今年9月、東京バレエ団はブルメイステル版『白鳥の湖』を上演します。『白鳥の湖』は数多くの振付・演出がありますが、ブルメイステル版は日本では東京バレエ団のみに上演が許されているものです。『白鳥の湖』といえば、主役のオデット/オディールや王子への注目が高まるのは当然ですが、この作品の幻想的な世界を作り出すには白鳥たちの優美な群舞(コール・ド・バレエ)も重要です。今回は、フリーライターの小田島久恵さんによるコール・ド・バレエ3人のダンサーへのインタビューをご紹介します。
「一糸乱れぬ統一感」と評され、その精緻さとクオリティの高さが国内外で絶賛されている東京バレエ団のコール・ド・バレエ。特に『ジゼル』『ラ・バヤデール』の「白いバレエ」での美しいコール・ドは、全員がぴったりと揃っていながら一人ひとりが主役のような魅力に溢れていて、観る者を幻想的な世界へと誘ってくれる。9月に再演されるブルメイステル版『白鳥の湖』は、東京バレエ団のコール・ドの圧倒的な実力の集大成で、美の最高峰ともいえる名作だ。主役に匹敵する精神力とセンスを要するコール・ド・バレエの極意を、政本絵美(2009年入団)、平木菜子(2021年入団)、橋谷美香(2023年入団)に聞いた。
――政本さんは東京バレエ団では主役級の役も踊られていますが、コール・ドに入ったときの緊張感はまた別物ですか?
政本絵美:コール・ドの方がプレッシャーです。縦一列になったときに12人の先頭で自分が向きを変えるのを忘れたりしたら終わりですから。(東京バレエ団団長の斎藤)友佳理さんは機械的に揃っているということを嫌う方なので、一人ひとりの個がある中で揃っているということが大事で、それがまた難しいのです。白鳥は人間ではないので、腕も人間ぽくなってはいけないし、目を合わせようとして「ギロッ」と見たりすると白鳥でなくなってしまう。ちょっと睫毛で隠しつつ、360度見える目にしておくんです。
平木菜子:私は2022年の神奈川県民ホールでの公演が初めての東京バレエ団での『白鳥の湖』だったのですが、コール・ドの揃え方がそれまで踊っていた海外のバレエ団(ハンブルク・バレエ団)とは全く違っていて、一歩の角度やピケ・アラベスクの距離が厳密で、一個一個のステップを習うのが大変でした。美しく揃えることで前から見たときに大きなエネルギーとなっていく感覚があり、本番では自分がその一部であることに感動しました。
橋谷美香:私は前回の公演が初めての『白鳥の湖』で、それこそ縦一列になったときの一番先頭になってしまって、すごく不安で、絵美さんが『私も同じところやっていたから』と教えてくださってとても有難かったです。先頭だと後ろの皆がちゃんと並んでいるかなと確認しなきゃいけないし、後ろが先輩でもズレていたら言わなきゃならないので......それで結構悩んだりしていましたね。
平木:先頭から二番目の難しさもあるんですよ。最初に踊らせていただいたのが上手列の二番目だったんですが、二番目の背中で後ろが決まってくるし、立ち方で後ろの列が綺麗に決まるか凄くちがうところへ行ってしまうか決まるので大変なんです。
政本:三羽の白鳥では緊張感が解き放たれて......(笑)もちろん三羽も大変なんですが、コール・ドの先頭や二番目で踊っているより気持ちは楽かもしれない。
――第2幕と第4幕では白鳥群舞のキャラクターにも変化がありますか?
政本:第4幕ではフォーメーションが変わって面白いのですが、揃えるという点では第2幕のほうが分かりやすいです。縦列も多いですし。やはりお客さんから見て『あそこ曲がってるな』と分かってしまうのは第2幕なので、時間をかけてリハーサルしますね。
――白鳥は体力的にも精神的にも凄いパワーが要求されるのですね。
平木:すごいなと思ったのは、リハーサルが終わるとみんなで集まるんですよ。何回も。コール・ドの反省会が始まるんです。先輩方がつないできた東京バレエ団の誇りを一人一人がもち、「そろえよう!」と気持ちをひとつにするんです。これが東京バレエ団のコール・ドを完璧に美しく揃える秘訣なんだ......と思いました。
――映像でもチェックしたりしますか?
