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Photo: Shoko Matsuhashi

2025/07/02(水)Vol.521

〈バレエ・スプリーム〉2025
英国ロイヤル・バレエ団 サラ・ラム インタビュー
2025/07/02(水)
2025年07月02日号
バレエ
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Photo: Shoko Matsuhashi

〈バレエ・スプリーム〉2025
英国ロイヤル・バレエ団 サラ・ラム インタビュー

この8月、2020年のコロナ禍によるオンライン開催以来5年ぶり、実際の舞台では8年ぶりの待望の開催となる〈バレエ・スプリーム〉。バレエ界の頂点に君臨する2大バレエ団――パリ・オペラ座と英国ロイヤル・バレエ団の選りすぐりのトップダンサーたちが集う〈バレエ・スプリーム〉で、英国ロイヤル・バレエ団チームのリーダーを務めるサラ・ラムに、リーダーとして、そしてダンサーとしての取り組みを聞きました。

「ロイヤル・バレエ団の歴史とレパートリーの多彩さを感じていただけるプログラムになったと自負しています」

――今回の〈バレエ・スプリーム〉で、サラさんは英国ロイヤル・バレエ団チームのリーダーを務められます。出演者や演目を決めるこのような役割は、過去にも経験していらっしゃるのでしょうか?

サラ・ラム:いえ、今回が初めて。やってみませんかとお声がけいただいた時はとても光栄でした。出演ダンサーについても演目についても、NBSの皆さんと話し合いを重ねながら決めていったのですが、ロイヤル・バレエ団の歴史とレパートリーの多彩さを感じていただけるプログラムになったと自負しています。私にこういう役割が向いているとは思っていなかったから、お話をいただいた時は驚いたけれど、挑戦してみて本当に良かった。学びもたくさんあったので、今後もぜひやっていきたいですね!

――ダンサーと演目を選ぶにあたり、特に重視されたことを教えてください。

ラム:ひとつは、クラシックとコンテンポラリーのバランス。それから、ダンサーそれぞれの今の立ち位置、キャリアの中でどんな段階にいるのかという点。そして何より、彼らが楽しく踊れるパ・ド・ドゥであること!  どんな時も、それが成功の一番の鍵ですから。

サラ・ラム
Photo: Shoko Matsuhashi

――サラさんご自身の踊りについても伺います。サラさんのファンは、あなたの卓越したテクニックと深い解釈に常に魅了されてきました。そしてどちらも、どんどん洗練されていっているように思うのですが、一体どのような役作りがそれを可能にしているのでしょう。

ラム:私が大切にしていることが、客席にちゃんと届いていることが分かって嬉しいです。皮肉なことに、アーティスト、特に舞台に立つ者は、経験を――舞台上での経験はもちろん人生経験も――積めば積むほど時が流れ、身体が変化していくという自然現象からは逃れることができません。
役にアプローチする時は、原作がある場合は特に、よく読み込むようにしています。たとえば『ロミオとジュリエット』。初めて読んだのは12~13歳の頃だったのですが、その時に台詞の一部を暗記したんですね。その経験は、その後この役についてさらに学び、考えを深め、役を育てていく上での豊かな土壌になっていると思います。長い時間の中で、私のジュリエットの解釈は大きく変わってきました。マノン・レスコーについても、同じことが言えますね。『マノン』に出会ったのはロイヤルに入ってからでしたが、マノンについて考え続けることで、私自身が成長・変化してきた。私はひとつの役について学び続け、想像し続けることが大好きなんですよ。
役や人生を通じて感じた愛や喪失は、まるで上書きされても消えずに残る羊皮紙上の文字のように、私の一部として蓄積されていきます。私の表現が洗練されていっていると思っていただけるのだとしたら、その階層が舞台上に現れているからではないでしょうか。

「ロミオとジュリエット』(2023年英国ロイヤル・バレエ団日本公演より)
Photo: Kiyonori Hasegawa

――今回の公演ではその『マノン』、『白鳥の湖』、そして日本では初披露となる『ラ・バヤデール』のニキヤを踊られます。それぞれの作品を紹介していただけますか。

ラム:『マノン』第1幕の出会いのパ・ド・ドゥは、ガラ公演で踊られることがそう多くない演目。昨年夏にウィリアム・ブレイスウェルと踊ったのですが、彼が本当に素晴らしかったんですよ。同じ演目を頻繁に踊ることは好きではないのですが、これはあまりにも楽しかったからまたぜひ一緒に踊りたくて、彼を誘ったら快諾してくれました。
『白鳥の湖』の白鳥を単独で踊るのは、東京では初めて。実はあるツアーで、金曜にステイーヴン・マックレーと、土曜にはカルロス・アコスタと、2日連続で『白鳥』全幕を踊ったことがあるんですね。しかも前の週に、『不思議の国のアリス』に連続主演して、さらにはガラにも出演したあと、というスケジュール。とても大変でしたが、不可能だと思ったことでもやればできる、という学びを得ることができました。これは、私のキャリアの中で、この作品がいかに重要かを物語るエピソードのひとつ。『白鳥』は、私が初めて踊った三幕物のバレエであり、ボストン・バレエ団で踊った最後の作品であり、その後1年経たずにロイヤルで踊った初めての全幕バレエでもあるんです。
そしてニキヤと『ラ・バヤデール』も、私のキャリアの中でとても重要。19歳の時、影の王国の第2ヴァリエーションをナタリア・ドゥジンスカヤに指導してもらったり、前日に急に言われてガムザッティを踊ったり(笑)。ニキヤを初めて演じたのはロイヤルに入ってからで、その時にはオルガ・エヴレイノフとナタリア・マカロワの指導を受けることができました。今回もオルガがコーチとして帯同し、この美しいバレエに欠かせないスタイルを指導してくださることを、とてもありがたく思っています。

