再演まで残すところ1カ月となった東京バレエ団の『かぐや姫』。かぐや姫役の秋山瑛と道児役の大塚卓にフリーライターの小田島久恵さんがインタビュー!
来る5月に3年ぶりの再演が行われる東京バレエ団の『かぐや姫』(金森穣振付)。ヒロインのかぐや姫は初演で高い評価を得たプリンシパルの秋山瑛が演じ、かぐや姫の初恋の相手である村の青年・道児役には大塚卓(ファースト・ソリスト)がキャスティングされている。大塚は初演では「帝(みかど)」役を演じていたが、今回の再演では正反対のキャラクターを演じることになる。クランコ版『ロミオとジュリエット』、斎藤友佳理版『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』でもペアを組み、好調なパートナーシップを見せている秋山&大塚。〈レジェンズ・ガラ〉でキリアンの『小さな死』を踊り終えたばかりの舞台裏で、フレンドリーな雰囲気の中、『かぐや姫』再演への抱負と初演のエピソード等を語っていただいた。
――(『春の祭典』の音楽が聴こえてくる中)踊り終えたばかりのところ、楽屋まで押し寄せてすみません。『小さな死』でもペアを組まれていましたが、息ぴったりでした。
秋山:ありがとうございます。楽しんでいただけましたか?
――はい。何度見てもとても美しいバレエです。5月の『かぐや姫』の再演でペアを組まれる秋山さんと大塚さんですが、初演当時のことも含めていろいろお聞きしたいです。金森穣さんの振付は2021年から2024年までかけて創作、完成した東京バレエ団のオリジナル作品です。金森さんがすべて振付を準備してリハーサルに臨んだのでしょうか? ダンサーと一緒に創っていったところもありましたか?
秋山:(金森)穣さんが創ってくださったところと、ダンサーと一緒に振付を創ったところがありました。(柄本)弾さんと一緒に振付を踊っていて「もっと高くリフトできる?」「こういうのをやりたいんだけどバレエのリフトはどんなのがあるの?」と聞いてくださって、トライしながら創っていったんです。
――2021年のプロローグ〜第1幕でのかぐや姫はとても無邪気でやんちゃなイメージでした。2024年の全幕初演のときには、バレエの中で成長していくかぐや姫の変化が見事だと思ったのですが、秋山さんの中ではヒロインはどのように育っていったのでしょう?
秋山:最初の第1幕を創っていたときは私たちもここからどういう方向に行くのか分からなかったので、最初はお転婆な女の子でしたが、そこから第2幕が創られて、最後に第3幕が創られて...... 作品と一緒にかぐや姫のキャラクターを生きてきた感じです。でも正直まだ、つかめていないところもあり、探し中なので、穣さんとのお稽古で突き詰めていきたいと思っています。
――大塚さんは初演では帝役でした。道児の役作りはどのようなプランがありますか?
大塚:今、(柄本)弾さんに教えていただいているところで...... 役作りに関してはダブルキャストとなる弾さんの側では(笑)言いづらいですね(バックステージのドレッサーでは柄本さんがメイクを落とし中。意味深に微笑む柄本さん)。弾さんに習って、見せられる形になったかは分からないんですけど、明後日、金森さんに見ていただいて、アドバイスを待ちます。まだ役に対してプランは考えていないんです。踊りを身体の中に入れて、そこから掘り下げていきます。
――ここのところ秋山さんと大塚さんのペアは本当に素晴らしいことになっていて...... 見ていて特別なケミストリーがあるよう思います。
大塚:色々な方と組むので、その人その人との関係が舞台には出ると思います。瑛さんと踊るときは、舞台の上で実際に起こるそのときの感情を大事にできるんです。練習で「こういうふうに、ああいうふうに」っていう約束事はあるんですが、それを考えすぎるんじゃなくて、舞台に立って初めて感じることを、呼吸とかタイミングとか表情とかに表していける。それができるダンサーです。
秋山:卓くんはめちゃくちゃ音に敏感だよね。
大塚:そうだね。
秋山:『小さな死』も一緒に踊っていたけど、音の感じ方が卓くんと一緒なので、卓くんについていけば間違いないんです。音楽の聴き方は結構大きな要素なんじゃないかな。
――なるほど。それで息がぴったりなのか。大塚さんはベジャール作品の中でも難しい『中国の不思議な役人』の役人を踊られたり、『M』では聖セバスチャンを踊られていました。
大塚:『中国の不思議な役人』は入団2年目で、プレッシャーを感じる間もなく無我夢中でした。『M』の聖セバスチャンは、ベジャール作品にたくさん触れた後でなければできなかったと思うし、今ならもっと上手くできるかもしれません。
秋山:卓くんは情熱の塊、パッション・ダンサーです。魂捧げてます。
――大塚さんから見た秋山さんはどういうダンサーですか?
大塚:先輩ですし、プリンシパルですし...... でもお高く止まっているところは全然なくて、対等なダンサーとして見てくれて、僕の要望もいったん受け止めてレスポンスを返してくれるんです。
――二人でディスカッションをすることは多いのですか?
秋山:ディスカッションはたくさんしますね。テクニックじゃない部分や、役柄同士の関係性について、知らなくてもいいんだけど知っておきたいなということを、詰めすぎてもいけないけどすり合わせておきたいんです。卓くんはその探求に付き合ってくれるし、もっとよくするためにはどうしたらいいか、一緒に楽しく考えてくれます。
――ある意味似た者同士なんですかね。二人が「月の光」に合わせて踊るシーンが好きなんです。
秋山:『月の光』はいい曲ですよね。『かぐや姫』月間に入ると、女性ダンサーみんなで月の話をするんです。昨日の月の形はああだったよねとか。ムーミンの「月の満ち欠けカレンダー」という小さなカレンダーをロッカーに貼っていて、これを見ると365日の月の形が分かるんですよ。
取材の翌日(3/3)は日本で皆既月食が観測できる日で、そのことを知っていた大塚さんと秋山さんはしばし月の話で盛り上がる。皆既月食は悪天候で見られなかったが、ダンサーが月を親しく感じているということを知ることが出来た貴重な対話だった。
取材・文:小田島久恵(フリーライター)
衣裳協力:秋山瑛 MAX&Co. 大塚卓 HARE / アダストリア
ジュエリー協力:秋山瑛 シンティランテ
5月5日(火・祝) 13:00
5月5日(火・祝) 18:30 *
5月6日(水・休) 14:00
会場:東京文化会館(上野)
*音楽は特別録音の音源を使用します。
S=¥16,000 A=¥13,000 B=¥10,000
C=¥8,000 D=¥6,000 E=¥4,000
U25シート=¥3,000
U39シート= ¥4,000
*ペア割引[S,A,B席]あり
*ホリデイファミリーシートあり
[予定される主な配役]
かぐや姫:秋山 瑛(5/5昼、5/6)、足立 真里亜(5/5)
道児:大塚 卓(5/5昼、5/6)、 柄本 弾(5/5)
影姫:沖 香菜子(5/5昼、5/6)、 金子 仁美(5/5)
帝:池本 祥真(5/5昼、5/6)、 生方 隆之介(5/5)
翁:岡崎 隼也