9月9日に幕を開けるブルメイステル版『白鳥の湖』に向け、東京バレエ団では連日リハーサルが進んでいます。今回は、第2幕の群舞、そして第3幕の主役(秋山瑛と大塚卓)を交えた通し稽古の様子をライターの富永明子さんのレポートでご紹介します。
東京バレエ団の名物とも言えるのが、ミリ単位までそろったコール・ド・バレエ(群舞)。まさに"一糸乱れぬ"といった白鳥たちの群舞は、どのような指導で成り立っているだろう?
群舞の指導にあたったのは団長の斎藤友佳理、芸術監督の佐野志織、バレエスタッフの奈良春夏。ダンサーが踊っている最中、指先、顔と胸の向き、かかとの位置まで、指導の声が何度も飛ぶ。止まっているときも佐野志織がダンサーの周囲を回り、上体の向きやデリエールの足の角度など、直接触れながら直していく。
とくに多かったのが、上半身の使い方について。「もっと胸を開いて!」と声がかかってダンサーたちの胸が開くと、背中からより大きくアームスを使うことができ、白鳥の羽ばたきがダイナミックに表現される。また、上げた手をすぐに戻さないなど、動きに余韻を残すような指導も多く、それによって優雅でしっとりとした情感が増していった。
白鳥の群舞は頻繁にフォーメーションを替えるが、誰がどこまで進み、どの角度で立ち、前後左右とどのくらい間隔を空けるかまで、厳密に決められている。それは主役も同様で、オデットと王子を囲むコール・ド・バレエとの位置関係が正しくないと、一枚の絵として美しく見えない。そのため、全員が常に正しい位置と角度につくよう、細心の注意を払っていた。
リハーサル中はずっと適度な緊張感が漂い、全員がすさまじい集中力で臨んでいるのが伝わってくる。以前、大塚卓がインタビューで「『白鳥の湖』を踊ることに対して、すべてのダンサーが覚悟と信念を持ってやっていると思う」と語っていた言葉が思い出された。
続いておこなわれたのが第3幕の通し稽古。ブルメイステル版の『白鳥の湖』は、第3幕の宴に訪れる各国のゲストが悪魔ロットバルトの手下という設定で、全員が一丸となって王子をだます展開は迫力満点だ。
この日のオディールは秋山瑛、ジークフリート王子は大塚卓、ロットバルトは鳥海創。いずれも初役を務めるダンサーがそろった。
最初は道化たちがにぎやかに舞い、超絶技巧の連続にリハーサルながら笑いや拍手が巻き起こる。道化の二山治雄が王妃に絡むシーンも多く、斎藤友佳理や木村和夫から王妃との絡み方(王妃のそばで小道具を振り回さないなど)についてのアドバイスがおこなわれていた。
第3幕は舞台上に乗る人数が多く、第2幕の群舞同様にフォーメーションの整理が重要になる。斎藤友佳理から「(舞台上のスペースを)全部使うと思わないで」という声がかかったのが印象的だった。
とくにスペインは大きなマントをひるがえすので、立ち位置を誤るとマントがぶつかってしまう。スペインが踊る最中、オディールはそのマントに隠れながら姿を現したり消えたりするので、そのタイミングや出方が何度も確認された。
キャラクターを踊る若手ダンサーには、佐野志織が体(とくに胸から上)の使い方について丁寧にアドバイスを重ねる。同じキャラクターでも、スペイン、ナポリ、チャルダッシュ、マズルカはそれぞれ違う踊りなので、国ごとのアクセントのつけ方やステップの違いをはっきり見せないといけない――その難しさを実感した。
主役ふたりへの演技指導も細やかにおこなわれ、オディールが王子の手を振り払う仕草ひとつに至るまで調整が入る。まず感情があり、それが動きにつながる――それぞれの気持ちがより明確に伝わるよう、タイミングまで調整を重ねていく。
秋山と大塚はこのリハーサル後も抜き稽古をおこない、音楽なしで一つひとつの動きを丁寧に確認していった。たとえば王子がオディールから離れるとき、彼女のほうに上体を残しながら去るだけで、彼女を愛しく思う気持ちが客席により伝わる。相手に対する体の向き、視線、歩くスピード......ふたりがリハーサルを重ねれば重ねるほど、それぞれの感情がクリアになっていった。
このようにバレエ団一丸となって、本番に向けて毎日何時間も細かな調整をし、動きを体に染み込ませていく。初役となるダンサーも多い今回の『白鳥の湖』だが、本番では驚くほど味わい深い踊りを見せてくれることだろう。9月9日の開幕が今から待ちきれない!
取材・文=富永明子(編集者・ライター)
9月9日(水)18:30
9月10日(木)18:30
9月11日(金)18:30
9月12日(土)12:30
9月12日(土)18:30
9月13日(日)13:00
会場:新国立劇場 オペラパレス
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
S=¥17,000 A=¥12,000 B=¥10,000
C=¥8,000 D=¥6,000
U25シート=¥3,000
*ペア割引[S,A席]あり
*割引[S,A席]あり
[予定される主な配役]
オデット/オディール:永久 メイ(ゲスト)(9/9、9/12夜)、秋山 瑛(9/10、9/12昼)、沖 香菜子(9/11、9/13)
ジークフリート王子:柄本 弾(9/9、9/12夜)、大塚 卓(9/10、9/12昼)、宮川 新大(9/11、9/13)
ロットバルト:安村 圭太(9/9、9/12夜)、柄本 弾(9/10)、岡﨑 司(9/11、9/13)、鳥海 創(9/12昼)
道化:池本 祥真(9/9、9/12夜)、二山 治雄(9/10、9/12昼)、井福 俊太郎(9/11)、山下 湧吾(9/13)
[そのほかの公演]
9月17日(木)18:30
会場:ロームシアター京都 メインホール
オデット/オディール:沖 香菜子
ジークフリート王子:宮川 新大
ロットバルト:鳥海 創
道化:井福 俊太郎
■入場料(税込)
S=¥13,000 A=¥10,000 B=¥7,000
C=¥5,000 D=¥3,000
ユースS(29歳以下)=¥6,000
ユースA(29歳以下)=¥5,000
9月19日(土)14:00
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団
オデット/オディール:永久 メイ(ゲスト)
ジークフリート王子:柄本 弾
ロットバルト:安村 圭太
道化:池本 祥真
■入場料(税込)
S=¥13,000 A=¥10,000 B=¥7,000
C=¥5,000 D=¥3,000
9月21日(月・祝)14:00
会場:フェニーチェ堺 大ホール
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団
オデット/オディール:秋山 瑛
ジークフリート王子:大塚 卓
ロットバルト:柄本 弾
道化:二山 治雄
■入場料(税込)
S=¥13,000 A=¥10,000 B=¥7,000
C=¥5,000 D=¥3,000