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Photo: Ayumi Yamazaki

NEW2026/01/07(水)Vol.533

東京バレエ団〈レジェンズ・ガラ〉
『春の祭典』上演に向けて~佐野志織インタビュー
2026/01/07(水)
2026年01月07日号
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東京バレエ団

Photo: Ayumi Yamazaki

東京バレエ団〈レジェンズ・ガラ〉
『春の祭典』上演に向けて~佐野志織インタビュー

2026年2月に開催する東京バレエ団〈レジェンズ・ガラ〉はベジャール、ノイマイヤー、キリアンという現代バレエの巨匠による名作を一気に観られるという観客にとって非常に贅沢な機会となります。
中でもベジャールの代表作『春の祭典』は国内では7年ぶりの上演ということもあり、心待ちにしているファンの方も多いのではないでしょうか?
本作の指導を行う佐野志織(東京バレエ団芸術監督)が初演時の思い出、そしてキャスティングについて語ってくれました。

クラシックとは違う意味で衝撃を受けた『春の祭典』

2026年2月開催の東京バレエ団〈レジェンズ・ガラ〉で、日本国内では久々となるベジャール不朽の名作『春の祭典』が上演される。現芸術監督の佐野志織は、東京バレエ団での初演時(1993年)からこの作品に携わり、現在は指導者としてベジャールの世界観をダンサーに継承している。
「東京バレエ団での初演では4人の若い娘を踊り、再演のときには本番では踊らなかったのですが生贄のパートを勉強させていただきました。最初はパートごとに分かれて振り移しをし、合同でのリハーサルで男性パートを見ることができましたが、男性は複雑な動きが多く、フォーメーションも次から次へと変わるので大変だと思って見ていました。女性も腰を上げる動きなどバレエでは普通やらない動きをやりますし、クラシックとは違う意味で刺激を受けたのを覚えています」

『春の祭典』のオリジナルの初演は1959年に遡る。当時32歳のベジャールは、ストラヴィンスキーの前衛的なバレエ音楽に振付することに大きな使命を感じていたが、決定的なインスピレーションとなったのは、映像で視た荒々しい鹿の交尾だったという。
「踊る前に『春の祭典』を初めて観たときは、結構ショックでした。全身総タイツですし、すごく動物的なものを感じたので、自分たちが踊るとき、自分たちの身体を通すとどうなるのか戸惑いました。ベジャールさんの作品の中でも原始的というか、性の部分......男女の"性"もそうですし"生きる"という意味での"生"の息吹みたいなものを、実際にやってみたら強く感じたのです。クラシック・バレエは、きちんとした装いでやることが多いので、『春の祭典』では装飾の全くないタイツで踊る全部自分をさらけ出すことになります。女性パートは比較的、音楽のカウントを取りやすいのですが、それでもカウントの間の抑揚のようなニュアンスをとらなければならなかったり、シンプルな動きではあるけれど、深さを感じましたね」

『春の祭典』(東京バレエ団2024年イタリア、バーリ公演より)
Photo: Clarissa Lapolla

活気づいていくバレエ団

佐野志織芸術監督が東京バレエ団に入団したのは1984年。92年にプリンシパルに昇格。80年代から90年代にかけて『ザ・カブキ』(86年)『舞楽』(89年)『M』(93年)など燦然たる名作をベジャールとともに作り上げていた世代だ。
「私たちの年代は、クラシックだけでなく新しいエネルギッシュなものを踊るチャンスに恵まれていました。ベジャールさんに惚れ込んだ佐々木忠次さん(当時の東京バレエ団代表)が、"ぜひ"ということで東京バレエ団のための作品を依頼し、ベジャールさんも歌舞伎などを通して得たインスピレーションをバレエ団に与えてくれました。ベジャールさんはどんどんダンサーを信頼してくださるようになり、当時の芸術監督であった溝下(司朗)先生への信頼も大きかったと思います。高岸直樹さん、首藤康之さん、木村和夫さんといった勢いのあるダンサーがプリンシパルとして踊っていた時代でもあった。それと呼応して、バレエ団がどんどん活気づいて、その中にいることを実感していました」
2024年には『ザ・カブキ』、翌25年には『M』が再演され、現在の東京バレエ団のダンサー全員が初演の衝撃を鮮烈に再現する演技を披露した。ベジャールがともに作品を作り上げていた当時のダンサーと、現在のダンサーの違いはあるのだろうか?
「私たちの世代は色々な意味で情報もそんなになかったですし。情報に飢えていた部分があって、新しいもの、知らないものをやるときには。ゼロから取り組む感じが強かったですね。指導者の言葉を一語でも聞き漏らすまいというのと、自分たちがどういうふうに動けば、さらにどう教えてもらえるか、という貪欲さがありました。今のダンサーは情報がある分、最初の予備知識はすごく高くて、その点ではリハーサルが始まる前に準備はできているので、そこは素晴らしいと思います。ビジュアルも優れ、身体的な能力も高いダンサーも多いです。その分それにプラスして、精神的な部分での深さ、というものをより追求していかないと、作品として軽くなってしまう。リハーサルではそうした部分を大切にしていますし、彼らも踊りに深さを求めることに関しては、昔のダンサーと同じ貪欲さがあると思います」

