パリ・オペラ座バレエ団と英国ロイヤル・バレエ団の精鋭ダンサーたちが集う〈バレエ・スプリーム〉。今回オペラ座チームの中でもバレエ・ファンの注目を集めそうなのがカン・ホヒョン。今シーズン、プルミエール・ダンスーズへの昇進を果たしたカンにパリ在住のエディター大村真理子さんがインタビューしました。
今年1月22日、プルミエ・ダンスールに3名が昇級したことが発表された。前シーズン同様、今シーズンもスジェからプルミエへはコンクールではなく任命方式。アンドレア・サーリ、マリーヌ・ガニオとともにカン・ホヒョンが1月1日に遡って、新しい階級となったのだ。発表直前、ホヒョンとロレンツォ・レッリはジョゼ・マルティネス芸術監督のオフィスに呼ばれ、『眠れる森の美女』を二人が一緒に踊ることを伝えられた。
「そしてジョゼが"もう1つ別のサプライズがあります!"と。こうしてロレンツォがスジェ、私がプルミエールに任命されたことを伝えられました。全く思ってもいないことでした。でも、実は私、時々プルミエールに上がったことを忘れてることがあるんですよ(笑)。スジェ時代から配役に恵まれてたこともあって仕事に大きな変化はなく、楽屋はスジェになった時から二人部屋で、今もビアンカ(・スクダモア)と一緒だし......」
屈託ない笑顔でこう語るカン・ホヒョン。韓国の学校の教師はかつてパリ・オペラ座の団員で、彼の勧めで2017年に受けた外部入団試験の結果、彼女は契約団員になった。そして、その翌年に正式入団。パリ・オペラ座について、韓国時代、あまり知識がなかったという。
「世界で最も素晴らしいカンパニーという程度。それが、まさかそこで自分が踊れることになるなんて! フレンチスタイルは周りのダンサーたちを見て学びました。ここには魅力溢れるダンサーがたくさんいます。こうして働き始め、以来、パリ・オペラ座に私はすっかり心を奪われているんです。レパートリーも幅広く、それに衣裳がとにかく素晴らしい! 今年で150年というガルニエ宮の中で働くって、自分がダンスの歴史の一部となってるみたいで誇らしく感じます」
彼女にとって今シーズンはこれまでで最高の年だったという。『ブレイク・ワークス I』と『うたかたの恋』以来、すべてが新しい作品。『シルヴィア』のナイアード役のソロでは、創作者マニュエル・ルグリから多くを教わる機会に恵まれた。10年以上前に韓国で彼が踊った舞台を観て魅了された彼女は、公演後に彼にツーショット写真をお願いした、と笑い、「成長し、自分がこうして彼と一緒にドゥミ・ソリストの仕事をするなんて!」とこの幸運を喜んでいる。
今シーズンで、つい昨日に公演があったかのように強く印象に残っているというのは、一度だけだったけれどロレンツォ・レッリと踊ったヌレエフ版『眠れる森の美女』のオーロラ姫だ。彼女のコーチを務めたのは、〈バレエ・スプリーム〉でオペラ座チームの指導にあたる"ヌレエフ・チルドレン"の一人、フロランス・クレールだった。
「最初ちょっと演技の面で苦労しました。『ドン・キホーテ』はもっと遊びがあったのに対し、これはピュアなクラシックのテクニックで踊ります。同時にオーロラ姫として物語を語る必要があったので、ちょっと怖気付いてしまって。でも音楽、舞台装置、衣裳などステージには私がオーロラ姫になれる要素がすべて揃っていたんです。当時のコスチュームをつけたコール・ド・バレエに周囲を取り囲まれ、この時代に連れていかれました。それに彼らが私を本当のプリンセスのような視線で見てくれて! ヌレエフ作品に精通しているフロランスからは、これでもかというほど技術面でプッシュされましたけど、彼女は決して自分が踊ったように、と強いることはせず、私のスタイルに合うようにと二人でやりとりを重ねて...... 多くを学びました。この作品の稽古中にプルミエール・ダンスーズに任命されたので、発表翌日、稽古場に行った時はちょっとプレッシャーを感じましたね。スジェでオーロラ姫を踊るのより、責任はとても大きいのです。いつも以上に稽古に集中しました」
