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2025/08/20(水)Vol.524

東京バレエ団『ラ・シルフィード』
沖香菜子×秋山瑛 2人のシルフィードが語るロマンティック・バレエの世界
2025/08/20(水)
2025年08月20日号
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東京バレエ団『ラ・シルフィード』
沖香菜子×秋山瑛 2人のシルフィードが語るロマンティック・バレエの世界

東京バレエ団が来る11月に上演する『ラ・シルフィード』。ロマンティック・バレエの傑作でありながら日本で全幕を観られる機会は少なく、かつ失われた振付を復刻させた"ラコット版"を上演できるのは国内では東京バレエ団のみです。そんな作品でタイトルロールのラ・シルフィードを演じる沖香菜子、秋山瑛のふたりが作品の魅力を語り合いました。

振付も音取りもカウントもすべてが決まっている

――沖さんは2013年、まだコール・ド・バレエを踊っていたとき『ラ・シルフィード』の主役(以下、シルフィード)に抜擢され、今回が4回めですね。これまでどのような指導がありましたか?

沖:最初のときは主演のお話をいただいたのがまだ入団3年目だったので本当にびっくりしました。そのとき、ちょうど(斎藤)友佳理さんが東京バレエ団で初めて指導に入られたタイミングだったこともあって、リハーサルの時間をかなり取ってくださったんです。その期間、ほとんど個別でスタジオにこもっていたので、バレエ団のみんなに会うと「久しぶり!」みたいな感じでした。

秋山:私は前回(2020年)エフィー役を踊らせていただいたのですが、この作品はほかよりもリハーサルの時間を長く取っていた記憶があります。まだ今回のリハーサルは始まっていないのですが、エフィーも大変だったのに、ラ・シルフィード役はさらに難しそうで......。友佳理さんにとって思い入れのある作品なので、きっと細かく教えていただけますよね?

沖:友佳理さんが(振付家のピエール・)ラコットさんから直接教わった確かなものがあって、振付も音取りもカウントもすべてがきっちり決まってます。私たちがリハーサルをするときって、ある振付に対して「もっとこうしてみようか」とか「ここは少し変えてみよう」とか、ある種の"遊び"を加えながら作り上げることが多いのですが、『ラ・シルフィード』はその逆。すでに作り上げられているものを覚えて、自分のものにするという感覚ですね。覚えるのは大変だけど、最初の迷いがないから覚えたらすんなりいくと思う。瑛なんだから絶対に大丈夫!

『ラ・シルフィード』(2020年公演より)
沖香菜子(ラ・シルフィード)、秋元康臣(ジェイムズ)、秋山瑛(エフィー)
Photo: Kiyonori Hasegawa

ラ・シルフィードは何をしても愛らしく、許される存在

――ラ・シルフィードは妖精で、人間ではない役柄ですが、どのようなキャラクターだととらえていらっしゃいますか?

沖:例えば年齢設定もわからないし、そもそも歳を取っていく存在なのかもわからないので、自分の想像で作り上げるしかない部分が多いですね。ラ・シルフィードはエフィーからジェイムズを奪うわけだし、考えなしな行動も多いのですが(笑)、性格が悪く見えてはいけない。どんなことをしても愛らしく、許される存在として踊りたいと思っています。

秋山:ラ・シルフィードは妖精なので無重力なイメージ。同じロマンティック・バレエでも『ジゼル』とは全然違いますよね。

沖:ジゼルは霊なので、振付ももっと幽玄で流れていく感じ。でもラ・シルフィードには羽がついていて、パタパタと動きます。細かいパが多いですね。でも動きが止まって見えてはいけないので、いつもより深くプリエをして柔らかく見せられるように工夫しています。

秋山:私は群舞を踊ったときに、友佳理さんから「3km先にいる小鳥を見るように」と言われたのを覚えています。目の前を見ると現実的な目線になってしまうから、遠くにあるものを見つめるようにと。

『ラ・シルフィード』(2020年公演より)
沖香菜子(ラ・シルフィード)、秋元康臣(ジェイムズ)
Photo: Kiyonori Hasegawa

――難しい振付も多い作品だと思いますが、なかでも工夫が必要なシーンは?

