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2025/07/16(水)Vol.522

〈バレエ・スプリーム〉2025
英国ロイヤル・バレエ団 ヴィオラ・パントゥーソ&五十嵐大地 インタビュー
2025/07/16(水)
2025年07月16日号
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(写真;本人提供)

〈バレエ・スプリーム〉2025
英国ロイヤル・バレエ団 ヴィオラ・パントゥーソ&五十嵐大地 インタビュー

英国ロイヤル・バレエ団とパリ・オペラ座バレエ団の精鋭ダンサーたちの華麗な競演が今夏東京で実現する〈バレエ・スプリーム〉。綺羅星のごときスターダンサーたちの中で、今回の"台風の目"になりそうなのが英国ロイヤル・バレエ団のヴィオラ・パントゥーソと五十嵐大地の2人。ともに20代前半の若さでありながら、クラシックからコンテンポラリーまで主要な役に次々と抜擢され、バレエ団の主力として多くの作品で活躍しています。そんな2人が現地でのリハーサルの合間をぬってオンラインでインタビューに応じてくれました。

"台風の目"となるか。英国ロイヤル・バレエ団2人の若き実力派

――英国ロイヤル・バレエ団の新鋭ダンサーとして、日々、どのようなスケジュールで生活されていますか。

ヴィオラ・パントゥーソ(以下ヴィオラ)9時30分か10時からレッスンを受け、昼間はずっとリハーサル、夜は公演。シーズンの最中はランチの時間がとれたらラッキーだと思ってしまうくらいに忙しい毎日です。

五十嵐大地(以下大地)トリプルビルを上演するときは、特に忙しくなります。公演で別の作品を踊りながら、5〜6作品のリハーサルが同時進行。僕が入団した2020年はコロナ禍の真っ最中で公演がなかったので、マスクを着けたままレッスンを受けたら自宅に直帰するしかなかった。なんて楽な仕事なんだって思ったけれど(笑)、2年目からは毎日公演、毎日リハーサルの本格的な"ロイヤル漬け"の生活が始まりました。ハードだけれど、ハッピーな僕たちの日常です。

――昨年9月に開幕した2024/2025シーズンが6月末に終了したところです。ヴィオラさんは、2024年9月のシーズン初日に『不思議の国のアリス』の主演に抜擢されて絶賛されるなど、飛躍の一年になりました。

ヴィオラ:新作や初役に挑戦するなど、新しい経験をして成長できたシーズンだったと思います。本当にいろいろな経験をしましたが、やはり『不思議の国のアリス』に主演したことは忘れられない出来事です。夏のシーズンオフが終わってから直ぐにリハーサルがスタートしたので、体調を戻しながら振付を覚えるのが大変でした。全3幕の大作で、アリスの出演シーンが多く、他のキャラクターだけでなく、大きくなったり小さくなったりするドアや部屋とも"共演"します。一瞬一瞬のすべてを楽しむことができました!

オンラインでのインタビューに答えるヴィオラ・パントゥーソと五十嵐大地

――大地さんはソリストに昇進して迎えた初のシーズンでした。

大地:その時に出演する作品、キャストされた役に集中して100%の力を出し切っているうちに、あっという間に時間が過ぎていました。ウェイン・マクレガーの新作『マッド・アダム』全3幕(2024年11月英国ロイヤル・バレエ団初演)のバレエ団初演に参加したし、以前踊った役に再チャレンジする機会もありました。役って、舞台で踊れば踊るほど、自分に馴染んでいくんですよ。『ロミオとジュリエット』ではマキューシオを何度も演じるうちに、いま、自分はマキューシオとして生きているんだ、という感覚になりました」

ヴィオラ:ジョン・クランコ振付『オネーギン』のオリガを演じた時、私も同じ経験をしたわ。最初の出演が今年の1月、最後の出演が6月だったので、時間をかけて自分の舞台を振り返ることができたし、パートナーとのコンビが深まり、どんどん役に入り込めるようになったの。とてもエキサイティングなでした。

――今後、演じたい役はありますか?

ヴィオラ大地(二人同時に)「もちろん!」

ヴィオラ:いちばん好きな作品はケネス・マクミランの『うたかたの恋(マイヤリンク)』。いつかマリー・ヴェッツェラを踊ってみたいです。それから、『ロミオとジュリエット』のジュリエットも。バレリーナなら誰でも夢見る"ドリーム・ロール"です。

大地:いつか『ドン・キホーテ』のバジルを演じたいです。子どもの頃からバジル* のソロを踊ってきたし、今の僕に合う役だと思います。

* 2013年にニューヨークで開催された「ユース・アメリカ・グランプリ」の公式YouTubeチャンネルで、少年時代の五十嵐大地がソロを踊る映像が公開されている。

BALLET - Daichi Ikarashi: Don Quixote Basilio Variation - New York Finals 2013
https://www.youtube.com/watch?v=wvoEF_BEuHk

――ヴィオラさんと大地さんの持ち役も"ドリーム・ロール"もとても多彩ですが、このようなレパートリーを持つバレエ団の特長は何だと思われますか?