Photo: Ayumi Yamazaki

キャスティングへの想い

『春の祭典』の生贄役は、ヨーロッパ公演でも高い評価を得た伝田陽美・樋口祐輝、長谷川琴音・南江祐生がダブルキャストで演じる。
「昨年のイタリア公演の前にジル(・ロマン)さんに指導をお願いしたとき、ジルさんいわく『初演のときのニュアンスに戻したい』ということをすごく仰っていて。女性の生贄の方が強く、男性が弱いというのはそもそもあるんですけれど、女性はただ強いだけじゃなくて、柔らかさがあったり"ただ強くやらないで"ということを強く仰っていて。長谷川琴音は若々しくて、内面の強さはあるけれど柔らかい部分もあるし、(伝田)陽美は陽美で、今まで強いイメージでやってきたけれど、その中で女性として成熟してきている部分もあって、改めて新たな面が出てくるような指導をジルさんがしてくださったので、それを東京でお見せできるのが楽しみです」

『春の祭典』(東京バレエ団2024年イタリア、バーリ公演より)
Photo: Clarissa Lapolla

2025年11月の『ドン・キホーテ』。それに続いた12月の『くるみ割り人形』では、多彩なペアが華麗な演技で競い合った。現在のダンサーたちの高い実力は、芸術監督としてどう評価しているのだろうか。
「斎藤友佳理団長がずっとダンサーを育ててきたことが結実して、現在のダンサーはとても充実していて、プリンシパルも全員それぞれの個性があります。色々なものを引き継いで、取りこんできているダンサーに私自身も期待しているんです。私や斎藤がダンサーとして活動していた時代には、新しいものを振付家とともにクリエイションするという時間がすごくたくさんあって、今のダンサーたちにもそれを経験させたいし、金森穣さん振付の『かぐや姫』の新制作などが成長の一助になっていると思います。海外から指導者がいらしたときの内容もきちんと整理し、維持しておくことが大事ですし......」

一冊のノートを見せていただくと、そこには『春の祭典』のフォーメーションや注意書き、振付の略図が鉛筆で細かく細かく書き込まれている。どの作品に関しても、自身が子細に記録したこのような貴重なノートがあるのだという。
「東京バレエ団は良くも悪くもアンサンブルが綺麗に揃うので、『春の祭典』に限っては、ただ綺麗に揃うのではなく、一人ひとりに力強さやエネルギーや、女性だったら女性らしさを表現して欲しいと思っています。植物や動物も個々のDNAが違うと個性も違う。一人として同じ人はいない。コロナ以降、特に綺麗な中で過ごすということが当たり前になってきていますが。土の中から芽生えてくるような、ベジャールさんが根本的に感じていた命の息吹というものを、ダンサー一人ひとりが力強く踊ってくれることを期待しています」

取材・文:小田島久恵(フリーライター)

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東京バレエ団〈レジェンズ・ガラ〉
ベジャール『春の祭典』
ノイマイヤー『月に寄せる七つの俳句』
キリアン『小さな死』

公演日

2026年
2月27日(金) 19:00
2月28日(土) 14:00
3月1日(日) 14:00

会場:東京文化会館(上野)

※配役については下記をご覧ください。
https://thetokyoballet.com/performance/tbgala2026/

入場料[税込]

S=¥15,000 A=¥12,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥2,000 U39シート=¥4,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり