新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月9日を最後に劇場を閉鎖したウィーン国立歌劇場。3カ月後の6月8日には、100名の聴衆を迎えてのコンサートを開始した。ピアノ伴奏のリートの夕べやアンサンブルによる小規模なコンサートが10回以上行われ、いよいよシーズンのフィナーレへ。シーズン閉幕を飾る6月27日の「若いアンサンブルのガラコンサート」は、オーケストラが舞台に上がり、次々にアンサンブル歌手が登場するという特別な会となった。シーズン最後のガラ・コンサートは毎年恒例だが、今年はシーズンそのものが途中で打ち切りとなったため、閉幕コンサートの開催も6月の劇場再開が実現してからあらためてプログラムされたのだろう。聴衆が100人限定とはいえ、およそ3時間におよぶ大規模な開催となったこのコンサートは、今シーズンのフィナーレとともに、2010年から総裁を務めたドミニク・マイヤー総裁の退任を飾るものでもあった。
6月27日に開催されたコンサートの模様から(写真はウィーン国立歌劇場Facebookより)
コンサートの終演後、マイヤー総裁と国立歌劇場営業部の総責任者トーマス・プラッツァー氏に名誉団員の称号が授与されるセレモニーが行われた。コンサートの間は降ろされたままだった舞台奥の防火シャッターが上がると、そこには劇場スタッフがずらりと並び、出演歌手たちも客席に座っている。コンサートで指揮を務めたマエストロ・フィッシャーの祝辞の後、マイヤー氏は感謝のスピーチで、「このオペラハウスで仕事が出来たことは大きな喜びであり名誉でした。そして、この国で、この街で仕事が出来たことも大きな喜びでした。ですから、私はオーストリア政府から任命されたわけではありませんが、常にウィーン大使のひとりであり続けます」と述べた。
名誉団員の称号を授与されたドミニク・マイヤー氏(左)とトーマス・プラッツァー氏(右)
すでに報じられているとおり、ドミニク・マイヤー氏は今後はミラノ・スカラ座総裁に就く。ウィーン国立歌劇場総裁退任にあたってプレス関係者に宛てたステートメントでは、「オペラの世界に私はこれからも忠実であり続けますので、同じ役目ですが、別の場所にて、皆さまとはこれからもコンタクトを保たせて頂きます。リング通りのオペラハウスで10年間の任期満了後、すでに今年の3月1日より、私はミラノ・スカラ座の総裁として仕事をする名誉をいただきました」(抜粋)と記している。このステートメントとともに、在任中の業績をまとめた冊子も届いた。オペラ・バレエ、コンサート、子どものためのオペラやイベントなど、マイヤー総裁の下で行われた膨大なリスト! ここでは、在任中に新制作されたオペラをご紹介。
1/2ページ