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Photo: Shoko Matsuhashi

2021/04/21(水)Vol.420

東京バレエ団『カルメン』稽古場レポート
2021/04/21(水)
2021年04月21日号
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東京バレエ団

Photo: Shoko Matsuhashi

東京バレエ団『カルメン』稽古場レポート

斎藤芸術監督のもと、総力を挙げて臨む9年ぶりの上演へ!

〈上野の森バレエホリデイ2021〉の一環として、東京バレエ団が『カルメン』『スプリング・アンド・フォール』によるダブル・ビルを上演する。5月2日(日)の公演を前に、4月中旬、東京バレエ団スタジオにおいて『カルメン』の通し稽古を見ることができた。

このたび上演される『カルメン』は、1967年に世界初演されたアルベルト・アロンソ版(音楽はジョルジュ・ビゼー、ロディオン・シチェドリン)。メリメの原作を基に、ヒロインのカルメン、その恋人の兵士ホセ、闘牛士エスカミリオ、ホセの上官ツニガ、"死"を象徴する存在である運命(牛)らが繰り広げる愛憎劇だ。

世界初演時のタイトル・ロールは"闘う白鳥"として名をはせたマイヤ・プリセツカヤ。その5年後の1972年に東京バレエ団が初演した折には、カルメン役に振付家の同郷キューバ出身の名花アリシア・アロンソを迎えた。1999年には現・芸術監督の斎藤友佳理が初主演し、それに先立ち斎藤は振付家から直接指導を受けた。今回は9年ぶりの上演である。

広いスタジオには、斎藤のほかバレエ・ミストレスの佐野志織、バレエ・スタッフでホセ役を好演してきた木村和夫に加え、団長の飯田宗孝、さらに特別団員でエスカミリオ役を得意とした高岸直樹、先日退団したばかりだが運命(牛)を踊ってきた奈良春夏の姿もあった。斎藤を中心にバレエ団が総力を挙げて大事なレパートリーを伝える。

Photos: Shoko Matsuhashi

舞台は闘牛場。むろんリハーサルなので舞台装置も衣裳もないが、半円状に並べられた椅子を背景に展開される舞踊劇から、スペインの闘牛場の熱気が立ち昇るかのよう。

Photo: Shoko Matsuhashi

カルメン役は上野水香。踊るのは2007年以来14年ぶりで、完全版では初披露となる。最初に登場するときのポーズからして鮮烈極まりない。観るものすべてを射るような強い眼差し。反り立つような脚先。そこから、ゆるぎない強さと美を醸し出し、絵になる。

カルメンは"ファム・ファタール(運命の女)"として男たちを惑わし、女たちとは諍いを起こし思い通りに生きるが、死の定めからは逃れられない......。長年プリマとして第一線であり続ける上野の、貫録あふれれつつ孤高の輝きも帯びた踊りが、カルメンの心情を雄弁に物語る。

ホセの柄本弾は純朴な青年がよく似あう。カルメンとの出会いの後のソロでは、「彼女のことをよく思い出して!」という斎藤のアドバイスを受けて、純真な想いを全身にぶつける。上野と長年コンビを組んできたなかでも最もドラマティックな作品での共演だろう。

エスカミリオは力感あふれる踊りが持ち味の宮川新大。ツニガに入団5年目の注目株・鳥海創を抜擢。アロンソ版ならではのキャラクターである運命(牛)には長身が映える政本絵美を配した。上野と新キャストのバランスも良い感じで固まっている。

クライマックスは、ホセとカルメン、エスカミリオと運命(牛)のドラマが重なり劇的だ。カルメンがホセに刺される場面で、斎藤は上野にこう声をかける。「最後の最後まで、カルメンとして誇りを持って!」。ジプシーの血に流れる"誇り"、生きた愛したという"誇り"から上野カルメンが最期に見せる表情とは――。忘れられない舞台になる予感がする。

Photo: Shoko Matsuhashi

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)

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東京バレエ団
「カルメン」
「スプリング・アンド・フォール」

公演日

6月18日(金)19:00

会場:東京文化会館

予定される配役

「カルメン」
カルメン:上野 水香
ホセ:柄本 弾 ほか

「スプリング・アンド・フォール」
沖 香菜子、秋元 康臣 ほか

指揮:井田 勝大
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
※バレエホリデイ特別ペア割引あり(S、A、B席)
※バレエホリデイ体験シートあり(S、A席)