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NEW2026/10/21(水)Vol.552

ダンサーズ・トピックス 永久メイ インタビュー
オデット/オディール デビューを果たして
2026/10/21(水)
2026年10月21日号
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ダンサーズ・トピックス 永久メイ インタビュー
オデット/オディール デビューを果たして

9月に東京バレエ団公演ブルメイステル版『白鳥の湖』にゲストとして登場した永久メイ。マリインスキー・バレエに所属する彼女にとって『白鳥の湖』は特別な作品。オデット/オディール役デビューを果たしたところでの率直な思い、東京バレエ団との共演などについて、富永明子さんがインタビューしました。

今回の「白鳥の湖」は自分との戦いだった

――ついに初主演となった東京バレエ団での『白鳥の湖』全幕公演が終了しました。初日を終えたとき、どんな気持ちになりましたか?

永久:始まる前は、いつも感じているような緊張がなかったんです。もちろん緊張はしていたのですが、普段とは違う緊張感で......。おそらくこれまではお客さまありきで、どう見られるかということに対して緊張していたように思うのですが、今回の「白鳥」では自分との戦いというか、私がリハーサルでつかんできたものを舞台上で表現できるかどうかに対する緊張感だったように思います。上演中はひたすら自分に集中していたので、どう踊ったのか実はあまり覚えていません。すべてを終えてカーテンコールに出て初めて「人前で踊ったんだ」と、じーんとくるものがありました。

――お客さまの顔が見えてようやく踊り終えた実感がわいてきたのでしょうか?

永久:そう思います。実は全幕を終えてレヴェランス(お辞儀)をするとき、涙がにじんだのは初めての経験だったんです。私が初めて作り上げる「白鳥」を期待して待っていてくれて、3時間かけて見届けてくださったお客さまからの拍手は特別なもので、今まで抱いたことのない感動がありました。第3幕の最後にあるレヴェランスのときはまだオディールとして出ていますが、終幕後は永久メイとしてお客さまの前に立てて、だからこそ、こみあげてくるものがあったのだと思います。今も心に残る景色です。

カーテンコールの永久メイと柄本弾(東京バレエ団2026年9月公演より)
Photo: Koujiro Yoshikawa

――パートナーの柄本弾さんと踊るのはいかがでしたか?

永久:弾さんとは関西人同士ということもあって、リハーサルのとき以外も、どんな話題でも話が弾みました! 普段のコミュニケーションが信頼関係にもつながっていきますし、それは舞台上でも出ることだと思うので、とてもありがたかったです。弾さんは私の踊りやすい感覚を崩さず、寄り添ってくれるパートナー。何度も「踊りやすい?」「もっと楽に踊っていいよ」と言ってくださって、私は何も考えることなく、好きなように踊ることができました。

――最初から踊りやすいパートナーだったのでしょうか?

永久:そうなんです。初めて組んだとき、いきなり第2幕の「出会いのシーン」を通すことになったのですが、私は振りは入っていたけれど踊るのは初めてで、全部通すのは難しいと思っていました。でも弾さんを相手に踊ったら、いきなり最後まで通せたんです。パートナーリングの経験が豊富というだけでなく、弾さんはパートナーの感じているものを自然と読み取ってくれる方なのだと思います。毎回のリハーサルでしっかり感情を出して踊ってくださるので、演技面でも助けられて、本当に素晴らしいパートナーでした。

永久メイと柄本弾(東京バレエ団2026年9月公演より)
Photo: Koujiro Yoshikawa

――第3幕での強気なオディールが印象的でしたが、もともとメイさんのなかにあったキャラクターでしたか?

永久:もともとは、オディールは王子を誘惑するイメージがあって、そういう役作りをしようと思っていたんです。でも本番になっていざ舞台に出てみたら、すでにロットバルトや各国のダンサーたちが王子の心をがっちりつかんでいて、オディールはこれ以上誘惑する必要がないというか、誘惑のもっと上をいく「ラスボス」みたいだと感じたんですね(笑)。だから、私のオディールはすでに勝利を確信していて、罠にかかった王子の最後の息の根を止めるような気持ちで、強気でいけました。あとはロットバルト役の(安村)圭太さんが目線をくれるだけで力をもらえて、役に入り込めました。

オディールを踊る永久メイとロットバルトを踊る安村圭太(東京バレエ団2026年9月公演より)
Photo: Koujiro Yoshikawa

――そのオディールから、第4幕でまたオデットへと気持ちを切り替えるために、どんな工夫を?

永久:不思議なのですが、白の衣裳を着ると自然と切り替わるんですよ。あと第4幕はコール・ド・バレエとの交流が多くて、白鳥たちが守ってくれているのを感じたら、自然とオデットらしい感情がわき上がってきました。たくさんリハーサルできたわけではないのですが、みんなが私を中心に円になるようなフォーメーションもあって、それだけで白鳥たちからのサポートを強く感じられましたね。

――同じくオデット/オディールを踊った、沖香菜子さん・秋山瑛さんとも交流はありましたか?

永久:おふたりにはとても支えていただきました! 私だけが難しいのかなと思っていたステップを、おふたりが「ここは難しいし、疲れるよね」と言ってくださると、それだけでホッとして励みになりました。私が言うのはおこがましいのですが、チームのように感じていましたね。

――リハーサル中の指導で印象に残ったことについて教えてください。

永久:オデットは(斎藤)友佳理さんから「第2幕で最初に出ていく場面ですべてが決まる」と聞いていましたが、本番でも実際そこに難しさを感じました。オディールに関しては「メイの心のなかにある強さや鋭さを、目を通してもっと伝えて」と。動きは(練習で)成長できるけれど、心のなかにあるものを自分でどう出すかを試行錯誤しました。ただ、リハーサルとは違うものが本番で出てくるという新しい感覚があったので、これから「白鳥」はもっと研究して、磨いていきたいです。

マリインスキー・バレエで踊っている身としてやはり『白鳥の湖』は特別な作品。友佳理さんからも「まだ一歩目にも立っていない。これから始まる道のりを踏み出す一歩目の練習だったと思って」とのお言葉をいただきました。終わりは見えないですが、成長を続けていきたいと思っています。

オデットを踊る永久メイ(東京バレエ団2026年9月公演より)
Photo: Koujiro Yoshikawa

取材・文:富永明子(編集者・ライター)