネス)だが、いずれも「自分の感情に正直でいることが求められる役」で「自分がどのようなダンサーなのかを意味付ける役」とも説明した。

次世代を牽引するブラウンとフィゲレド

ブラウンは今シーズンからプリンシパルとして踊り、フィゲレドに至っては、先日7月19日に、ジークフリートを踊りプリンシパルに任命された。デートリッヒ曰く「技術面はもとより、カンパニーの一員として成長していく内面の準備ができていること」が昇格の決め手だったという。芸術監督として若手を育てる責任を負い、ベテランとの間に良い化学反応が起こるよう心を砕いているようだ。若手の二人も期待に応えている。ブラウンは「バレエ団の一員として成長できるよう、日々貪欲に挑戦しています」と述べ、フィゲレドは「自分を信頼してプリンシパルに任命してくれたことはとても光栄。更に努力したいという気持ちに溢れています」と緊張気味に語った。

マッケンジー・ブラウン
Photo: Shoko Matsuhashi

二人は『オネーギン』でオリガとレンスキー役を踊り、『椿姫』ではプリュダンスとデ・グリューを演じる。フィゲレドにとってデ・グリューは初役で、この記者会見の場で初めてキャスティングを知らされたようだ。レンスキーは「ジェットコースターのように感情の起伏が体験できる」大好きな役という。クランコ作品は解釈の幅が広く、高い表現力が求められるが、ブラウンは他のダンサーの解釈を間近で見ながら、自分自身の表現に繋げているそうだ。

ガブリエル・フィゲレド
Photo: Shoko Matsuhashi

パンデミックがもたらしたもの「私たちはここに存在し、踊り続けているというメッセージを世界に向けて発信することは、とても重要でした」(デートリッヒ)

デートリッヒはコロナ禍当初、Zoomを使って毎日カンパニーのメンバーに希望を与え続けていたという。苦しい時期を経験したが、若手振付家にソーシャルディスタンスを守った作品を依頼したり、劇場全体を使ったパフォーマンスが話題を呼んだりと、この時の試行錯誤はカンパニーの可能性を広げた。

タマシュ・デートリッヒ芸術監督
Photo: Shoko Matsuhashi

前回2022年の日本公演もコロナ禍の影響を受けている。フル・カンパニーでの来日が予定されていたが、スタッフ側の懸念を踏まえデートリッヒは公演中止を決断する。「中止を伝える電話をかける時は本当に辛かった」(デートリッヒ)。しかしNBS側から思いがけず、出演者を絞った演目に変更して実施する提案を受ける。「それなら実現できる!と再び胸に希望が湧いてきました」と語った。この時の《シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち》にはフォーゲル、バデネス、ブラウンが参加。フィゲレドも12名の来日メンバーの一人に選ばれていたが、直前にコロナ陽性が判明したため出演が見送られたそうだ。

日本で踊る経験が豊富なフォーゲルとバデネス、日本の観客の印象を聞かれて

「日本の観客は知識が豊富。作品背景をよく理解しているので、踊り手として大きな手応えを感じます。多くのバレエ団が来日するので観客の目は非常に肥えていますね。バレエ文化を理解し大切に扱っている日本は、バレエ界にとってかけがえのない国だと思います」(フォーゲル)

「日本の観客は感性がとても豊かです。私が踊った作品を覚えていてくれるので、ここ数年素晴らしい関係を築けていると思います。私にとっては第二の故郷のような特別な国です」(バデネス)

(左から)フォーゲル、バデネス、デートリッヒ芸術監督、ブラウン、フィゲレド
Photo: Shoko Matsuhashi

記者会見は終始和やかな雰囲気で進行し、フォーゲル曰く「バレエ団のDNAを受け継ぐ2作品」が披露される来日公演への期待が高まった。

取材・文:隅田 有 (舞踊評論家)

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シュツットガルト・バレエ団2024年日本公演
『オネーギン』全3幕
『椿姫』プロローグ付全3幕

公演日

『オネーギン』全3幕

11月2日(土)14:00
11月3日(日・祝)14:00
11月4日(月・休)14:00

会場:東京文化会館(上野)

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

『椿姫』プロローグ付全3幕

11月8日(金)18:30
11月9日(土)14:00
11月10日(日)14:00

会場:東京文化会館(上野)

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

[予定される出演者]
『オネーギン』
オネーギン:フリーデマン・フォーゲル(11/2)、 ジェイソン・レイリー(11/3)、 マルティ・パイシャ(11/4)
タチヤーナ:エリサ・バデネス(11/2)、 アンナ・オサチェンコ(11/3)、 ロシオ・アレマン(11/4)
オリガ:マッケンジー・ブラウン(11/2)、 ディアナ・イオネスク(11/3)、 ヴェロニカ・ヴェルテリッチ(11/4)
レンスキー:ガブリエル・フィゲレド(11/2)、 アドナイ・ソアレス・ダ・シルヴァ(11/3)、 ヘンリック・エリクソン(11/4)
グレーミン公爵:ロマン・ノヴィツキー(11/2)、ファビオ・アドリシオ(11/3)、クリーメンス・フルーリッヒ(11/4)

[予定される出演者]
『椿姫』
マルグリット:エリサ・バデネス(11/8)、 アンナ・オサチェンコ(11/9)、 ロシオ・アレマン(11/10)
アルマン:フリーデマン・フォーゲル(11/8)、 デヴィッド・ムーア(11/9)、 マルティ・パイシャ(11/10)
マノン:アグネス・スー(11/8、11/10)、 ヴェロニカ・ヴェルテリッチ(11/9)
デ・グリュー:マッテオ・ミッチーニ(11/8、11/10)、 ガブリエル・フィゲレド(11/9)
プリュダンス:マッケンジー・ブラウン(11/8、11/10)、ダイアナ・ルイズ(11/9)

入場料[税込]

S=¥26,000 A=¥22,000 B=¥18,000
C=¥15,000 D=¥12,000 E=¥9,000
U25シート=¥5,000