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2019年撮影 Photo: NBS

2020/10/21(水)Vol.408

ズービン・メータ
フィレンツェ五月音楽祭デビュー50周年を祝う
2020/10/21(水)
2020年10月21日号
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オペラ

2019年撮影 Photo: NBS

ズービン・メータ
フィレンツェ五月音楽祭デビュー50周年を祝う

互いの敬愛で結ばれた50年

2020年秋には、ミラノ・スカラ座とともに来日する予定だったマエストロ・ズービン・メータ。来日はかなわなかったものの、予定された歌手たちとミラノで『椿姫』を公演し、大成功をおさめたとのことです。
そして10月、メータはフィレンツェのスペシャルなステージに立ちました。
10月6日、フィレンツェ歌劇場で、ズービン・メータのフィレンツェ五月音楽祭デビュー50周年を祝す記念コンサートが開催されたのです。
ハイドンのオラトリオ「天地創造」が、ソプラノのハンナ=エリザベス・ミュラー、テノールのパトリック・グラール、バリトンのミヒャエル・フォレ、メゾ・ソプラノのヴィエタ・ピリペンコらソリストとフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団・合唱団によって祝福と感謝の込められた演奏が行われました。

コンサートの後に開催された、ステージを含めた劇場を会場としたセレモニー・ディナーには400人の観客が参加したそうです。この席でメータは「実は私がフィレンツェで最初に指揮をしたのは1962年でした」と語りましたが、これはシンフォニー・コンサートでのこと。フィレンツェ五月音楽祭へのデビューは1969年の『アイーダ』ということで、今回の記念行事は、本来なら2019年に開催されるべきところ、さまざまな理由と新型コロナによる影響から、この日まで延期になっていたのでした。
メータは50年前を振り返ったときに印象深かったものとして、ジョルジョ・ストレーレル演出による『後宮からの逃走』と『フィデリオ』を挙げ、「ジョルジョ・ストレーレルは世界中でもっと称賛されるべきアーティストです。あの『フィデリオ』ほど最高に素晴らしい上演は指揮したことも観たこともありません。1986年以来、私はこの劇場とフィレンツェにいます。ここを離れることなんて考えられません」とスピーチ。メータは1986年からフィレンツェ五月音楽祭首席指揮者を務め、2006年には終身名誉指揮者の称号が贈られました。50年余にわたる深く強い結びつきをもったメータとフィレンツェ。互いの敬愛によって生み出される演奏を、"フィレンツェの芸術"として、人々は誇っています。

コンサートには、フィレンツェ市長ダリオ・ナルデッラ、新たに選出されたトスカーナ州知事ユージェニオ・ジャニ、フィレンツェ県知事ローラ・レガ、文化局長トムマソ・サッキ、フィレンツェ五月音楽祭理事会のメンバーに加え、10月に同歌劇場で上演される『ナブッコ』に出演するプラジド・ドミンゴも出席しました。

◾️コンサートの模様はフィレンツェ五月音楽祭のFacebookで写真が紹介されています。
https://www.facebook.com/maggiomusicale/photos/a.397730209034/10158665058464035/

"ウィズ・コロナ"での舞台制作


フィレンツェ五月音楽祭(フィレンツェ歌劇場)では、2020/21シーズンは9月初旬からスタートしました。もちろん、新型コロナウイルス感染症対策とともに。
いわゆる"ウィズ・コロナ"のなかでの舞台制作について、9月22日から29日まで上演されたプッチーニ作曲『つばめ』を演出したドニ・クリエフはこう語っています。「感染防止のための規定に対応するために、いくつかの修正をしなければなりませんでした。たとえば、ソリストの場合、第2幕で作曲家が要求したようなキスを避け、抱擁も避けなければなりません。でも、その演技が行われなかったとしても、そこに込められた"意図"は常に明確です。キスがなくても、観客はそのシーンの意味を容易に理解するのです」。また『つばめ』を指揮したマルコ・アルミリアートは「このような不確実ななかでも、劇場が安全や健康を守るための注意をはらってくれたおかげで、私たちは平静な心をもって仕事をすることができました」と感想を語っています。

世界を襲う新型コロナウイルス感染症は、いまだ収束の見通しすらたっているとは言えない状況。そうしたなかでも、"ウィズ・コロナ"での公演を行っていると聞くと、ほんの少し希望が感じられるようでもあります。