2026年1月、「Zenith」(頂点)を極めたダンサーたちが東京に集結する至高のステージ、〈Zenith of Ballet ー至高の舞ー〉が開催されます。本公演を彩る魅力的な出演者たちの中で、長くマリインスキー・バレエのトップに君臨しているディアナ・ヴィシニョーワの出演に期待している方も多いことでしょう。
今回の公演では故モーリス・ベジャールの大作、『椅子』を披露するヴィシニョーワが、本作を選んだ想い、日本での公演への意気込みを語ってくれました。
( 2025年10月メール・インタビュー)
子供のころベジャール作品のビデオを見ていた時には、まさか自分が踊るなんて夢にも思いませんでした。でもやがて、私のキャリアの中でベジャールさんの名前が何度も登場することになったのです。2004年、ベルリンで『ニーベルングの指環』を踊りました。初めて挑んだこのベジャール作品が、私にとって巨大な道しるべとなりました。ダンサーが舞台で役を生きるとはどういうことなのか、そのための技術、役を学ぶためのさまざまなアプローチを教えてくれたのが、この作品でした。当時、ベジャールさんご自身がリハーサルを指導して下さいました。彼の瞳、お人柄、ものすごいエネルギーを今でもよく覚えています。
その後踊った『バクチ』のパ・ド・ドゥでは、東洋をテーマにした振付にチャレンジしました。そして2013年、ついに本当に特別なことが起こりました。『ボレロ』を踊る許可をいただいたのです。『ボレロ』を踊る光栄にあずかることなど夢にも思いませんでした。マヤ・プリセツカヤに次いで、同作を踊る2人目のロシア人バレリーナとなったのです。
ベジャールさんは亡くなられていましたから、私の先生はジル・ロマンでした。それまでジルとは面識はありましたが、一緒に踊ったことはありませんでした。でも、ジルは私の踊りを見ていてくれて、その知識をもとに私に『ボレロ』を踊らせることを決めて下さったのです。
『ボレロ』をリハーサルする間に、お互いを知ることになり、一緒に踊ろうという思いが湧いてきました。そしてついに東京で、願いが叶えられました。2024年「世界バレエフェスティバル」で、ジルと『ニーベルングの指環』のパ・ド・ドゥを踊りました。それはとても象徴的な出来事となって、ベジャール作品に初めて触れたころの原点に、私を立ち返らせてくれました。その後、ジルが『椅子』を踊ってみないかと提案してくれたのです。そしてこの11月、私が企画している〈Context. Diana Vishneva〉というフェスティバルで『椅子』を初めて一緒に踊りました。12月には私の故郷サンクトペテルブルクでも踊る予定です。
『椅子』を日本のお客さまの前で踊ることが待ちきれません。ベジャール作品の中でも特別な、唯一無二の作品ですから、日本で踊ることが本当に楽しみです。
説明するのはとても難しいのですが、ベジャールさんには、ジャンルの境界というものがありませんでした。つまり相容れないものを同時に扱える人でした。彼の踊りはコントラストにあふれていますよね ―― クラシックとコンテンポラリー、神秘と哲学など。何より、彼は時代の先を行っていました。ベジャールさんが創造したのは舞踊の未来史で、私たちが今まさに体験している通りですね。彼は20世紀のバレエを創ったわけですから、彼の最初のバレエ団*(原文ママ)、20世紀バレエという名前はまさにふさわしかったのです。*モーリス・ベジャールは20世紀バレエ団より以前の1954年にエトワール・バレエ団を設立している。
『椅子』についてお話しますと、これはバレエ劇です。私たちが通常期待するベジャール作品とはだいぶ異なります。心理劇、不条理劇といえるでしょう。哲学的な永遠の問題を扱う劇です。人間とは何か? 現実とは何か? 何のために存在するのか? 現実とは不条理が混じるものですが、そこに隠された様々な意味をさらけ出し、描き出すのに、ダンスは最も適した手段の一つでしょう。このような作品は私にとって初めてですが、経験を積み、プロとしてのスキルを身に着けてきた今、『椅子』を踊れることは私にとってとても意義深いことです。
今シーズンは舞台人生30周年という私にとって特別な節目です。何歳でも踊れる、と思えるようになったのは、それだけ成熟したからかもしれません。成長を続けられるかどうかは、レパートリーにかかっていますね。年齢の問題ではありません。今、舞台に立つと、それがよく分かります。ですので『椅子』のような作品に巡りあえたことは私にとり本当にかけがえのないことです。2024年にソル・レオンとポール・ライトフットが私のために創ってくれた『スレザ(SLEZA)』や、エドワード・クルグの『巨匠とマルガリータ(Master and Margarita)』も舞台で表現すべきドラマ性という点で共通するものがありました。経験を経てようやく表現できるようになるものですね。
ベジャールの『椅子』を日本で踊ることが今回のチャレンジそのものです。演じることが大変難しい作品です。この役を踊ること、そしてこの作品の命を紡ぐことはとても重い責任です。
ダンスは私にとってなくてはならないものになりました。人生そのものです。自分の考えや感情を表現する手段を見つけたということでしょう。ダンスが表現できる感情はとても幅広く、一つの動きが物語まで語れます。ダンスは舞台の上で生きているものですから、私にとって毎回の公演が「今日」のメッセージなのです。
私の運命の中で、日本がどれほど大切であり続けたことか、決して語り尽くせません。キャリアの第一歩を踏み出した時から、日本では沢山の貴重な時間を過ごさせてもらいました。日本で踊るのはいつもの倍、大変なんですよ。お客さまが経験豊かで、バレエという芸術をよくご存じなので。ダンサーたちをこれほど温かく親切に迎えて続けて下さる日本の観客の皆さんに、いつも心から感謝しています。
2026年
1月30日(金) 19:00
1月31日(土) 18:30
2月1日(日) 14:00
会場:Bunkamuraオーチャードホール
S=¥20,000 A=¥17,000 B=¥14,000
C=¥10,000 D=¥7,000
U25シート=¥4,000
*ペア割引[S,A席]あり
*親子割引[S,A席]あり
[予定される出演者]
ウィリアム・ブレイスウェル(英国ロイヤル・バレエ団)
ユーゴ・マルシャン(パリ・オペラ座バレエ団)
永久メイ(マリインスキー・バレエ)
マリアネラ・ヌニェス(英国ロイヤル・バレエ団)
ジル・ロマン
高田 茜(英国ロイヤル・バレエ団)
ディアナ・ヴィシニョーワ(マリインスキー・バレエ)
エドワード・ワトソン
チョン・ミンチョル(マリインスキー・バレエ)
※表記は2025/12/8現在の予定です
*プログラムについてはこちらをご覧ください。