大地:他のバレエ団を観ていて気づかされるのは、ロイヤルのダンサーたちのテクニックに統一感があることです。団員の90%以上が、ロイヤル・バレエ学校の卒業生なんじゃないかな。特にコール・ド・バレエの統一感は凄いです。これがバレエ団の基盤を支える、アメージングな強みだと思います。

ヴィオラ:芸術面では、物語作品を得意にしていること。英国ロイヤル・バレエ団が大切にしている伝統です。女優のように役柄を演じることのできるバレリーナを輩出しているのは、この伝統のなせる技ではないかしら。技術面では、たとえば素早いフットワークのような英国特有のテクニックを身につけていること。でも、演技力だけ、テクニックだけが優秀なのではなくて、それぞれが融合して踊り自体に表現力があります。私たちの身上は、ハートのある踊りなんです。

五十嵐大地
(写真:本人提供)

――今回の〈バレエ・スプリーム〉Aプロでお二人が披露するのは、アシュトン版『リーズの結婚』と『パリの炎』のパ・ド・ドゥです。英国ロイヤル・バレエ団のレパートリーではない『パリの炎』は、どのようにリハーサルをするのですか?

ヴィオラ:他のダンサーの舞台や映像を見て振付を憶え、自分たち自身で試行錯誤しながらリハーサルをします。アドバイスやコーチングが必要だと思った時には、その作品を踊ったことのある他のダンサーに相談します。世界各地のガラなどで踊ったことのある経験豊かなダンサーたちが大地や私のような若手をサポートしてくれるので、とても心強いです。

大地:外部のガラ公演などに参加し、ヴィオラと『ディアナとアクテオン』や『海賊』のパ・ド・ドゥなどを踊ったことがあります。ロイヤルのレパートリーではないので迷う気持ちがあり、芸術監督のケヴィン・オヘアに相談しました。彼は、新しいことに挑戦するよい機会になるといって、背中を押してくれました。新しいレパートリーにチャレンジするからこそ得られる経験がある、だからより多くの役にチャレンジしたいと思っています。

ヴィオラ・パントゥーソ
(写真:本人提供)

――〈 バレエ・スプリーム〉に出演するにあたり、メッセージをお願いします。

ヴィオラ:再来日して、英国ロイヤル・バレエ団の錚々たるダンサーと一緒にガラ公演に出演できるなんて、とても光栄です。2年前の英国ロイヤル・バレエ団日本公演に参加し、日本という国と日本の人たちが大好きになりました。ファンの皆さんの熱心さも心に残っています。また新たな、素敵な出会いがあることを楽しみにしています。

大地:日本の舞台で踊れることにワクワクしています。ふだん僕の踊りを観ることのできない家族や友人の前で踊れるからだけでなく、ダンサーとして成長途上にある22歳の僕が、前回の日本公演からどれだけ変化を遂げたのか、観て欲しいと思っているんです。今回だけでなく今後も日本で踊る毎に、僕が経験を積み、前進し、成長し続ける姿を観てもらえるように全力を尽くします。ぜひ劇場にいらしてください!

(文責:NBS)

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〈バレエ・スプリーム〉2025

公演日

【Aプロ】(ロイヤルチーム出演)

8月1日(金)18:30
8月2日(土)14:00
8月3日(日)14:00

【Bプロ】(合同公演)

8月5日(火)18:30
8月6日(水)18:30
8月7日(木)18:30

【Cプロ】(オペラ座チーム出演)

8月9日(土)14:00
8月10日(日)14:00
8月11日(月・祝)14:00

会場:東京文化会館(上野)

※音楽は特別録音による音源を使用します。

予定される出演者

[英国ロイヤル・バレエ団チーム]

サラ・ラム(プリンシパル)
マシュー・ボール(プリンシパル)
ウィリアム・ブレイスウェル(プリンシパル)
セザール・コラレス(プリンシパル)
フランチェスカ・ヘイワード(プリンシパル)
金子 扶生(プリンシパル)
マヤラ・マグリ(プリンシパル)
ワディム・ムンタギロフ(プリンシパル)
五十嵐 大地(ソリスト)※Aプロのみ
ヴィオラ・パントゥーソ(ファースト・アーティスト)※Aプロのみ

[パリ・オペラ座バレエ団チーム]

ロベルト・ボッレ(ゲスト)
ブルーエン・バティストーニ(エトワール)
ポール・マルク(エトワール)
オニール八菜(エトワール)
パク・セウン(エトワール)
ロクサーヌ・ストヤノフ(エトワール) ※Cプロのみ
カン・ホヒョン(プルミエール・ダンスーズ) ※Cプロのみ
アントワーヌ・キルシェール(プルミ・ダンスール)※Cプロのみ
アントニオ・コンフォルティ(スジェ) ※Cプロのみ
ロレンツォ・レッリ(スジェ)
ミロ・アヴェック(コリフェ)

※プログラムについては公式サイトをご覧ください。

入場料[税込]

【A・Cプロ】
S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000
C=¥13,000 D=¥11,000 E=¥9,000
U25シート=¥4,500
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

【Bプロ】
S=¥23,000 A=¥21,000 B=¥19,000
C=¥17,000 D=¥15,000 E=¥13,000
U25シート=¥5,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

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