2025/04/02(水)Vol.515
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2025年04月02日号 | |
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バレエ英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 |
Photo: Mizuho Hasegawa
6月に開催される英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団日本公演にちなみ、ロンドン在住の舞踊ライター、實川絢子さんの現地取材によるインタビューをシリーズでお届けします。デヴィッド・ビントリー振付『シンデレラ』で主役を務める平田桃子さん。『シンデレラ』という作品との向き合い方、BRBというカンパニーについて、日本公演への思いなどが語られています。
※本取材はロンドンにてリモート取材により行われました。
2003年に英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)に入団し、2013年からプリンシパルを務める平田桃子。バレエ団を代表する彼女に、2月にバーミンガムで上演された『シンデレラ』でウィリアム・ブレイスウェルと共に主演を務めた直後、話を訊いた。
平田にとって『シンデレラ』は特別な作品だ。「この作品には、クリエーションの段階から関わっていて、デヴィッドには春の精の役を直接振付けていただきました。シンデレラ役は、2010年にBRBを一時退団する前に踊り、再入団後の2013年に再び踊り、2015年の日本ツアーでも演じました。そして10年後の今、また異なるメンバーとともに踊ることになり、キャリアの節目ごとにこの作品があったことを実感し、とても感慨深いです」。
さらに、2年ほど前にボルドー・オペラ座バレエがビントリー版『シンデレラ』を上演することとなり、急遽ゲストとして主演した経験も新鮮だった。「多くのダンサーが踊る『シンデレラ』を見てきたことで、自分の解釈の幅も広がり、10年前とはまた違うシンデレラ像が出来つつあります。ステップは難しいですが、これまで最も多く踊ってきた作品だからこそ、安心して踊れますし、心から楽しめますね」。
第1幕でビントリーが大切にしていたのは、リアリティだという。「でもそれは、私一人でつくりあげるものではなく、共演者との関係性の中で生まれるもの。だからこそ、瞬間ごとの表現を大切にしています。毎回キャストが違うので、新しい発見があり、挑戦し続ける楽しさがあります」。
また、シンデレラというキャラクターについて「強い女性だと思っています」と語る。「自分自身も、芯の強さという点では似た部分があるかもしれません」。
「特に注目してほしいのは、美しい衣裳と舞台美術、そしてデヴィッドの素晴らしいステップが生み出す総合芸術としての魅力です。第2幕の時計が真夜中を告げるシーンは圧巻なので、ぜひ見ていただきたいですね」
今回の日本公演では、かつてのBRBの同僚であり、現在は英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルであるウィリアム・ブレイスウェルと共演する。「ウィリアムはキャリア豊富なダンサーであり、限られたリハーサル時間の中でも安心して踊ることができました。彼の技術や表現力はBRB入団時から際立っていましたが、そこにさらに自信が加わり、より輝かしいアーティストになったと感じます。とても誇らしく思いました」。
BRBはカルロス・アコスタが芸術監督に就任してから新たな方向へ進んでいる。コロナ禍という困難な時期の就任ではあったが、彼の指導力によってバレエ団の団結力は強まり、ポジティブな変化が生まれているという。
「カルロスの情熱はスタジオにいるだけで伝わってきますし、ダンサーにも熱意を持つことを求めています。彼の存在そのものが皆のエネルギーの源になっているんです」。中でも、アコスタ版『ドン・キホーテ』の主演は平田にとって大きな転機になったという。「これまで自分の殻の中に閉じこもっていた部分がありましたが、キトリ役を演じることで新たな自分を発見できました」
コロナ禍を経て、バレエ団のメンバーの入れ替わりも多かったが、それを乗り越えたことで団結がより強まった。「もともとフレンドリーなカンパニーでしたが、この数年でまるで家族のような存在になりました。全幕作品を上演する時は、団結して一つのいい舞台を作るということが重要になってきますから、『シンデレラ』はそれが存分に発揮される作品だと思います」。
長年カンパニーに所属する中で、若いダンサーたちとの関わり方にも変化があったという。以前は自分のことで精一杯だったが、今では若手からアドバイスを求められることも増えた。「彼らを見ていると、葛藤や成長の過程が自然と分かるようになり、色々と気を配れるようになりました。頼りにされるのは嬉しいですし、彼らの成長を見守るのも喜びの一つです。まだまだ踊り続けたいという気持ちが大きいですが、それと同時にカンパニーに少しずつ恩返ししていけたらと思っています」。
今回、カルロス体制になってから初めての日本ツアーで、進化したBRBを日本の観客に届けることを楽しみにしていると言う平田。「こうしてまた日本で踊る機会をいただけたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。日本人ダンサーの活躍も著しいので、ぜひ注目してください」。
また、日本での公演を通じて、日本の未来のバレエダンサーたちにも影響を与えたいと願っている。「私が子どもの頃はSNSもなく、海外のバレエ団の公演を観ることができる機会は限られていました。それでも東京まで足を運び、実際の舞台から多くを学びました。今回のBRBの公演も、未来のダンサーたちの刺激となり、新たな想像力を得るきっかけになれば嬉しいです」。
實川絢子(在ロンドン、舞踊ライター)
6月20日(金) 18:30
6月21日(土) 14:00
6月22日(日) 14:00
[予定される主な出演者]
オーロラ姫:アリーナ・コジョカル[ゲスト・アーティスト](6/20 ,6/22)、 栗原ゆう(6/21)
王子:マチアス・ディングマン(6/20, 6/22)、ラクラン・モナハン(6/21)
会場:東京文化会館(上野)
指揮:ギャヴィン・サザーランド
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
6月27日(金) 19:00
6月28日(土) 14:00
6月29日(日) 14:00
[予定される主な出演者]
シンデレラ:平田桃子(6/27,6/29)、 ベアトリス・パルマ(6/28)
王子:ウィリアム・ブレイスウェル[ゲスト・アーティスト](6/27,6/29)、マックス・マズレン(6/28)
会場:東京文化会館(上野)
上演時間:約2時間30分(休憩2回含む)
指揮:ポール・マーフィー
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
―平日料金
S=¥26,000 A=¥23,000 B=¥20,000
C=¥17,000 D=¥14,000 E=¥10,000
U25シート=¥5,000
【堺公演】
7月2日(水) 18:30
会場:フェニーチェ堺 大ホール
オーロラ姫:セリーヌ・ギッテンス
王子:ヤシエル・ホデリン・ベロ
演奏:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
■入場料[税込]
S=¥22,000 A=¥18,500 B=¥15,000 C=¥9,000
【名古屋公演】
7月5日(土) 14:00
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
オーロラ姫:セリーヌ・ギッテンス
王子:ヤシエル・ホデリン・ベロ
演奏:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
■入場料[税込]
S=¥22,000 A=¥19,000 B=¥15,000 C=¥10,000 D=¥7,000 U25シート=¥5,000