「マノン』 サラ・ラム&ウィリアム・ブレイスウェル(2024年第17回世界バレエフェスティバルより)
Photo: Kiyonori Hasegawa

――〈バレエ・スプリーム〉は、英国ロイヤル・バレエ団とパリ・オペラ座バレエ団の合同公演です。二つのバレエ団の特徴を、サラさんはどのようにご覧になっていますか?

ラム:ロイヤル・バレエ団は、サー・フレデリック・アシュトンに代表されるスタイルと共に、サー・ケネス・マクミランの物語バレエによっても知られています。世界中のカンパニーが上演したがる作品ばかりで、これほど多くの作品を輸出しているカンパニーは、ニューヨーク・シティ・バレエを除けばほかにないように思います。また、男性ダンサーの力強さも、ロイヤルが誇る伝統であり特徴ですね。
そしてパリ・オペラ座については、ダンサーたちの素晴らしいテクニックや足さばき、その作品の質の高さに畏怖の念すら抱いています。観られるのが本当に楽しみ!

――ところでサラさんは昨年、ロイヤル在籍20周年を迎えられましたね。

ラム:そんなに時が経ったなんて信じられないけれど(笑)、経っているんですよね。アメリカに残っていたら、こんなに長いキャリアを築くことはできなかったと思います。ロイヤルにいられること、私を信じてそのチャンスをくれたモニカ・メイスン、公私にわたる素晴らしい仲間たち......20年間のすべてを心からありがたく、幸運に感じています。

――最後に改めて、日本のファンにメッセージをお願いします!

ラム:日本の観客に勝る観客は、世界中どこを探してもいないと思います。また東京で公演できることを本当に嬉しく思いますし、皆さんの長年にわたるサポートと励ましには感謝してもし切れません。〈バレエ・スプリーム〉も、皆さんに楽しんでいただけますように!

*このインタビューはオンラインとメールによって行われたものをまとめました。

文:町田麻子(フリーライター)

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〈バレエ・スプリーム〉2025

公演日

【Aプロ】(ロイヤルチーム出演)

8月1日(金)18:30
8月2日(土)14:00
8月3日(日)14:00

【Bプロ】(合同公演)

8月5日(火)18:30
8月6日(水)18:30
8月7日(木)18:30

【Cプロ】(オペラ座チーム出演)

8月9日(土)14:00
8月10日(日)14:00
8月11日(月・祝)14:00

会場:東京文化会館(上野)

※音楽は特別録音による音源を使用します。

予定される出演者

[英国ロイヤル・バレエ団チーム]

サラ・ラム(プリンシパル)
マシュー・ボール(プリンシパル)
ウィリアム・ブレイスウェル(プリンシパル)
セザール・コラレス(プリンシパル)
フランチェスカ・ヘイワード(プリンシパル)
金子 扶生(プリンシパル)
マヤラ・マグリ(プリンシパル)
ワディム・ムンタギロフ(プリンシパル)
五十嵐 大地(ソリスト)※Aプロのみ
ヴィオラ・パントゥーソ(ファースト・アーティスト)※Aプロのみ

[パリ・オペラ座バレエ団チーム]

ロベルト・ボッレ(ゲスト)
ブルーエン・バティストーニ(エトワール)
ポール・マルク(エトワール)
オニール八菜(エトワール)
パク・セウン(エトワール)
ロクサーヌ・ストヤノフ(エトワール) ※Cプロのみ
カン・ホヒョン(プルミエール・ダンスーズ) ※Cプロのみ
アントワーヌ・キルシェール(プルミ・ダンスール)※Cプロのみ
アントニオ・コンフォルティ(スジェ) ※Cプロのみ
ロレンツォ・レッリ(スジェ)
ミロ・アヴェック(コリフェ)

※プログラムについては公式サイトをご覧ください。

入場料[税込]

【A・Cプロ】
S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000
C=¥13,000 D=¥11,000 E=¥9,000
U25シート=¥4,500
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

【Bプロ】
S=¥23,000 A=¥21,000 B=¥19,000
C=¥17,000 D=¥15,000 E=¥13,000
U25シート=¥5,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

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