沖:実はこの作品、ラ・シルフィード役のヴァリエーションが多いんです。なかには短めのものもありますが、7つもソロが入っているんですよ。

秋山:ひとつの作品でそんなにヴァリエーションを踊ることって、なかなかないですよね。私はエフィー役で出たとき、1幕でラ・シルフィードとジェイムズとのアダージオを踊ったら、照明の暗さにびっくりしました。真っ暗!って(笑)

沖:そう、真っ暗なの! 3人のアダージオの場面も暗いんですけど、そのあとにエフィーとジェイムズのソロで照明が少し明るくなって目が慣れたところに、また照明が消えてラ・シルフィードのヴァリエーションが始まるという......。ピンスポットの狭い光が自分にだけ当たって、周りは真っ暗ななかで踊るのはかなり恐怖(笑)

秋山:あんなに暗いと、周りに座っているダンサーもよく見えないですよね。

――『ラ・シルフィード』は、宙を飛んだり、暖炉から消えたりと、装置の面でもさまざまな仕掛けがあるのも特徴ですよね。

沖:板に乗ったまま移動するところもあって、動いてしまうと世界観を壊してしまうので大変。あと、2幕の最初にドライアイスのスモークをたくので、乾くまでは床が結露して滑るんですよ。その上を細かく走らないといけないので注意が必要ですね。ただ、あの幻想的な世界観を出すには、スモークが必要なのもわかります。

秋山:あとは第2幕で木の上から2人を迎えるシルフィードの1人を演じたこともあるのですが、セットに高さがあるので上からのぞきこむ時にヒヤッとした覚えがあります。

温かく幸せに満ちたコール・ド・バレエの世界

――秋山さんはこれまで第2幕でシルフィードたちのひとりを踊られた経験がありますが、この作品の群舞コール・ド・バレエの印象はいかがですか?

秋山:『ラ・シルフィード』のコール・ド・バレエが大好きです。あんなにアクティブに動きながら隊形を変えるコール・ドってなかなかない。ズレやすくて難しいんですが、かわいいフォーメーションが多いんですよ。みんなで囲んだり、小さな円をいくつも作ったり、交差したりとユニークな構成が多くて、なんだかかわいい。音楽も素敵です。

沖:ほとんどの作品で、群舞のダンサーは感情を表さずにすっと立っていることが多いんですよね。あとは『白鳥の湖』みたいに哀愁が漂っていたり。でも『ラ・シルフィード』のコール・ドの空間は幸せに満ちていて、明るくて......、

秋山:温かい!

――声がそろいましたね(笑)

沖:コール・ド全員がニコニコ微笑んでいて、色で言うとピンク色。平和で温かい空間なんです。そのコール・ドに囲まれて踊ると本当に居心地がいいんですよね。

『ラ・シルフィード』(2020年公演より)
Photo: Kiyonori Hasegawa

お互いのパートナーについて

――今回、沖さんは宮川新大さんと、秋山さんは生方隆之介さんと踊られますね。お互いのパートナーについてお聞かせください。

沖:新大くんは優しくて、好きなだけ練習に付き合ってくれる人です。前回、彼がジェイムズを踊ったときはパートナーではなかったのですが、舞台を観たらあのつま先でのアントルシャ・シスのまぁ美しいこと! 今回も美しい踊りを披露してくれることでしょう。

秋山:隆之介くんは探求心のあるダンサーで、役への取り組みがとても深いんです。普段はけっこう淡々としているんですけど、バレエについて語り出したり、役に入りこんだら熱い人ですね! 自分の目指したいところや考えていることをはっきりと伝えてくれるタイプで一緒に踊れるのは幸せです! 私たちはお互いに初役なので、一緒に作り上げていくのが楽しみです!

取材・文:富永明子(編集者・ライター)

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東京バレエ団
『ラ・シルフィード』全2幕

公演日 【東京公演】

11月2日(日)14:00
11月3日(月・祝)14:00

会場:東京文化会館(上野)

演奏:シアターオーケストラトウキョウ

入場料[税込] ※東京公演

S=¥15,000 A=¥12,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥2,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

[予定される主な配役]

ラ・シルフィード:沖 香菜子(11/2)、秋山 瑛(11/3)
ジェイムズ:宮川 新大(11/2)、生方 隆之介(11/3)
エフィー:三雲 友里加(11/2)、足立 真理亜(11/3)