NBS News Web Magazine
NBS日本舞台芸術振興会
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
Photo: Shoko Matsuhashi

NEW2025/04/16(水)Vol.516

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団2025年日本公演 

現地取材(2) ウィリアム・ブレイスウェル インタビュー
2025/04/16(水)
2025年04月16日号
TOPニュース
バレエ

Photo: Shoko Matsuhashi

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団2025年日本公演 

現地取材(2) ウィリアム・ブレイスウェル インタビュー

6月の英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団日本公演を控えての、ロンドン在住の舞踊ライター、實川絢子さんの現地取材によるインタビュー・シリーズ。2回目は日本公演にもゲスト・アーティストとして登場するウィリアム・ブレイスウェル。バーミンガム・ロイヤル・バレエ団と英国ロイヤル・バレエ団の両方を知る彼が語る『シンデレラ』の魅力とは?

※本取材はロンドンにてリモート取材により行われました。

「ビントリー版『シンデレラ』は本当に踊りがいがあります」

英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、ウィリアム・ブレイスウェル。2月にバーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)の『シンデレラ』に客演した直後のブレイスウェルに、その感想と6月の日本公演への期待などについて話を訊いた。

BRBでの客演について

「ツアーカンパニーのBRBでは、舞台やリハーサル以外でも団員同士で一緒に過ごす時間が長いので、まるで家族のように強い絆が育まれます。自分にもBRBで多くの生涯の友人ができました。今回ゲスト出演することになって、カンパニーの皆が再び温かく迎えてくれ、とても感慨深かったです」と振り返った。

中でも感動したのは、やはり平田桃子との共演だったという。「BRB在籍当時はあまり一緒に踊る機会がありませんでしたが、彼女は長い間尊敬してきたダンサーです。桃子は強靭さと圧倒的な技術を併せ持っているだけでなく、舞台でどこまでも自由に踊ることができ、上品で優美なポール・ド・ブラも魅力です。常に冷静で技術的にも安定していて、彼女と踊ると、僕の仕事は信じられないほど楽になります(笑)。そのおかげで、短いリハーサル期間でも安心して一緒に踊ることができました」。

『シンデレラ』
Photo: Caroline Holden / BRB

ビントリー版『シンデレラ』の魅力

英国ロイヤル・バレエ団に移籍する直前にも、ビントリー版の『シンデレラ』の王子役を踊り、今回7年ぶりにこの役に挑んだと言うブレイスウェル。「この版の『シンデレラ』は、英国ロイヤル・バレエ団のアシュトン版と比べて王子役の踊りが多く、本当に踊りがいがあります。中でも、第2幕の舞台の端から端まで移動するステップは解放感があって最高ですね。BRB在籍当時、デヴィッド(・ビントリー元BRB芸術監督)とはずっと一緒に仕事をしてきたので、彼の振付スタイルは、まるでサイズがぴったりの手袋のように自分にしっくりきます。BRBの皆と再会し、彼らから新たに学ぶことも多くありますし、この作品に対する愛を皆で分かち合えることが何より嬉しいです」。

また、個人的に心に残る場面についても熱く語ってくれた。「第2幕のパ・ド・ドゥは本当に美しいです。王子とシンデレラが、残りの人生を共に過ごしたいと思う運命の相手をやっと見つけ、踊りでその興奮と喜びを表現する、感動的なシーンです。そして、第3幕の最後の場面も印象的です。王子とシンデレラが登場し、星の精たちが鳥の群れのように舞う演出は、音楽との調和が絶妙で、心を打たれます」。

