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Photo: Musacchio & Ianniello

2024/02/07(水)Vol.487

英国ロイヤル・オペラ2024年日本公演
アントニオ・パッパーノ インタビュー(2)
2024/02/07(水)
2024年02月07日号
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Photo: Musacchio & Ianniello

英国ロイヤル・オペラ2024年日本公演
アントニオ・パッパーノ インタビュー(2)

6月の英国ロイヤル・オペラ(ROH)日本公演を率いる音楽監督アントニオ・パッパーノに、作品について聞いたインタビューの2回目は、『リゴレット』。ROHの2021/22シーズン・オープニングを満員にし、評論家からも大変に高い評価を得た『リゴレット』ですが、驚くべきことにパッパーノは20年以上も音楽監督を務めながらこのオペラをROHで指揮するのはこの時が初めてだった! そんなマエストロの『リゴレット』への思いを語っていただきました。

「このオペラには暴力的な要素もありますが、
まるで高価で美しい短剣を見るような、そんな印象を持たせる舞台です」

アントニオ・パッパーノ:(2021年に)29年ぶりに『リゴレット』を指揮して、なぜこれまで指揮しなかったんだろう、って思いましたよ(笑)
『リゴレット』はまさに完璧なオペラです。ドラマツルギーといった側面から見ても、コンパクトな構成であるだけでなく、演劇作品としても素晴らしいものがあります。音楽的には5分ごとにどこかで聴いたことがある、あるいはよく聴くアリアやメロディーが出てきます。音符の数は多くはありませんが、それだけにどの音も欠くことのできない重要な意味を持っています。
原作はヴィクトル・ユゴーによるもので、シェイクスピアを彷彿とさせるとても強力な物語であり、登場人物の様々な感情が交錯します。

――中でもリゴレットの感情の襞が見事に描き出されていますね。

パッパーノ:妻と子供を亡くしていたヴェルディは父性というテーマに強いつながりを感じていました。それだけにリゴレットの描き方は見事です。中でも第2幕でリゴレットが、ソロのチェロとイングリッシュホルンをバックに娘がどこにいるか教えてほしいと懇願する場面の音楽は本当に美しく、素晴らしいものです。でも同時に鼻歌を歌いながら登場したリゴレットが懇願するに至るまでの展開は音楽的にも、演劇的にも特筆すべきものがあります。また、宮廷が男社会であったことを示すべく、合唱は男声合唱だけになっています。その男社会に生きる典型的な存在がマントヴァ侯爵であり、彼は芸術のパトロンです。彼は芸術を愛するように女性を愛し、捨てていきます。そんな彼を心から愛してしまうジルダは特別な存在で、自らを彼への愛に捧げます。ここに出てくる登場人物の抱く様々な感情は決して特異なものではありません。あなたの中に、あるいはあなたの隣にいる人の中に存在していても不思議ではない感情が多々出てきます。

Photo: Helen Murray/ ROH

――音楽では嵐のシーンが大変な難所と聞きますが。

パッパーノ:歌手にしても、オーケストラにしても、『リゴレット』が簡単という人は誰もいないと思いますよ(笑)。中でもあの嵐の中の3重唱はリズム的にもとても難しく、オーケストラにとっても緊張する難所です。でもその音楽は本当に、本当に素晴らしいもので、聴衆の皆さまにはぜひ楽しんでいただきたいですね。

Photo: Helen Murray/ ROH

――その中でも、聴衆にとっての見どころを一つあげるとしたら?

パッパーノ:そうですね。リゴレットが取りつかれたように繰り返し口にする言葉があります。"Quel Vecchio maledivami!(あの男が呪いをかけた)" です。「あの男」とはモンテローネ伯爵のことで、彼のかけた呪いを指しますが、このセリフがこの物語を推し進めていく、カギとなっています。第1幕第2場でもチェロとコントラバスによるメロディーがその言葉を浮き上がらせます。
実は、このオペラではアリアやアンサンブルだけでなく、レチタティーヴォもまた重要な役割を果たしています。第2幕のマントヴァ侯爵のレチタティーヴォなどシェイクスピアを彷彿させるもので、ヴェルディはレチタティーヴォも1つのツールとして手中に収めています。
このように音楽と演劇が一体となったとき、人々はその物語の世界へとぐいぐい引き込まれてしまうのです。

Photo: Helen Murray/ ROH

――演出について、「暗く、エレガント」と評されていました。演出家のオリヴァー・ミアーズと相談したこと、あるいは要望を出したことなどはありましたか?

パッパーノ:オリヴァー・ミアーズとのコラボレーションのもと『リゴレット』は完成しました。彼とは今年(2024年)のザルツブルク復活祭音楽祭でもタッグを組みます。オリヴァーは洞察力に富み、言葉の読みこみもとても深いのです。確かにこのオペラには暴力的な要素もありますが、まるで高価で美しい短剣を見るような、そんな印象を持たせる舞台です。

インタビュー・文:久野理恵子

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英国ロイヤル・オペラ2024年日本公演
『リゴレット』全3幕
『トゥーランドット』全3幕

公演日

ジュゼッぺ・ヴェルディ
『リゴレット』全3幕

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:オリヴァー・ミアーズ
6月22日(土)15:00 神奈川県民ホール
6月25日(火)13:00 神奈川県民ホール *横浜平日マチネ特別料金
6月28日(金)18:30 NHK ホール
6月30日(日)15:00 NHK ホール

[予定される主な出演者]
マントヴァ公爵:ハヴィエル・カマレナ
リゴレット:エティエンヌ・デュピュイ
ジルダ:ネイディーン・シエラ

ジャコモ・プッチーニ
『トゥーランドット』全3幕

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:アンドレイ・セルバン
6月23日(日)15:00 東京文化会館
6月26日(水)18:30 東京文化会館
6月29日(土)15:00 東京文化会館
7月2日(火)15:00 東京文化会館

[予定される主な出演者]
トゥーランドット姫:ソンドラ・ラドヴァノフスキー
カラフ:ブライアン・ジェイド
リュー:マサバネ・セシリア・ラングワナシャ

入場料[税込]

S=¥72,000 A=¥62,000 B=¥48,000
C=¥38,000 D=¥32,000 E=¥22,000
U29シート=¥10,000 [全公演対象]
U39シート=¥18,000 [6/22(土)『リゴレット』、6/26(水)『トゥーランドット』限定]
※サポーター席=¥122,000 [寄付金付きのS席 S席72,000円+寄付金50,000円]

横浜平日マチネ特別料金[6/25(火)限定]
S=¥49,000 A=¥42,000 B=¥35,000
C=¥30,000 D=¥25,000 E=¥20,000
U29シート=¥8,000 [全公演対象]
※サポーター席=¥99,000 [寄付金付きのS席 S席49,000円+寄付金50,000円]