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写真提供:東京文化会館

NEW2026/02/18(水)Vol.536

東京文化会館の65年とNBS [4]
2026/02/18(水)
2026年02月18日号
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写真提供:東京文化会館

東京文化会館の65年とNBS [4]

東京文化会館とNBSのエピソードを紹介するシリーズ4回目。2月が終わると休館までおよそ2カ月となります。その休館前最後の公演として話題と注目を集めているのがリッカルド・ムーティ指揮『ドン・ジョヴァンニ』。今回はリッカルド・ムーティと東京文化会館に焦点を当ててみましょう。

初登場1985年からおよそ半世紀、"奇跡的な上演の実現"を迎えるいま

リカルド・ムーティが東京文化会館で初めて指揮をしたのは1985年、音楽監督として率いたフィラデルフィア管弦楽団来日公演でした。"フィラデルフィア・サウンド"と称される重厚でパワーあふれるオーケストラの特徴と若きムーティの熱演が繰り広げられました。
1980年代後半からのムーティと東京文化会館といえば、ミラノ・スカラ座! 1986年にミラノ・スカラ座音楽監督に就任したムーティ率いる"イタリア・オペラの殿堂"が初来日を果たしたのは1988年。東京文化会館でムーティは『カプレーティとモンテッキ』を指揮。ピエール・ルイジ・ピッツィ演出の美しい名舞台は、いまも語り草となっています。また、この日本公演ではカルロス・クライバー指揮『ラ・ボエーム』も東京文化会館で上演され、伝説的な名舞台として日本のオペラ・ファンの間に語り継がれています。この日本公演ではNHKホールで『ナブッコ』と『トゥーランドット』も上演されました。2つの会場が使用された理由は一つではありませんが、演出規模の大きい2作はNHKホール、繊細な響が求められる2作は東京文化会館になったのではないか、とも推測されました。

1988年ミラノ・スカラ座日本公演の歓迎パーティーにて
壇上であいさつに立つリッカルド・ムーティ
Photo: NBS

1995年ミラノ・スカラ座はオペラに加えバレエ団も日本公演を行いました。ムーティが振った『椿姫』は、NHKホールでの公演でしたが、バレエ団による『眠れる森の美女』とジュゼッペ・シノーポリ指揮による『西部の娘』が東京文化会館で上演されました。そして次に東京文化会館でムーティが指揮したミラノ・スカラ座日本公演は2000年『運命の力』。実はこの年は9月にはミラノ・スカラ座日本公演、11月にはウィーン国立歌劇場日本公演が東京文化会館で開催されるという、オペラ・ファンにとってはなんともゴージャスな2カ月でした。ムーティ率いるミラノ・スカラ座日本公演の最後となったのは2003年。東京文化会館での『マクベス』とNHKホールでの『オテロ』でした。

2005年にスカラ座を離れたことで、ムーティのオペラはもう日本では見られない?と不安になったオペラ・ファンにとって、無類の感激となったのは2014年のローマ歌劇場日本公演でしょう。ムーティとイタリアの魂が込められた『ナブッコ』と『シモン・ボッカネグラ』が、東京文化会館に響きわたりました。

2014年ローマ歌劇場日本公演
『シモン・ボッカネグラ』カーテンコールより
Photo: Kiyonori Hasegawa
2014年ローマ歌劇場日本公演の際
オケピットへの通路の壁に書き残されたチェロ奏者たちの名前
Photo: NBS

そして東京文化会館におけるムーティの輝かしい名演、次はシカゴ交響楽団とともに! 2016年に7年ぶりとなるシカゴ響来日公演を音楽監督として率いたムーティは、東京文化会館での素晴らしい演奏、聴衆の反応に対し、即座に次回2019年の日本公演への意欲を高めたと言われています。2回目の公演も熱狂を呼んだ大成功となりましたが、ムーティは2023年にシカゴ響の音楽監督を退任し、終身名誉音楽監督となりました。

2016年シカゴ交響楽団日本公演
Photo: Kiyonori Hasegawa

"円熟の巨匠"の域に入ったムーティと東京文化会館の関係として欠かせないのが、2019年から東京文化会館を拠点として開始された「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」です。2019年『リゴレット』、2021年『マクベス』、2023年『仮面舞踏会』、2024年『アッティラ』、2025年『シモン・ボッカネグラ』(2025年のみ会場は別)を開催しました。「東京文化会館で、若者にモーツァルトやワーグナーだけでなくイタリアの作曲家を尊重することを教えたい」というムーティは、同ホールを単なるエンターテインメントではなく、思想としてのオペラを発信する場として在る="イタリアの精神を伝える場"としての存在を高く評価しているそうです。

さて、東京文化会館とムーティとのつながりを追ってきましたが、ここで振り返るべきはやはりムーティのモーツァルト・オペラということになるでしょう。東京文化会館長期休館前の最後となる『ドン・ジョヴァンニ』で、ムーティの日本でのダ・ポンテ三部作が完結となるのですから! 2008年のウィーン国立歌劇場日本公演『コジ・ファン・トゥッテ』東京文化会館、2016年同日本公演『フィガロの結婚』神奈川県民ホールを経て、3作目の『ドン・ジョヴァンニ』は東京文化会館での公演となります。今回の『ドン・ジョヴァンニ』には、国際的な注目も集まっているといわれます。その理由には、近年、本拠地であるヨーロッパでもムーティが舞台つきのオペラを指揮する機会が限られていることもありますが、「東京文化会館の休館という特別な事情が、この奇跡的な上演を実現させた」ということもあるとか。東京文化会館は、海外でもTokyo Bunka Kaikan と日本語そのままの名称で呼ばれています。日本を代表する劇場として、世界に認められている証といえるでしょう。

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