ウィリアム・ブレイスウェル演じる王子
Photo:Caroline Holden / BRB

プリンシパルとしての今後の展望

2022年にロイヤル・バレエ団のプリンシパルに昇格し、子どもの頃からの夢を叶えたブレイスウェルだが、バレエダンサーとしてさらに成長したい、という思いは今も全く変わらないという。「バレエは決して完成することのない芸術であり、常に挑戦が続いていくのだと思っています。まだまだ踊りたい作品や一緒に仕事をしたい振付家がたくさんいますし、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルになれたことで、自分のキャリアの展望がさらに広がったように感じています。憧れていたアレッサンドラ・フェリやマリアネラ・ヌニェスと一緒に『ロミオとジュリエット』のリハーサルをすることが日常になったなんて、改めてこの環境に感謝しています。プロのバレエダンサーは、誰もが日々信じられないほど努力していますから、その中で今、自分がこのような環境にいることをとても幸運だと感じています。プリンシパルとしてのプレッシャーを感じないわけではないですが、ダンサー人生は永遠には続かないからこそ、そんな環境にいる今この瞬間を最大限に楽しみたいと思っています」。

ウィリアム・ブレイスウェル
Photo: Shoko Matsuhashi

「この7年間、パム・タノヴィッツ、ウェイン・マクレガー、クリストファー・ウィールドン、ホフェッシュ・シェクターといった振付家たちとの仕事で素晴らしい経験を積み、私生活では大切な人との別れや出会いがありました。それらすべてが踊りに影響を与えています。自分は技術的に完璧なダンサーとは言えないかもしれませんが、物語を伝えることに重点を置き、感情を表現し、観客に良いパフォーマンスを届けるように努力しています。英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルは一人ひとりが個性的で、同じ役でも異なる解釈をします。それこそがバレエの魅力だと思いますし、そんな個性を尊重してくれるロイヤル・バレエを心から愛しています」

日本公演への期待

6月に予定されているBRBの日本公演も、今から待ちきれないという。「日本は舞台で踊るだけではなく、そこに滞在すること自体がスペシャルです。日本の観客の皆さんからの反応と温かいサポートは、他では決して経験できないもので、本当に感動しました。6月に再び皆さんにお会いできるのを楽しみにしています」。
さらに、日本で訪れたい場所についても語ってくれた。「美術館やギャラリー、陶器市などを訪れたいと思っています。前回はスーツケースの片側をTシャツでくるんだ陶器でいっぱいにして帰国したんですよ(笑)。ガーデニングにも興味があるので、日本庭園を訪れたり、ガーデニング用の道具を見たりするのも楽しみです」。

實川絢子(在ロンドン、舞踊ライター)

公式サイトへ チケット購入

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団2025年日本公演
『眠れる森の美女』/『シンデレラ』

公演日

『眠れる森の美女』

6月20日(金) 18:30
6月21日(土) 14:00
6月22日(日) 14:00

[予定される主な出演者]
オーロラ姫:アリーナ・コジョカル[ゲスト・アーティスト](6/20, 6/22)、 栗原ゆう(6/21)
王子:マチアス・ディングマン(6/20, 6/22)、ラクラン・モナハン(6/21)

会場:東京文化会館(上野)

指揮:ギャヴィン・サザーランド
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

『シンデレラ』

6月27日(金) 19:00
6月28日(土) 14:00
6月29日(日) 14:00

[予定される主な出演者]
シンデレラ:平田桃子(6/27, 6/29)、 ベアトリス・パルマ(6/28)
王子:ウィリアム・ブレイスウェル[ゲスト・アーティスト](6/27, 6/29)、マックス・マズレン(6/28)

会場:東京文化会館(上野)

指揮:ポール・マーフィー
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

―平日料金
S=¥26,000 A=¥23,000 B=¥20,000
C=¥17,000 D=¥14,000 E=¥10,000
U25シート=¥5,000


【堺公演】

『眠れる森の美女』

7月2日(水) 18:30

会場:フェニーチェ堺 大ホール

オーロラ姫:セリーヌ・ギッテンス
王子:ヤシエル・ホデリン・ベロ

演奏:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

■入場料[税込]
S=¥22,000 A=¥18,500 B=¥15,000 C=¥9,000

【名古屋公演】

『眠れる森の美女』

7月5日(土) 14:00

会場:愛知県芸術劇場 大ホール

オーロラ姫:セリーヌ・ギッテンス
王子:ヤシエル・ホデリン・ベロ

演奏:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

■入場料[税込]
S=¥22,000 A=¥19,000 B=¥15,000 C=¥10,000 D=¥7,000 U25シート=¥5,000