地中海を舞台に、海賊たちの首領コンラッドと美女メドーラの愛と冒険を描いたグランド・バレエ『海賊』。
見応えのある踊りの見せ場が続く圧巻の舞台は、高い評価を得ています。今回の公演でともにメドーラに初役で挑む伝田陽美と中島映理子が、作品への思いを語ります。
――東京バレエ団では2019年よりロシアのセルゲイエフ版を基にしたアンナ=マリー・ホームズ版の『海賊』を上演、今回で3回目となります。
伝田陽美:2019年の初演の時は、アンナさんが来日されてしっかり指導を受けました。2021年の再演の時はコロナ禍でリモートでのリハーサルだったのですが。
中島映理子:私は2021年に初めて出演して今回が2回目ですが、アンナさんの『海賊』は、演劇的というより"バレエで魅せる"作品ですね。
伝田:マイムが少なくて、とにかく踊っている印象です。特に男性の見せ場は盛り上がりますね。回る、跳ぶなどはじける感じが最高です! 音楽も楽しいですね。私は洞窟の場面のパ・ド・ドゥの音楽がとても好き。
中島:実は『ジゼル』と同じ作曲家なのですよね。『海賊』は、のりやすくて、観ている方も楽しいし、私たちも踊りやすいダイナミックな音楽です。
伝田:パシャが出てくるところの曲も可愛い感じでいいですよね。ストーリーもシンプルでわかりやすいですが、最後、みんなが死んでしまってコンラッドとメドーラだけが生き残るでしょう?
中島:そこは、なんかすみません、という気持ち(笑)。
伝田:自分の中では、実はみんなも生きていて後で合流した、と考えるのもありかなと思っています。二人で生き残って幕になりますが、その後に、実はみんなを探しに行こう!という続きがある、と。
中島:皆さんの想像にお任せしたいですね。
――古典バレエに登場する王子は、時に白鳥と黒鳥を間違えてしまったり、時に村娘を愛しながら実は婚約者がいたり、エレガントではありながら少し頼りない一面もあります。そんな中で『海賊』に登場する男性たちは、コンラッドをはじめ、女性を守るために力強く戦う、昔ながらの男らしさがある役柄です。
伝田:ヒーロー気質が強いですよね。だけど、すぐ恋に落ちすぎじゃない?
中島:(笑)。
伝田:一人の人を愛している点には好感持てますが、恋に一途すぎて、男の友情を壊してまでのめり込むのはどうなのか。
中島:それで大丈夫なのかな?とは思いますね。
伝田:(コンラッドの手下の)ビルバントの気持ちもわからなくもないですよね。ランケデムも腹の中を見せないようで、ちゃんと商売しているし、どのキャラクターも面白いです。
中島:アリも結構、忠実で。
伝田:私は今回、初めてメドーラをやらせていただくのですが、自分のキャラではないのでは?という悩みがあるんです。東京バレエ団で歴代メドーラを踊ってきた方々って"かわいい系"なので。それに寄せていくのか、自分なりの......例えばエスメラルダのような芯の強い女性として踊っていくのか。リハーサルの中で方向性が見えてくるかもしれません。
中島:大人っぽいメドーラも陽美さんっぽくて見てみたいです。
伝田:前回『ドン・キホーテ』のキトリを踊らせていただいて、そこでまた新たな扉が開けたような気がするので、苦手意識をなくして取り組んでいきたいなとは思っています。
中島:私は前回の公演ではアンダー(キャストが出演できなくなった時のための待機要員)として舞台上のメドーラを見ていたのですが、本当にテクニックが要求される役。正直、自分には苦手そうな振付もあります。跳んだり回ったりが多いからこそ、他の部分がおろそかにならないようにというのは意識したいところですね。先ほどもお話に出ましたが、演技というよりもバレエの部分が多い作品なので、基礎的なところを磨きたいなと思っています。
伝田:それから大事なこと! 東京文化会館が改修に入るので、今回の『海賊』は、新国立劇場での公演です!!
中島:私はまだ新国立劇場の舞台で踊ったことがなくて。どんな空間で、舞台から見える客席がどういう景色なのか楽しみです。いつも家族が観に来る時に劇場の近くでご飯を食べているみたいで、初台周辺やオペラシティにどんなお店があるのか下調べをはじめているそうです。
伝田:私は『ザ・カブキ』で出演しましたし中劇場に出たこともありますが、楽屋とか舞台裏の設備は明るくて綺麗ですね。写真映えするスポットもありますよ。
――5日間の公演では東京バレエ団のダンサーたちがコンラッド、メドーラをはじめ登場人物たちの魅力的なキャラクターを日替わりでつとめます。
伝田:特に中島・生方(隆之介)チームはフレッシュで、絶対に観ていただきたいです。
中島:初役だらけですからね。一方で陽美さんチームは?
