2024/09/04(水)Vol.501
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2024年09月04日号 | |
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バレエモーリス・ベジャール・バレエ団 |
ベジャール・バレエ・ローザンヌ(BBL)を代表するダンサーとして約30年にわたり活躍し、今年3月に芸術監督に就任したジュリアン・ファヴローの共同インタビューが、オンラインで開催されました。新体制に至るまでの経緯や、9月に予定されている日本公演について、率直に語られたインタビューの内容をご紹介します。
巨匠モーリス・ベジャールの後任としてカンパニーを16年間率いてきたジル・ロマンが、今年2月にBBLを運営するBBL財団から芸術監督を解任されたというニュースは、世界中に衝撃を与えた。当時のカンパニーの様子と、その後の経緯を聞いた。
「2月の出来事は我々も全く予期していないことでした。これを受けて、BBLの存続や雇用への不安、外部から新しい芸術監督が着任するのではないかといった懸念で、カンパニーのメンバーは一時パニック状態におちいりました。BBL財団もこの動揺を理解したのか非常に早く動き、私にシーズン中の暫定的なディレクターの就任を打診して来ました。
考える時間として与えられたのは24時間でしたが、ダンサーたちを安心させ、カンパニーをひとつにまとめることが自分の役目だと感じ、このオファーを承諾しました。混乱した状況をソフトランディングさせるには、私が引き受けるのが良いだろうという気持ちもありました。幸運なことに私が後任に決まったことでBBLを去ったダンサーはおらず、実際この決定が発表された時は拍手が沸き起こりました。ダンサーたちも新体制に満足してくれていると思います」
Photo: BBL - Jennifer Santschy
シーズン真っただ中での就任。自身も主要な役を踊る『わが夢の都ウィーン』を上演するため、ベルギー・ツアーに出発する直前だったという。
「自分の出演パートに責任を持ちつつ、ダンサーたちのリハーサルに対応したり、照明などの指示を出したりと、仕事量が一挙に3倍に増えました。幸い私は一人ではなく、エリザベット(・ロス)、(小林)十市、ドミニコ・ルヴレと共に4人で乗り切りました。最初の数週間は大変でしたが、だんだんこの仕事が好きだということに気づきました。今は芸術監督という仕事に大きなやり甲斐を感じています」
その後2024年9月からBBLの芸術監督に就任することが正式に発表された。監督業に専念するため、ダンサーとしての活動は今年いっぱいで終了するという。
「私はもうすぐ47歳ですが、この年齢まで踊り続けてこられたのは幸運だったと思っています。以前からジルとは今後のことを話していたので、ダンサーのキャリアを終えることは自然な流れでした。今後も演技中心の役などで舞台に立つことはあると思います」
ファヴローのキャリアの中でも特に重要な2作品について、その魅力を聞いた。
「『ボレロ』のメロディを最初に踊ったのは2011年のアオスタ(イタリア)のフェスティバルの時です。3カ月後にパレ・デ・コングレの大舞台で開催されるパリ公演を見据えたキャスティングで、私はフランス出身ということもあり、ジルからメロディを踊る提案を受けた時は本当に嬉しかったです。
『ボレロ』は凄まじい力を持つ難しい作品です。ダンサーは否応なしに踊りに従わなくてはならないといった魔術的なところもあります。踊るたびに、ラヴェルの音楽とモーリスの振付は、ふたつでひとつになるように生まれてきたのではないかと感じます。私が日本で本作を踊るのは今回が最後ですが、今まで何度も訪れている日本の舞台で、自分のボレロの「輪」を完成させられるような思いもあり感慨深いです」
Photo: BBL - Lauren Pasche
「『バレエ・フォー・ライフ』のクリエーションの頃に、私はBBLに加わりました。フレディは私のキャリアの中でも特に重要な役です。初演のダンサーの後を継いでこの役に推薦してくれたのはモーリスですが、私の外見がフレディに似ていないため、私なりのアプローチが必要だと言われました。モーリスからは『ダンサーとしてのジュリアンではなく、ロックスターとしてのジュリアンを見せて欲しい』と言われ、デヴィッド・ボウイやミック・ジャガーなど様々なロックスターも役作りに取り入れています。抜擢当初は役を掴むのに苦労しましたが、モーリスとジルが親身にアドバイスをくれ、色々な表現を試す私に、正しい方向性を示してくれました。この役は優しい表情を見せる時もあれば、アグレッシブな時もある。感情のコントラストを明確に表現する必要がありますが、この役を通じて様々な表現の"引き出し"を得られたと思っています」
Photo: Kiyonori Hasegawa
芸術監督としての今後の展望は?
「17歳でカンパニーの一員となり、モーリスとジルの両時代を過ごしてきたため、私自身がBBLの歴史の一部に組み込まれているように感じています。ベジャールの作品は世界中で踊られていますが、"ベジャールを観るならBBL"と思ってもらえるよう、レパートリーを守っていきたいと思います。これまでジルが行ってきたように、作品の哲学を引き継いで、価値を高めていければと思います。また今後上演する作品は、現在のメンバーが踊るのに適した作品、新作であればダンサーの魅力を引き出すものを選んでいきます。ダンサーにはベジャール作品を体得するだけでなく、自分自身を表現できるようになって欲しいと思います」
一時間にわたるインタビューの最後は、ベジャールの言葉で締めくくられた。
「困難もある。変化もある。けれどそこにあるのは、レボリューション(革命)ではなくて、エボリューション(進化)なのだ。Show must go on!」
新体制になり初のシーズンは日本ツアーで幕を開ける。進化し続けるBBLの「今」をしっかりと目に焼き付けたい。
取材・文 隅田 有 (舞踊評論家)
【東京公演】
9月21日(土)13:30
9月22日(日)13:30
9月22日(日)18:00
9月23日(月・祝)13:30
会場:東京文化会館
9月27日(金)19:00
9月28日(土)13:30
9月28日(土)18:00
9月29日(日)13:30
会場:東京文化会館
※音楽は特別録音による音源を使用します。
S=¥23,000 A=¥16,000 B=¥14,000 C=¥11,000 D=¥7,000 E=¥6,000
U25シート=¥3,000 SP*=¥21,000
*SP席は1階LRブロックの端寄りのエリアです。舞台に近いお席ですが、演出のため一部見切れがございます。予めご了承の上お求めください。
【西宮・札幌公演】
10月2日(水)
会場:兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
お問い合わせ:芸術文化センターチケットオフィス
0798-68-0255 (10:00〜17:00 月曜休み ※祝日の場合翌日)
https://www.gcenter-hyogo.jp/
10月6日(日)
会場:札幌文化芸術劇場hitaru
お問い合わせ:道新プレイガイド
0570-00-3871 (10:00〜17:00 日曜定休)
https://doshin-playguide.jp/