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Photo: Silvia Lelli

2026/02/04(水)Vol.535

リッカルド・ムーティ指揮 オペラ『ドン・ジョヴァンニ』
演出家キアラ・ムーティの視点
2026/02/04(水)
2026年02月04日号
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オペラ

Photo: Silvia Lelli

リッカルド・ムーティ指揮 オペラ『ドン・ジョヴァンニ』
演出家キアラ・ムーティの視点

リッカルド・ムーティが日本で舞台つきのオペラを振るのは2016年以来のこととなるため、ムーティ・ファン、そしてオペラ・ファンの期待が高まるのは当然のこと。素晴らしい演奏をムーティが担うことはもとよりですが、マエストロは演出にも厳しい目をもつことで知られています。今回の演出家キアラ・ムーティについて「彼女は敬愛する演出家ジョルジョ・ストレーレルのもとで学んだし、自分の娘として幼いころから私の音楽の世界のなかで育ってきた。新しい『ドン・ジョヴァンニ』をつくるという話があったとき、彼女はぴったりだと考えた」と語っています。 ここでは、キアラ・ムーティの演出について、いくつかの特徴的なポイントをご紹介してみます。

モーツァルトとダ・ポンテが生んだ"原点"を見つめるために

キアラ・ムーティ(以下キアラ)は、女優、作家、そして演出家でもあります。演出家としてははじめに演劇、後にオペラを手がけるようになりました。こうした彼女の経験は、オペラを演出するにあたって、大きな影響をもたらしているといえるでしょう。
モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』の台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテは、オペラ化のためにいくつかの"ドン・ファン伝説"を参考にしたと伝えられていますが、キアラもまた、演出にあたって、西洋文学や演劇に残された"ドン・ファン伝説"から、インスピレーションを得ています。そこには、ダ・ポンテが用いたモリエールの戯曲『ドン・ジュアン、またの名を石像の宴』だけでなく、19世紀フランスの劇作家エドモン・ロスタンの『ドン・ジュアン 最後の夜』や、フランスのロマン主義の作家アルフレッド・ド・ミュッセの詩、オーストリアの詩人ライナー・マリア・リルケの詩など。モーツァルトとダ・ポンテが生み出したもの、そこに込められた"原点"を深く見つめようとする姿勢は、やはり父親ゆずりなのだと感じられるところ。

キアラの演出ノートから、目に見えるポイントとともにいくつかの視点をご紹介してみます。

登場人物はマリオネット
キアラ演出の『ドン・ジョヴァンニ』では、ドン・ジョヴァンニ以外の主要な6人の登場人物は最初に登場する際には全身アンダーウェア姿です。頭上から降ろされる衣裳を、舞台上で身につけます。"この6人は、惑星を探す衛星のように軌道を描いて惑星の周りをめぐる。その惑星こそがドン・ジョヴァンニなのである"とキアラ。では惑星を失った後、彼らはどうなるのか......。ドン・ジョヴァンニが地獄へと引き込まれた後、フィナーレでの6人は再び登場したときの姿に戻り、衣裳は天へと引き上げられます。彼ら6人は、マリオネットのように人形使いに操られて誕生し、役を演じ、舞台をさまようという図式なのです。

第1幕レポレッロは衣裳を着ながら見張り役を嘆く
Photo: Teatro Regio Torino
第2幕フィナーレ 6人の衣裳は天へと吊り上げられていく
Photo: Andrea Macchia / Teatro Regio Torino

カタログの歌をリアルで
『ドン・ジョヴァンニ』のなかの聴きものの一つにレポレッロがドンナ・エルヴィーラに、主人のドン・ジョヴァンニのこれまでの所業を伝えようと歌う「カタログの歌」があります。キアラの演出では、12人の女性が舞台に現れます。彼女たちは金髪、黒髪、色白、肥満、痩身、厳しい女、愛嬌ある女、年増、若い乙女、金持ち、醜い女、美人......"このリアルの女性たちはドン・ジョヴァンニの後悔の影を表している"とキアラ。ドン・ジョヴァンニが安らぐことなく悩みながら求め続けているのは、彼女たちが自分に愛を注ぐことではないのだと。

第1幕「カタログの歌」の場面には12人の女性が現れる
Photo: Andrea Macchia / Teatro Regio Torino

仮面の3人
ドン・ジョヴァンニがツェルリーナを狙って館で開くパーティーに、ドンナ・アンナとドン・オッターヴィオ、ドンナ・エルヴィーラの3人は仮面をつけて加わります。演出によっては顔の上部だけといった場合もありますが、キアラの演出では、この3人の仮面は顔全体に。"世の罪を償うための蝋の涙が貼りついたような"仮面なのだそうです。

第1幕ドン・ジョヴァンニの悪事を暴こうとやってきた3人
Photo: Teatro Regio Torino

ここでは、目で見ることができる場面を部分的に紹介しています。演出家の作品に対するの意図は全体を通して捉えていただくことが必要です。公演をより楽しむ一助に。

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W.A.モーツァルト作曲
オペラ『ドン・ジョヴァンニ』

公演日

2026年
4月26日(日) 14:00 東京文化会館
4月29日(水・祝) 14:00  東京文化会館
5月1日(金) 14:00 東京文化会館

指揮:リッカルド・ムーティ
演出:キアラ・ムーティ

[予定される主な出演者]
ドン・ジョヴァンニ:ルカ・ミケレッティ
ドンナ・アンナ:マリア・グラツィア・スキアーヴォ
ドンナ・エルヴィーラ:マリアンジェラ・シチリア
ドン・オッターヴィオ:ジョヴァンニ・サラ
レポレッロ:アレッサンドロ・ルオンゴ
ツェルリーナ:フランチェスカ・ディ・サウロ
マゼット:レオン・コーシャヴィッチ
騎士長:ヴィットリオ・デ・カンポ

管弦楽:東京春祭オーケストラ
合唱:東京オペラシンガーズ

入場料[税込]

S=¥59,000 A=¥46,000 B=¥36,000
C=¥28,000 D=¥21,000 E=¥15,000
サポーターシート=¥109,000(寄付金付きのS席)
U39シート=¥13,000 U29シート=¥10,000 

主催:公益財団法人日本舞台芸術振興会 / 東京・春・音楽祭実行委員会 / 日本経済新聞社