伝田:コンラッドが"安心安全の柄本弾"ですからね。
中島:陽美さんと弾さんのペアは2公演ありますが、アリ役は(生方)隆之介くんと(池本)祥真さんで変わるので、それによって陽美さんのメドーラも変化するかもしれないですね。
伝田:二人とも安心安全!で信頼しているので、あとは自分のことだけを考えて踊ります(笑)。
中島:『海賊』のメドーラは第1幕から踊る場面が多くて、第2幕の最初にグラン・パ・ド・トロワがあるので、体力配分はちょっと大変です。
伝田:パワーの加減は難しいですね。私はいつもやりすぎ、って言われてしまうので。
中島:グラン・パ・ド・トロワの後も洞窟、第3幕の花園と出演場面が続くので、気力体力をキープしないと。
伝田:花園の場面って華やかに見えますが、実はすごくしんどいのです。
中島:まず花輪が重いですよね。ずっと持っていると腱鞘炎になりそう。メドーラは花しか持たないので今回は乗り切れると良いのですが。
伝田:ミラノ・スカラ座の工房で製作された衣裳や装置も豪華です。私は第1幕のセパレートの衣裳がお気に入り。でも第2幕後半はずーっとファッションショーをしている感じです。パシャの家に着いてから花園までは、めちゃくちゃ早替えが続くので。
中島:第1幕のパシャの妻たちって、全員違う衣裳なんです。私は前回出ていたのですが、色とりどりだし、形も色々で出演者みんなで比べ合っていました。そんなところもお見逃しなく。
伝田:セットも鳥小屋の細部まで面白いので、隅々までチェックしていただきたいです。
中島:剣や銃での闘いの場面もあるので、男の子が観ても楽しいかもしれません。
伝田:8月26日と30日は18歳以下無料招待席があるんです。小さい子たち......男の子にもたくさん来ていただいて、バレエ男子が増えるといいな。もちろん大人の皆さんにも、音楽、人々、テクニック、衣裳や舞台装置まで見どころがいっぱいですので、難しいことは考えずに、気軽に楽しんでいただけたらと思います。
中島:毎日素晴らしいダンサーたちが活躍しますので、全キャストの公演を観てほしいです! あと、会場は上野ではなく初台です! どうぞ間違えずにいらしてください(笑)。
★お互いの印象は?
伝田陽美:映理子は存在しているだけでいい。このスタイル、このお顔! あと足の甲がずるいんです。
中島映理子:陽美さんは何でもできる人。強靭な体にも憧れます。陽美さんの体になりたいです。
★海賊船を手に入れたら、どこに行きたいですか?
伝田陽美:バレエ団のみんなとツアーに行く。素敵な海でちょっと観光して、時々踊って。友人が豪華客船で1カ月くらい舞台付きのクルーズツアーの仕事をしたことがあって、ちょっと面白そうだなと思っています。
中島映理子:海が綺麗なところに行きたいですね。ヨーロッパは行ったことがあるので南米とか? なかなか行く機会がない国で冒険してみたいですね。『海賊』の物語はトルコに向かっている設定ですが、トルコも行ったことがないので気になります。
取材・文:清水井朋子(ライター)
8月26日(水) 19:00
8月27日(木) 19:00
8月28日(金) 19:00
8月29日(土) 14:00
8月30日(日) 13:00
会場:新国立劇場 オペラパレス(初台)
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
S=¥18,000 A=¥14,000 B=¥11,000
C=¥8,000 D=¥6,000
U25シート=¥3,000
*ペア割引[S,A席]あり
*親子割引[S,A席]あり
[予定される主な配役]
メドーラ:伝田 陽美(8/26、8/28)、秋山 瑛(8/27、8/29)、中島 映理子(8/30)
コンラッド:柄本 弾(8/26、8/28)、宮川 新大(8/27、8/29)
アリ:池本 祥真(8/26、8/30)、二山 治雄(8/27、8/29)、生方
隆之介(8/28、8/30)
ギュルナーラ:三雲 友里加(8/26、8/28)、金子 仁美(8/27、8/29)、長谷川
琴音(8/30)
ランケデム:樋口 祐輝(8/26、8/28)、池本 祥真(8/27、8/29)、本岡 直也(8/30)