政本:それはもう(笑)。今はアップロードしていただいたものをそれぞれが見ていますが、昔はレッスン前に全員で集まって、ひとつのブラウン管(!)で見てチェックされていました。苦い思い出です。コロナ禍以降、第3幕のキャラクター・ダンスはロシアの先生にはオンラインで見ていただいているのですが、いつもパワーと愛情をいただいて「ダバイ、ダバイ」と励まされています。「頑張れ」「行け」という意味らしいですが、第3幕の最後の方で本当に疲れていても、その声を聴くと「もう少しで終わりだぞ」「もうちょっと頑張ろう」という気持ちになります。本番でもその先生の声が聞こえてくる感じですね。
座談会では、スペインを踊る政本と平木の「ドレスが重いため遠心力で回ってしまうのを止める苦労」や、キャラクターシューズを履いて踊るスペインとトゥシューズで踊る白鳥群舞をひとつの公演で兼任する場合のハードさ、橋谷の「大変な公演でも最終日の解放感が病みつきになった」というリアルな感慨が語られた。第2幕の白鳥群舞は舞台に出てから去るまでが長いので、覚悟が要るというエピソードも。『白鳥の湖』の優美は、まさに水面下の「白鳥の水搔き」のひたむきさによって支えられている。
取材・文:小田島久恵(フリーライター)
9月9日(水)18:30
9月10日(木)18:30
9月11日(金)18:30
9月12日(土)12:30
9月12日(土)18:30
9月13日(日)13:00
会場:新国立劇場 オペラパレス
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
S=¥17,000 A=¥12,000 B=¥10,000
C=¥8,000 D=¥6,000
U25シート=¥3,000
*ペア割引[S,A席]あり
*割引[S,A席]あり
[予定される主な配役]
オデット/オディール:永久 メイ(ゲスト)(9/9、9/12夜)、秋山 瑛(9/10、9/12昼)、沖 香菜子(9/11、9/13)
ジークフリート王子:柄本 弾(9/9、9/12夜)、大塚 卓(9/10、9/12昼)、宮川 新大(9/11、9/13)
ロットバルト:安村 圭太(9/9、9/12夜)、柄本 弾(9/10)、岡﨑 司(9/11、9/13)、鳥海 創(9/12昼)
道化:池本 祥真(9/9、9/12夜)、二山 治雄(9/10、9/12昼)、井福 俊太郎(9/11)、山下 湧吾(9/13)
[そのほかの公演]
9月17日(木)18:30
会場:ロームシアター京都 メインホール
オデット/オディール:沖 香菜子
ジークフリート王子:宮川 新大
ロットバルト:鳥海 創
道化:井福 俊太郎
■入場料(税込)
S=¥13,000 A=¥10,000 B=¥7,000
C=¥5,000 D=¥3,000
ユースS(29歳以下)=¥6,000
ユースA(29歳以下)=¥5,000
9月19日(土)14:00
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団
オデット/オディール:永久 メイ(ゲスト)
ジークフリート王子:柄本 弾
ロットバルト:安村 圭太
道化:池本 祥真
■入場料(税込)
S=¥13,000 A=¥10,000 B=¥7,000
C=¥5,000 D=¥3,000
9月21日(月・祝)14:00
会場:フェニーチェ堺 大ホール
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団
オデット/オディール:秋山 瑛
ジークフリート王子:大塚 卓
ロットバルト:柄本 弾
道化:二山 治雄
■入場料(税込)
S=¥13,000 A=¥10,000 B=¥7,000
C=¥5,000 D=¥3,000