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Photo: Nobuhiko Hikiji

2025/10/15(水)Vol.528

東京バレエ団『ドン・キホーテ』
涌田美紀インタビュー
2025/10/15(水)
2025年10月15日号
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Photo: Nobuhiko Hikiji

東京バレエ団『ドン・キホーテ』
涌田美紀インタビュー

3年ぶりの全幕上演となる『ドン・キホーテ』、6組の主役ペアの登場は、東京バレエ団のダンサーの層の厚さゆえに実現するところです。今回は、初日に気鋭の二山治雄とペアを組む涌田美紀のインタビューをお届けします。11月の『ドン・キホーテ』に続き、12月には『くるみ割人形』でも主演をつとめることもふくめ、それぞれの役への視点を語ってくれました。

「『ドン・キホーテ』はこれまでのバレエ人生を一緒に歩んできた作品。今回は演技にこだわりたい!」

――『ドン・キホーテ』は2021年、代役として初の全幕主演をかざった作品でした。涌田さんにとってはやはり思い入れの深い作品なのでしょうか?

涌田:思い返すと、私にとってはこれまでのバレエ人生を常に一緒に歩んできた作品ではないかと......。コンクールでもよくキトリのヴァリエーションは踊っていましたし、ヴァルナ国際バレエ・コンクールで賞をいただいたのもキトリでした。『ドン・キホーテ』は個人的にも大好きな作品で、学生の時はバリシニコフとシンシア・ハーヴェイ、それにKバレエの荒井祐子さんの主演した映像を何度も繰り返し見ていました。音楽も大好きで、CDをひたすら聴きまくっていましたね(笑)。ちなみに、私はキトリの友人役が大好きなんです! ずっと憧れていた役でしたから自分が踊れるようになったときは本当に嬉しかったですし、そのうえキトリまで......。前回は初役で先生たちの注意をこなすことに精一杯でしたが、今回は舞台を楽しんで、お客さまやお世話になった方々への感謝の気持ちをこめて踊りたいと思います。

――キトリというキャラクターについてはどのようにとらえ、役作りをしていますか?

涌田:キトリの性格には共感できるところがたくさん! キトリはツンデレな一面もあるけれど、バジルは勝気な性格も含めてキトリのことが大好きなんです。とても可愛らしいカップルですよね。ガマーシュとのかけあいも笑いに溢れていて、観た誰もがハッピーになれる、前向きなエネルギーに満ちた作品であり、役だと感じます。本当に演じ甲斐のある役です。役作りとしては、今回は特に演技をこだわりたいと思っています。今は前回の映像を見直しながら、どこを改善すべきか頭を悩ませています。
あとはパートナーが二山さんに代わるので、フレッシュな組み合わせもお客さまに楽しんでいただけたら。

――そんな大好きな『ドン・キホーテ』、特におすすめの場面や好きな場面はありますか?

涌田:うーん......たくさんあるからどれか1つに絞るのは無理ですね(笑)。踊る場面に絞って考えると、やはり最後のグラン・パ・ド・ドゥは大きな見どころですが、個人的にはドゥルシネア姫のヴァリエーションが大好きです! 難しいテクニックがたくさんあるのでどの場面も踊るのは大変なんですけれど(笑)。あとは演技面では個性豊かな登場人物がたくさん出てきますので、それぞれのかけあいの妙、カラッとした明るい雰囲気をとにかく楽しんでいただきたいですね。

『ドン・キホーテ』のキトリを踊る涌田美紀
Photo: Shoko Matsuhashi

「キトリもマーシャも難しい役。自分なりに役ごとのイメージを明確にする必要があります」

――そんな『ドン・キホーテ』のあと、約2週間後には『くるみ割り人形』で主役のマーシャも踊ります。この短いスパンで大作の主演を続けて踊るにあたって、どのように気持ちを切り替えていますか?

涌田:『くるみ割り人形』では前回もマーシャのほかにコロンビーヌや中国も踊っていますので、「今日はマーシャ!」「今日は中国!」のように、朝起きて気持ちを切り替える感じでしょうか(笑)。キトリもマーシャも高度なテクニックが必要な難しい役ですし、出番は少ないですが中国も振付の難易度がかなり高いんです。なので、自分なりに役ごとのイメージを明確にする必要があります。
マーシャについて申し上げると、自分の中にある子どもの一面を役に投影させることを意識しています。キトリは強い女性ですが、マーシャは7歳の女の子が物語を通して成長していきます。特に、最後のグラン・パ・ド・ドゥでは本当に美しいレディに成長したマーシャをイメージして踊っています。やはりこの場面では主役がずっとキラキラしていたいなと思っています。マーシャも大好きな役です。

『くるみ割り人形』でマーシャを踊る涌田美紀
Photo: Koujiro Yoshikawa

――最近では〈はじめてのバレエ「白鳥の湖」~母のなみだ~〉で斎藤友佳理(東京バレエ団団長)のアシスタントにも挑戦しました。

涌田:指導者として前から作品やダンサーをみることで、これまで気がつかなかったことがたくさんあり、本当に勉強になりました。今回得たことはとても話しきれないのですが、ひとつ言えるとすれば、もっと高いレベルの表現、ダイナミックな踊りを目指したいという気持ちがより強くなりました。観客目線でも音楽にのせて身体がのびていくようなダンサーは観ていて気持ちが良いと思いますので、私自身もそこまで自分を高めていけたら......と思います。

出番を待つ涌田美紀
(写真:本人提供)

文責:NBS

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東京バレエ団
『ドン・キホーテ』全2幕

公演日 【東京公演】

11/18(火)13:00 *
11/19(水)19:00
11/20(木)19:00
11/21(金)19:00
11/22(土)14:00
11/23(日・祝)14:00
11/24(月・振休)14:00
* 1階に学校団体が入ります。

会場:東京文化会館(上野)

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込] ※東京公演

S=¥15,000 A=¥12,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥2,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

[予定される主な配役]

キトリ:涌田 美紀(11/18)、上野 水香(11/19)、秋山 瑛(11/20,11/23)、伝田 陽美(11/21, 11/24)、中島 映理子(11/22)
バジル:二山 治雄(11/18)、キム・キミン[ゲスト](11/19, 11/21)、池本 祥真(11/20,11/23)、宮川 新大(11/22)、柄本 弾(11/24)