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Photos: Kiyonori Hasegawa

2024/12/04(水)Vol.507

東京バレエ団 「くるみ割り人形」
沖香菜子&柄本弾、 主演ダンサーが語るその魅力とヒミツ
2024/12/04(水)
2024年12月04日号
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バレエ

Photos: Kiyonori Hasegawa

東京バレエ団 「くるみ割り人形」
沖香菜子&柄本弾、 主演ダンサーが語るその魅力とヒミツ

クラシック・バレエの世界で12月の風物詩といえば『くるみ割り人形』! 東京バレエ団では2019年以降、斎藤友佳理(現東京バレエ団団長)による改訂振付・演出版を上演し、毎回好評を博しています。東京バレエ団の『くるみ割り人形』、一体何が大勢の観客を魅了するのでしょうか? 作品の魅力とヒミツを、初演から本作に出演を重ねている沖香菜子&柄本弾に聞きました。

「2役を演じることで、王子とドロッセルマイヤーの関係性がよりクリアになりました」(柄本)

――今回は王子役、ドロッセルマイヤー役という2役を演じるだけではなく、指導者としても関わります。改めて『くるみ割り人形』に向き合う心境をお話しください。

柄本:僕自身この作品に関して経験を重ねてきました。初演(5年前)とパートナーも変わり、自分の中では一から創りなおす気持ちで挑みたいと思っています。指導者としては、(池本)祥真、(大塚)卓、(生方)隆之介と、3名の王子役デビューを友佳理さん(東京バレエ団団長)とともに見届けてきました。自分が踊る面では、初演から一緒に王子を踊っている(宮川)新大もそうですが、それぞれの王子の良いところを見ているので、それを盗みつつ、自分がこれまで培ってきたものを活かせるような王子にしたいと思っています。

柄本 弾
Photo: NBS

――王子とドロッセルマイヤー、2つの役をやることで作品に対して新たな発見はありましたか?

柄本:王子とドロッセルマイヤーの関係性がよりクリアになりました。一緒に踊ることはほぼないけれど、第1幕で泣いているマーシャの手を王子がそっととる際、ドロッセルマイヤーとして王子を導く場面では、王子役のダンサーによって「どうやってマーシャの手をとってあげたいか」という心境も間も違うので、ドロッセルマイヤーを演じる僕があわせていました。いろいろな王子を見て「そういう考え方もあるんだ」という発見がありました。1つの役だけを演じ、かつその回数が増えてくると良くも悪くも固定概念が出てきてしまいます。「自分の王子はコレ!」と、見直す良いきっかけになりましたね。

ドロッセルマイヤーを演じる柄本弾とマーシャ役の秋山瑛、王子役の宮川新大
Photo: Kiyonori Hasegawa

「マーシャはくるみ割り人形の内面が見えていたのだと思います」(沖)

――数ある古典バレエの中でも、『くるみ割り人形』はどのような点に特徴があると思いますか?

沖:『くるみ割り人形』は馴染みやすく、観やすい全幕バレエだと思います。私も観客としてさまざまな振付・演出を観てきた中で思うのは、主役の夢の世界の出来事だけど、その感じ方は観る人によって違うということです。私自身、踊る立場の解釈としては、マーシャのくるみ割り王子に対する気持ちを大切にしています。マーシャはみんなが興味をもたない不細工なくるみ割り人形に惹かれるわけですが、幼い彼女にはその気持ちがなんなのかは分からない。マーシャには表面にとらわれず、くるみ割り人形の内面が見えていたのだと思いますし、それだけ強い恋、王子さまへの憧れを抱いているのだと感じています。

沖 香菜子
Photo: NBS

――そんな沖=マーシャにとって、特に印象的な場面はありますか?

沖:どの場面も好きですが、雪のパ・ド・ドゥが始まる場面は音楽も最高だし、毎回鳥肌がたちます。ただ、この場面はマーシャにとっては心理的にかなり大変なんです。この直前、戦争の場面では大きな踊りはないけれども戦争ということでいつのまにか負担がかかっているようで、気がつくといつも心拍数がものすごくあがっています。
あとはグラン・パ・ド・ドゥ。特に女性のヴァリエーションが2分以上もあり、体力的に厳しいところでどれだけ集中力を切らさずに踊れるかが毎回の課題です。音楽は壮大ですが派手さはなく、演奏している楽器の数も少ない。踊りできっちりと魅せていく必要があります。
ちなみにマーシャはほぼ出ずっぱりで、着替える時くらいしか舞台から降りられないので、結構大変な役です(笑)

マーシャ役を踊る沖香菜子
Photo: Kiyonori Hasegawa

「やはり王子さまなので輝いていないと」(柄本)
「マーシャの成長をいかに見せるかです」(沖)

――『くるみ割り人形』を踊るうえで特に大切にしている場面はありますか?

