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Photo: Shoko Matsuhashi

NEW2025/11/05(水)Vol.529

足立真里亜が語る『くるみ割り人形』の世界
2025/11/05(水)
2025年11月05日号
バレエ
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東京バレエ団

Photo: Shoko Matsuhashi

足立真里亜が語る『くるみ割り人形』の世界

12月の風物詩『くるみ割り人形』。東京バレエ団では2019年以来、斎藤友佳理改訂振付・演出のヴァージョンを上演しています。今年は豪華5組の主役ペアの競演となりますが、中でも足立真里亜&二山治雄の全幕初共演に注目しているバレエファンも多いのではないでしょうか? マーシャ役で定評のある足立が本作の魅力と公演への想いを語りました。

「くるみ割り人形」は成長を測る指標

――これまでに『ロミオとジュリエット』『かぐや姫』『ジゼル』など、数々の全幕バレエに主演されている足立さんですが、『くるみ割り人形』には最も多く主演されています。足立さんにとって、どのような作品でしょうか?

足立:今年で5回目の出演です。毎年決まった時期に踊らせていただける作品なので、私の中では1年の集大成のような作品ですね。同じ作品を繰り返し踊ることで自身の成長を測る1つの指標になっています。毎年の課題が"もっと子どもらしく"ということ。意外に思われるかもしれませんが、私は踊っている時に醸し出す雰囲気を"姉御肌"と言っていただけることが多く、意識して7歳のマーシャを演じていかなければお客さまに伝わりません。例えば人形をプレゼントされたときのリアクション1つとってもポイントはたくさんあります。大人が思う"子ども"と実際の"子ども"って違うと思うんです。意外といろいろなものを感じとっているのが"子ども"だと思いますので、あまり幼児性を出しすぎないよう、塩梅が難しいところです。

マーシャを演じる足立真理亜
Photo: Koujiro Yoshikawa

――東京バレエ団で上演している斎藤友佳理版では、少女マーシャからグラン・パ・ド・ドゥまで、1人のダンサーが踊り、演じます。この役を演じるうえで意識していることはありますか?

足立:マーシャってお姉さんなんですよ。フリッツという自分より小さな弟、子どもながらに守るべき存在がいる。だからこそくるみ割り王子のピンチにも勇敢に立ち向かっていくアツい一面があるんですけど、一方で女性らしさというのも意識しています。少女から大人の女性になる過程を丁寧に踊りでみせていけたら。場面でいうと、ネズミたちとの戦いのあとはくるみ割り王子を失った喪失感を、雪のパ・ド・ドゥは恋から愛に代わる様子、気持ちのふくらみ、女性になる階段をあがっていく様子を出していけたらと思っています。

――周りのキャラクターとのかけあいの面白さも見どころですね!

足立:ドロッセルマイヤーの存在は大きいです。自分でも気が付かないうちに先導してもらっていたり......人形たちも心強い仲間です。彼らがいるからこそマーシャは自由に動けるし、ずっとそばにいてくれて、ある時は守り、ある時は奮い立たせてくれるとても大切な存在です。

ドロッセルマイヤーとマーシャ
Photo: Koujiro Yoshikawa

女性ダンサーにとっての試金石、金平糖の精の踊り

――終幕の金平糖の精のヴァリエーション(ソロの踊り)は女性にとって最難関の踊りの1つにあげられることもありますが、足立さんはどう感じていらっしゃいますか?

足立:初めて観た時は「なんて過酷な......」と思ったのですが、まさか私も踊ることに(笑)。このヴァリエーションは女性ダンサーの試金石のように言われることもあり、派手な見せ場はないのですがとにかく難しく、綿の上を歩くような柔らかなステップが求められます。クラシックバレエとしての完璧なラインを追求しつつ、ステップのつながりをまるで歌うように滑らかに踊っていくことが重要です。個人的にはパ(バレエの1つ1つの動きのこと)に固執しすぎると良くないと感じていて、音楽も意識しながら、パ・ド・ドゥの最後まで金平糖の精としての輝きをしっかり出していきたいところです。

『くるみ割り人形』より
Photo: Shoko Matsuhashi.

――今年の『くるみ割り人形』で新たに挑戦したいと考えていることはありますか?

足立:実はこの作品に関してはデビューからずっと(大塚)卓くんと一緒に踊ってきたのですが、今回は(二山)治雄くんと踊ります。私は『ロミオとジュリエット』も『ジゼル』も、上演するたびに違うパートナーと組むことが多く、『ロミジュリ』にいたってはなんと4人のロミオと踊っています(笑)。役柄へのアプローチは人によって違いますし、今年はどんな物語が生み出せるのか、私自身もとても楽しみにしています。治雄くんのことですから、きっと愛情深い王子を演じてくれることでしょう!(笑)。ちなみに彼とは音の取り方も近いので、組んでいてとても踊りやすいですね。音の取り方が合う人とは心の波長も合うと思っています。それから今回は大阪(堺公演)でも初主演させていただくことになりました。『くるみ割り人形』は東京だけでなく鹿児島や香川でも踊らせていただいたのですが、大阪での主演は初めて。この嬉しさをぜひ舞台からお客さまに伝えられたらと思っています!

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東京バレエ団
「くるみ割り人形」全2幕

公演日 【東京公演】

12/11(木)19:00
12/12(金)12:30*
12/12(金)18:30
12/13(土)12:30
12/13(土)17:30*
12/14(日)14:00
* 12/12(金)12:30公演、12/13(土)17:30公演は、学校団体が入ります。

会場:東京文化会館(上野)

指揮:フィリップ・エリス 
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
児童合唱:NHK東京児童合唱団

入場料[税込] ※東京公演

S=¥15,000 A=¥12,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥2,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

[予定される主な配役]
【東京公演】
マーシャ:沖 香菜子(12/11, 12/14)、足立 真里亜(12/12昼)、秋山 瑛(12/12)、金子 仁美(12/13昼)、涌田 美紀(12/13)
くるみ割り王子:宮川 新大(12/11, 12/14)、二山 治雄(12/12昼)、大塚 卓(12/12)、池本 祥真(12/13昼)、生方 隆之介(12/13)


【堺公演】

12/24(水)18:30

会場:フェニーチェ堺 大ホール

マーシャ:足立 真里亜
くるみ割り王子:二山 治雄
指揮:井田 勝大
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団

【西宮公演】

12/26(金)17:30

会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

マーシャ:秋山 瑛
くるみ割り王子:大塚 卓
指揮:井田 勝大
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団

【松江公演】

12/28(日)15:00

会場:島根県民会館 大ホール

マーシャ:金子 仁美
くるみ割り王子:池本 祥真
*音楽は特別録音による音源を使用します。