〈バレエ・スプリーム〉のパートナーはアントワーヌ・キルシェールだ。彼とは『パキータ』のパ・ド・トロワを一緒に踊ったことはあるが、本格的パ・ド・ドゥを踊るのはこれが初の機会となる。とはいえ日頃からオフの時間も仲間として一緒に過ごす事もある打ち解けた関係にあり、アイディアなど気楽に話し合える相手だという。二人が踊る作品の1つは『ラ・シルフィード』。稽古はこれからだというが――。
「オペラ座のはラコット版ですが、日本で踊るのはブルノンヴィル版です。私はまだオペラ座でこの作品に配役されたことがないのですが、下肢の仕事がたくさんですね。それに比べるとブルノンヴィル版はラコット版のような足の細かいステップはなく、むしろ上半身に語らせる部分が多い......そのように2つの違いをみています」
ソリストとして初の来日となる〈バレエ・スプリーム〉。彼女はこの公演ではCプロだけの参加だが、オペラ座の偉大なエトワールたちと一緒にガラに参加できるというだけで、とても栄誉に感じていると目を輝かせる。
「ステージで彼らと共に踊ることはないけれど、英国ロイヤル・バレエ団と一緒のプロジェクトというのは素晴らしいです。フミ(金子扶生)もいるし、スターばかり! 今から私はまるで子どものようにワクワクしています。2024年2月の来日公演では『白鳥の湖』のパ・ド・トロワでヌレエフのクラシックテクニックを、また『マノン』では高級娼婦役で演劇面をお見せしました。今回踊るのはバランシンとブルノンヴィヴル。色々なスタイルのバレエを喜びをもって踊る、という私のいわば"強み"を日本の観客の皆さまにお見せできる機会となるでしょう。自分のベストをお見せしたいと思っています」
取材・文 大村真理子(パリ在住、エディター)
8月1日(金)18:30
8月2日(土)14:00
8月3日(日)14:00
8月5日(火)18:30
8月6日(水)18:30
8月7日(木)18:30
8月9日(土)14:00
8月10日(日)14:00
8月11日(月・祝)14:00
※音楽は特別録音による音源を使用します。
サラ・ラム(プリンシパル)
マシュー・ボール(プリンシパル)
ウィリアム・ブレイスウェル(プリンシパル)
セザール・コラレス(プリンシパル)
フランチェスカ・ヘイワード(プリンシパル)
金子 扶生(プリンシパル)
マヤラ・マグリ(プリンシパル)
ワディム・ムンタギロフ(プリンシパル)
五十嵐 大地(ソリスト)※Aプロのみ
ヴィオラ・パントゥーソ(ファースト・アーティスト)※Aプロのみ
ロベルト・ボッレ(ゲスト)
ブルーエン・バティストーニ(エトワール)
ポール・マルク(エトワール)
オニール八菜(エトワール)
パク・セウン(エトワール)
ロクサーヌ・ストヤノフ(エトワール) ※Cプロのみ
カン・ホヒョン(プルミエール・ダンスーズ) ※Cプロのみ
アントワーヌ・キルシェール(プルミ・ダンスール)※Cプロのみ
アントニオ・コンフォルティ(スジェ) ※Cプロのみ
ロレンツォ・レッリ(スジェ)
ミロ・アヴェック(コリフェ)
【A・Cプロ】
S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000
C=¥13,000 D=¥11,000 E=¥9,000
U25シート=¥4,500
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり
【Bプロ】
S=¥23,000 A=¥21,000 B=¥19,000
C=¥17,000 D=¥15,000 E=¥13,000
U25シート=¥5,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり