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Photo: The Tokyo Ballet

2025/04/02(水)Vol.515

東京バレエ団『眠れる森の美女』
オーロラ姫役 金子仁美インタビュー
2025/04/02(水)
2025年04月02日号
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東京バレエ団

Photo: The Tokyo Ballet

東京バレエ団『眠れる森の美女』
オーロラ姫役 金子仁美インタビュー

2023年秋のニュープロダクション初演に続き、今回は来る4月に東京で、そして6月には岡山で『眠れる森の美女』のオーロラ姫役を踊る金子仁美。この2年の間にはファーストソリストへの昇格や主役の経験も重ねました。本番を控えたインタビューでは、こうした経験をふまえ、2度目となるオーロラ姫を演じることへの意欲を語ってくれました。

「2年前より自分らしく役を生きたいです」

――入団は2011年、初舞台は子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』でした。後に同作のオーロラ姫に抜擢され、『くるみ割り人形』マーシャも踊りました。そして2023年に団長(当時芸術監督)の斎藤友佳理さんの新演出・振付『眠れる森の美女』全3幕プロローグ付初演でオーロラ姫を踊りました。配役され創作に参加した印象はいかがでしたか?

金子:新制作の全幕初演の主役をいただき、オーロラ姫として舞台に立てるのは心からうれしかったです。子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』でオーロラ姫を踊った経験を踏まえて起用していただけたのではないかと感じました。『眠れる森の美女』は古典バレエの名作ですが、友佳理さんの演出は全幕を通してよりシンプルに、無駄がなく、美しい3時間になっています。そして、その中にオリジナリティがあります。

『眠れる森の美女』(2023年公演より)
Photo: Shoko Matsuhashi

――古典バレエの"薫り"を大切にする斎藤版において、独自色が濃いのは第2幕かと思います。デジレ王子と森の奥で長い眠りについているオーロラ姫は"洗礼の母"である善の妖精リラの精の導きによって出会います。ところが二人は、それぞれ現実の世界と死に近いような世界という"違う次元"にいるので、幻影と言えども簡単に触れ合うことはできません。

金子:オーロラ姫とデジレ王子は、ドリアードたちに挟まれて向き合いますが、目と目は合っているようで合っていないんです。オーロラ姫は、デジレ王子の理想の姫ですが、夢の中にいて現実には生きていません。でも、デジレ王子が夢の中から出ていく最後の最後に、二人は目を合わせるんですよ。そして、第2幕の幕切れで王子がキスをするときに「あのとき出会ったのは僕だよ!」と伝え、オーロラ姫も夢の中の出来事だったけれどハッと気がつくんです。「キスされて、起こされて、さあ結婚しましょう!」という展開ではありません。「はじめまして」で結婚するのは難しいですよね(笑)。ちなみに、オーロラ姫が目覚めてからの数分間のパ・ド・ドゥは、主役を交替で踊る3組それぞれ別々に創ったあと、友佳理さんがよい所を選んで振付を固めました。皆で一緒に創った感じがします。

『眠れる森の美女』(2023年公演より)
Photo: Shoko Matsuhashi

――ほかに好きな場面、こだわった場面はどこですか?

金子:第1幕のローズ・アダージオがたまらなく好きです。お城の中から出てきて、階段を降り、皆がいる前に出てきて踊る――。プロローグで舞台が温まり、そこで踊ったきれいな妖精たちとはまた違うオーラを出さなければいけないのでプレッシャーも大きいのですが、胸元の角度などを自分なりに工夫しました。友佳理さんからは、目の使い方を細かく教わりました。16歳のオーロラ姫では初々しさを出すために上目遣いをするのですが、そこで「黒目を使いなさい」と。逆に、第3幕の結婚式の場面では、高貴な大人の雰囲気を出せるように「真っすぐに王子を見なさい」とご指導いただきました。

――初演時の本番を踊った手応えを教えてください。

金子:全3幕の全幕作品を踊りきれたことに安堵しました。課題もたくさんあり全然満足はしていませんが、達成感はありました。友佳理さんから「あなたにオーロラ姫を任せてよかった!」という言葉をいただけたのはうれしく、それ以上の幸せはありません。それから、皆で心を一つにして踊り、凄くコミュニケーションが取れたのもよかったです。

金子仁美
Photo: The Tokyo Ballet

――今回の再演でオーロラ姫を踊るにあたり大事にしたいことは何ですか?

金子:2年前よりも自分らしく役を生きたいです。もっともっとオーロラ姫としても生きられるように、細かい部分を練習していきたいですね。岡山公演でも踊らせていただきますが、東京公演で踊るのは1回なので、その1回にいかに自分を出し切れるかが課題です。

『眠れる森の美女』
柄本弾(デジレ王子)と。(2023年公演より)
Photo: Shoko Matsuhashi

――デジレ王子は前回に続いて柄本弾さんですね。

金子:弾さんはパートナーリングに無駄がなく、仮に私がひっくり返りそうになったとしても絶対に立て直してくださいます。前回は何一つ不満がなく、気持ちよく踊らせていただきました。今回はグラン・パ・ド・ドゥを踊る際、そこからステップアップして一緒に呼吸を合わせて、よりクオリティの高いアダージオにしたいですね。格式の高いクラシック・バレエですが、結婚式の場面なので、お互いを思う愛情ものせて踊りたいです。

――公演に向けて意気込みをお聞かせください。

金子:前回は自分が踊ることに精一杯でした。しかし主役の経験を重ね、昨年ファーストソリストに昇格しましたので、今回は皆を引っぱっていきたいです。皆があってこその主役、主役あってこその皆。そこで輝けるようにしたいですね。私は自分に全然自信を持てないのですが、そんなことを言っていられません。二度目となると、初演の新鮮さを超える何かが自分自身にもないといけないので、そこをしっかりと見据えていきたいです。

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)

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東京バレエ団
『眠れる森の美女』

公演日

【東京公演】
4月24日(木)18:30 (完売)
4月25日(金)18:30
4月26日(土)12:30
4月26日(土)18:30
4月27日(日)14:00
4月28日(月)14:00 (完売)
4月29日(火・祝)13:00
会場:東京文化会館

指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【そのほかの公演】
【大分公演】
6月7日(土)14:00
会場:iichiko総合文化センター・iichikoグランシアタ

【岡山公演】
6月11日(水)18:30
会場:岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場

【大津公演】
6月14日(土)14:00
会場:滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホール

指揮:井田 勝大
演奏:九州交響楽団(大分、岡山、大津)

予定される主な出演者

【東京公演】
オーロラ姫:永久 メイ [ゲスト](4/24, 4/28)、秋山 瑛(4/25, 4/27昼)、沖 香菜子(4/26昼, 4/29)、金子 仁美(4/26夜)
デジレ王子:宮川 新大(4/24, 4/28)、大塚 卓(4/25, 4/27昼)、秋元 康臣 [ゲスト](4/26昼, 4/29)、柄本 弾(4/26夜)

【大分公演】
オーロラ姫:秋山 瑛
デジレ王子:大塚 卓

【岡山公演】
オーロラ姫:金子 仁美
デジレ王子:柄本 弾

【大津公演】
オーロラ姫:沖 香菜子
デジレ王子:宮川 新大

入場料[税込]

※東京公演
S=¥15,000 A=¥12,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥2,000 
※ペア割引あり(S、A、B席)
※親子割引あり(S、A、B席)