柄本:王子がお面を外す場面です。極端にいうとそこが全体の8割!というくらい意識しています。人間もそうですが、第一印象ってすごく大事じゃないですか? 『くるみ割り人形』の王子は人形として、お面をかぶって登場します。そのお面が外れた時にどういう王子さまが出てくるか? マーシャふくめ、お客さまも期待されていると思うので、いかにそのハードルをこえるかが課題です。やはり王子さまなので輝いていないと。

王子役を踊る柄本弾
Photo: Kiyonori Hasegawa

沖:これだけ毎年上演する作品は他にないので、特に演技の場面では自分の中で決まり事をつくらないようにしています。あとはマーシャの成長をいかに見せるかです。第1幕のパーティーから終盤のグラン・パ・ド・ドゥまで、作品を通して成長していく過程がお客さまに伝わるように。最後の場面でマーシャは現実に、幼い少女に戻るわけですが、夢の世界での冒険を経験したあとですから幕開きと同じ少女ではいけません。終幕はとても重要です!
実は、最後の場面は通し稽古までリハーサルをやらないんです。友佳理さんが「その時の感情を大事にしてほしい」ということで。ただ、音の取り方が難しい場面なので少しは練習しないと(笑)

マーシャ役を踊る沖香菜子
Photo: Kiyonori Hasegawa

――ご来場のお客さまへのメッセージをお願いします

柄本:『くるみ割り人形』はクリスマスシーズン、劇場で非日常を感じるという楽しみ方にピッタリな作品だと思います。特にバレエ音楽の中でもトップクラスに知られた曲の数々はバレエを観たことがない方にも親しみやすく、これまで東京バレエ団を観たことがない方でも一番マッチすると思います。1回観ただけではわからない、細かいトリックがたくさんちりばめられているところも楽しんでいただけると思いますので、まずは劇場に足を運んでいただけたら!

沖:12月になるとどこからともなく『くるみ割り人形』の音楽が聞こえてきます。そんなクリスマスモードの中、大人の方は子どものころのあたたかい気持ちを、お子さまはクリスマスのわくわく感をストレートにうけとって、マーシャと同じように夢を見ていただけたら。東京バレエ団の『くるみ割り人形』はツリーの中を冒険していくという他にはない設定ですから、今年のクリスマスはぜひ東京バレエ団で過ごしていただけたらと思います。

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東京バレエ団
『くるみ割り人形』

公演日

【東京公演】

12月12日(木)19:00
12月13日(金)19:00
12月14日(土)12:30
12月14日(土)17:30
12月15日(日)14:00
会場:東京文化会館

指揮:フィリップ・エリス 
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
児童合唱:NHK東京児童合唱団

【そのほかの公演】

【堺公演】
12月23日(月)18:30
会場:フェニーチェ堺 大ホール

【西宮公演】
12月25日(水)18:00
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

【京都公演】
12月26日(木)18:30
会場:ロームシアター京都 メインホール

[予定される演目&配役]
【東京公演】
マーシャ:秋山瑛(12/12)、沖香菜子(12/13)、足立真里亜(12/14昼)、涌田美紀(12/14夜)、 金子仁美(12/15)
くるみ割り王子:宮川新大(12/12)、柄本弾(12/13)、大塚卓(12/14昼)、生方隆之介(12/14夜)、 池本祥真(12/15)

【そのほかの公演】
【堺公演】
マーシャ:金子仁美、くるみ割り王子:池本祥真

【西宮公演】
マーシャ:沖香菜子、くるみ割り王子:柄本弾

【京都公演】
マーシャ:秋山瑛、くるみ割り王子:宮川新大

指揮:フィリップ・エリス 
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団(堺・西宮・京都)

入場料[税込]※東京公演

S=¥14,500 A=¥12,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥2,000
※ペア割引あり(S、A、B席)
※親子割引あり(S、A、B席)