今年夏の〈エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス〉に登場した期待の若手、パリ・オペラ座バレエ団のロレンツォ・レッリとエンゾ・ソガールの2人に舞踊評論家の岡見さえさんがインタビュー。今後の豊富や憧れを抱くダンサーなどを明確に答える様子にはまさに若々しいバレエへの情熱が感じられます。
エンゾは2歳か3歳、ロレンツォは5歳で"バレエをやりたい!"
――バレエを始めたきっかけと、バレエ団入団の経緯を教えてください。
エンゾ:2歳か3歳でテレビでバレエを見て、自分もやりたいと親に頼みました。最初は近くの音楽表現の教室に通ったものの、どうしてもバレエを習いたくて4歳から本格的な教室に入り、13歳で故郷スペインを離れてパリ・オペラ座バレエ学校へ。短期契約を経て2020年入団です。
ロレンツォ:僕はイタリアで5歳から。地元の劇場で兄が習っていた空手の発表会に行き、空手の前のバレエの発表を見て「僕もやりたい!」と。地元の教室から11歳でミラノのスカラ座バレエ学校に移り、パリ・オペラ座出身だった先生の勧めで2022年にパリ・オペラ座バレエ団入団試験を受けました。1年間の契約団員を経て23年から正式団員です。
――これまで踊った役や作品で、印象に残っているのは?
ロレンツォ:昨年のヌレエフ版『眠れる森の美女』です。初めて主役を踊り、テクニック以上に役を解釈・表現することの大切さを学び、練習方法や役への取り組みが変わりました。
エンゾ:2023年のベジャール振付『さすらう若者の歌』です。初めてのソリストの役でしたし、作品のテクニックも解釈も本当に深く、リハーサルは濃密で強烈な経験でした。
――これから踊りたい役や作品を教えてください。
エンゾ:すごく贅沢な望みですが、バレエ団の今シーズンでは、昨年末の昇進試験で踊った『ライモンダ』のジャン・ド・ブリエンヌの代役に入れたら嬉しいです。シーズン開幕の『マノン』はレスコーの代役なので、稽古が楽しみです。
ロレンツォ:『マノン』ではレスコーとデ・グリューの代役なので、1公演だけでもデ・グリューを踊れたら......。とてもナラティヴでドラマティックなバレエですから。『ジュエルズ』のダイヤモンドも踊りたいです。
――ロレンツォさんは、ヌレエフ版『眠れる森の美女』『ロミオとジュリエット』の主役も踊っていますが、物語のある全幕作品がお好きですか?
ロレンツォ:好きですね。僕は普段はとてもシャイで控えめ、無口なタイプなので、舞台上にいる方が自分を表現できると感じます。バレエが自分を表現する機会を与えてくれるのです。
――エンゾさんは、最近モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督ジュリアン・ファヴローさんと『ボレロ』のメロディ(ソリスト)の稽古をされたと伺いました。
エンゾ:はい。本当に信じられない経験でした。ピョートル・ナルデリさんにも教えていただき、各ムーヴメントのディテールを練習し、ベジャールのスタイルの理解が深まりました。視線の使い方も強く、ポーズやパはシンプルだけどたくさんの意味がある。いつか本番で踊りたいですね。『ボレロ』は、男性も女性もメロディを踊れる点が好きです。僕の中にある男性的な部分と女性的な部分をミックスして踊れたら、きっと凄く面白いと思います。
――インスピレーションを受けるダンサーはいますか?
ロレンツォ:スカラ座学校出身なのでロベルト・ボッレが憧れでしたが、パリ・オペラ座ではユーゴ・マルシャンでしょうか......。でもエトワールはそれぞれ素晴らしい個性の持ち主ですし、役を踊る時は過去のエトワールの演技を勉強し、それを自分のものにしていきます。
エンゾ:僕はリュドミラ・パリエロ。女性ダンサーにも刺激を受けるし、レオノール・ボラックのミリ単位の正確さ、テクニックも素晴らしい。でもロレンツォの言うとおり、皆が素晴らしいダンサーなので難しい質問ですね。
――最後に、日本公演の印象について教えてください。
エンゾ:日本は一昨年の(パリ・オペラ座)バレエ団の『白鳥の湖』が最初、今回が2度目です。日本のお客さまからは敬意や情熱を感じます。僕たちの芸術を理解し、追いかけ、敬意を抱いてくださる観客に支えられ、とても幸運だと思っています。
ロレンツォ:同感です。僕も『白鳥の湖』、昨年の〈バレエ・スプリーム〉に続く3回目の来日ですが、終演後も温かく迎えてくださる観客の皆さんの熱心な応援に感謝しています。
取材・文:岡見さえ(舞踊評論家)