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NEW2026/04/15(水)Vol.540

東京バレエ団第37次&38次海外公演
記者会見レポート
2026/04/15(水)
2026年04月15日号
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東京バレエ団第37次&38次海外公演
記者会見レポート

4月9日に行われた東京バレエ団海外公演開催についての記者会見レポートをお届けします。

メイド・イン・ジャパンのバレエ『かぐや姫』を海外へ

春らしい陽気の4月9日、東京バレエ団の第37次・第38次海外公演についての記者会見が開催されました。今回の海外公演の目玉となるのは、金森穣による演出振付の『かぐや姫』。5月5日・6日東京文化会館でも再演される本作が、イタリア(第37次)とフランス(第38次)で上演されることが決まり、記者会見には多くのメディアが集まりました。
登壇したのは、演出振付の金森穣、東京バレエ団団長の斎藤友佳理、プリンシパルの秋山瑛、ファーストソリストの大塚卓、そして日本舞台芸術振興会専務理事の髙橋典夫です。

髙橋:今年12月(第37次)にイタリアで、来年5月(第38次)にフランスのパリ・オペラ座で、『かぐや姫』を上演する※1ことになりました。イタリア公演の初日は、東京バレエ団の海外公演800回目に当たります。この規模のバレエ団でこれだけ海外公演を行っているのは類を見ないかと思いますし、我々が主催したことは一度もなく、劇場や現地のプロモーターに招聘されて公演を行ってきました。それも、今回のように文化庁からの助成※2などがあってこそです。
東京バレエ団創立者の佐々木忠次は、海外公演のたびに現地の方から「日本人振付家の作品はないのか」と聞かれてきました。それまでベジャールさんやノイマイヤーさんによる、日本をテーマにした作品はありましたが、日本人の振付家とスタッフによる"メイド・イン・ジャパン"の作品は『かぐや姫』が初めてです。我々もこれを佐々木から引き継いだ夢のように思ってきましたので、今回の海外公演で『かぐや姫』を上演できるのは感慨ひとしおです。
我々は過去3回、パリ・オペラ座に呼んでいただいていますが、世界最高峰であるパリ・オペラ座が、シーズン中に外からバレエ団を呼ぶのはめったにないことです。マルティネス芸術監督やネーフ総裁には『かぐや姫』の映像を見せてアピールしてまいりましたので、今回全幕を上演できることは、日本のバレエ団にとってもひとつの金字塔となると自負しています。
※1:イタリア公演では第1幕のみ、フランス公演は全幕
※2:『かぐや姫』は、文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業)の助成がついている

金森 穣
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金森:日本にロシアからエリアナ・パブロワが来て、鎌倉に教室を開いたのが100年くらい前のことです。100年かけて、日本人は外来の文化であったバレエを、自らの文化にするために研鑽を積んできて、今では世界中で日本人ダンサーが活躍していますが、何かが足りない。それは振付家だったと思います。今回、縁あって私が日本発のオリジナルバレエを振付する機会を得ましたが、遅かれ早かれ、誰かがやるべきことでした。
私は2004年に日本初となる公立劇場専属舞踊団を立ち上げましたが、これもいずれ誰かがやるべきことであったと思います。ただ私はその機会を得た者として、その使命に報いようと闘い続けてきた。そしてその過程で磨かれた振付能力を持って、東京バレエ団と共に創った日本発のオリジナルバレエを欧州の方々に見ていただけることを、とても嬉しく思います。来年の公演までの一年が待ちきれない心境です。これからは借り物ではない、日本の舞台芸術としてバレエを発信していく時代が来る。今回の公演が、その一助となれば幸いです。
私が東京バレエ団から委嘱を受けた時に、まず掲げたテーマは「新しいバレエを創る」ことでした。バレエには長い歴史があり、磨かれてきた型があります。そこには身体技法としての型だけではなく、作品構造としての型もあります。そのクラシカルな身体技法及び作品構造を踏襲した上で、新しいバレエを創ることを創作のテーマに掲げました。そうして生まれた『かぐや姫』をパリ・オペラ座に持っていく前に、来月の東京文化会館での再演で、皆とさらなる高みを目指し、よりより作品にしていきたいです。

東京バレエ団団長 斎藤 友佳理
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斎藤:私が東京バレエ団の芸術監督に就任した2年後の2017年、穣さんと初めて出会って新制作創作の相談をしました。私も海外に行くたび「日本人振付家の作品はないのか」と聞かれていたので、実現させたい大きな夢でした。
初演※3が2021年なので、長い時間がかかっています。まず日本最古の物語である『かぐや姫』を題材にすることが決まり、次にドビュッシーの楽曲を使いたいと穣さんに言われたときから、私のなかで「いつかこの作品をフランス、できればパリ・オペラ座で上演したい」と願ってきました。ガルニエ宮が改修工事に入ってしまう矢先にオペラ座から招待を受けられたのは、これまでNBSがオペラ座と築いてきた信頼関係があったからこそです。この機会は東京バレエ団にとっても、ダンサーにとっても、そして日本のバレエ界にとっても大きな意味があると思います。
※3:2021年の初演は第1幕のみ

秋山 瑛
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秋山:穣さんが新作を創ることになり、トライアウトをしてから、2017年に第1幕、そのあとに第2幕を上演してから、全幕が完成して、今度はイタリア、そしてパリ・オペラ座へ......と、ずっと夢の中にいるようです。私をはじめ、バレエをやっている人にとってオペラ座は憧れの舞台。そこで穣さんの作品、廣川(玉枝)さんのお衣裳で踊れることは光栄ですし、幸せなことだと思っています。
海外公演に参加するたび、言葉のないバレエの素晴らしさを感じます。直接話せなくても、拍手があったり、笑いが起きたり、ざわめきが起きたりと、心の交流を持つことができるので、どこで踊ってもお客さまのバレエへの愛を感じています。今回も楽しみです。

大塚 卓
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大塚:僕は今回が主役(道児役)としてデビューするので、パリ・オペラ座で上演するところまで話が広がったことにプレッシャーも感じています。『かぐや姫』の制作を始めた2017年は、僕はまだ海外にいて東京バレエ団に入団していませんでした。それだけ長い時間をかけて進んでいった作品だと知り、改めて生半可な気持ちでは臨めないと感じています。まずは今年の5月、東京文化会館でしっかり瑛さんと新たな『かぐや姫』を演じたいです。

最後に金森からは「日本の新しいバレエを西欧に見せるんだという想いがあり、これはある種のルネッサンスだと感じています」との力強いメッセージがあり、海外公演への期待がより高まったところで記者会見が終了しました。
世界に羽ばたいていく『かぐや姫』に期待が高まります。

取材・文=富永明子(編集者・ライター)

東京バレエ団 第37次海外公演概要

● 期間:2026年12月
● 公演回数:調整中
● 訪問国:イタリア
● 上演予定作品:『かぐや姫』第1幕、他作品併演
※第37次海外公演(イタリア)につきましては、劇場のシーズン・ラインナップ情報解禁前のため、詳細は5月初旬の発表となります。

東京バレエ団 第38次海外公演概要

● 期間:2027年5月26日(水)~5月29日(土)
● 公演回数:5公演 *2026年3月24日時点
● 訪問都市:パリ(会場:パリ・オペラ座ガルニエ宮) 他都市公演調整中
● 上演予定作品:『かぐや姫』全3幕―プロローグ付きー (演出・振付・空間デザイン:金森穣)
 ※本公演についてパリ・オペラ座からも正式なリリースが発表されています
 https://www.operadeparis.fr/en/season-26-27/ballet/kaguyahime