NEW2026/11/04(水)Vol.553
| 2026/11/04(水) | |
| 2026年11月04日号 | |
| What’s in the BAG 特集 |
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| 東京バレエ団 |
Photo: Shoko Matsuhashi
カバンの中を見ると、その人がわかる――。舞台上の姿からは知ることのできない愛用品や宝物、毎日の小さな習慣が、バッグには詰まっています。バッグの中身を手がかりに、ダンサーたちの舞台の外の素顔に迫る連載、第2回です!

第1回に登場してくれた伝田陽美から「金子さん、登山リュックみたいなバッグを背負ってますよ」と聞いたことを告げると、金子仁美は「もう登山リュックは卒業したんですよ」と明るく笑った。
「前までは40リットルも入るリュックでバレエ団に通っていました。心配性なので『何かあったときのために持っておこう』というものが積み重なって、荷物が多くなってしまうんです。でも、さすがに肩が凝るし、電車のなかで窮屈なので、最近小さいサイズに変えました。と言っても25リットル入るリュックなので、普通よりはちょっと大きめかも(笑)」
今は背中に収まるくらいのサイズになったという。今回は『白鳥の湖』上演中の楽屋で話を聞いたので、件の25リットルのリュックは見ることができなかったが、代わりに劇場内で使うバッグを持ってきてくれた。
◆劇場内で使うバッグの中身
「劇場入りのときはいつも永久メイちゃんがチャコットとコラボレーションしたバッグを使っています。"眠り"のゲストとして来てくれたとき、プレゼントしてくれたもので、繊細な素材なので気をつけながら使っているんですが......(笑)」
中にはトレーニングやケア用のアイテムがぎっしり!
「ケア用グッズはいつでもどこでも使えるように持ち歩いています。気がついたときに、ボールなどを転がして足裏やお尻をほぐしています。マッサージガンは主に腰や足のケアのために使っていますね。『いいな』と思うとすぐ持ち歩いてしまうので、荷物は増えるいっぽうです」
シャネルの香水「チャンス」は「プレゼントしてもらったものなんです」と嬉しそうな表情を浮かべる。
「(連載第1回で伝田)陽美さんが誕生日のときに仲間内でプレゼント交換していると話していたと思いますが、この香水もそれなんです。先輩方にお願いして誕生日にプレゼントしていただきました。落ち着く香りで大好きです」
劇場用バッグのなかでもひときわ目についたのが、チアリーダーのお人形(写真右下)と黒地に美しい花々の模様が施された大判のストール(写真左中段)。
「お人形のほうは初めて主役に選ばれたとき、同期のダンサーがプレゼントしてくれました。この子はいつも持ち歩いています。黒のストールは劇場入りのときだけ持ってくる"お守り"のような存在です。数年前、私が怪我で降板したとき、団長の(斎藤)友佳理さんがくださった、ロシア製のもの。これを巻いてくれて『温めて保護しなさい』と言ってくださったのが嬉しくて、毎公演、お守り代わりに持ってきています」
もうひとつ、お守り代わりに持っているのが、お母さま手製のアイテム。
「母は手先が器用で、編み物が得意。お手製のショールやポーチを作ってくれます。この水色のショール(写真左)は夏用ですが、違う毛糸を使った冬用もあるんですよ。茶色のポーチ(写真中央)には小腹が空いたときのための飴を入れてあります」
金子自身、アクセサリー作りが得意。それはお母さまから受け継いだ才能なのだろう。
◆シューズバッグの中身
次に見せてもらったのは、シューズバッグ。シューズ入れに使っているのは、ソリストの井福俊太郎が手がけるブランド「Pelle」のもの。ブランドが誕生したとき、井福からもらった大切なバッグだそう。
劇場に入るときは、トウシューズを4足以上持ってきている。
「入団当初はグリシコのフェッテを履いていたのですが、途中で見直して、今はブロックのヘリテージを履いています。今回は硬さの違うものを4足持ってきましたが、振付によってはもっと持ち込むこともあります。あと念のため、新品も1足は持ってくるようにしています。バレエシューズも今はブロックのものを履いています」
金子もトウシューズのプラットフォーム(床に接する面)をぐるりと丁寧にかがっているが、縫い方や糸のこだわりは?
「ユザワヤで買った刺しゅう糸でまず1周かがってから、ダイソーのタコ糸で2周目をがります。ダイソーのタコ糸は数種類あるのですが、お肉をしばるタコ糸だと太すぎて合わないので、これ(写真左下)がおすすめです!」
◆金子仁美の日々の暮らし
金子は2022年、ソリストの後藤健太朗と結婚した。以前、〈めぐろバレエ祭り〉内のトークイベントで、金子が「夫は私の作る茄子の揚げ浸しが好き」と話していて、仲睦まじいふたりの様子がうかがえた。おふたりはどのような生活を?
「夫婦そろって片づけが苦手なんです。多少散らかっていてもお構いなし。お互い気にしないので、なかなか片づかなくて(笑)。朝もギリギリまで寝たい派で、朝食も手をかけずに食べられるものが多いです。皮だけむけばOKなバナナやキウイ、トマトが多いですね」
「けっこう、がさつかも」と照れたように笑うが、忙しい日々のなか、無理をしすぎずに生活を楽しんでいる。
「本番が続くと留守が長いので、毎日自炊をすると大変だから作り置きをします。今回は初日に健太朗くんが大鍋でカレーを作ってくれて、それを食べ続けてもう3日目(笑)。あとは夏でもお鍋にして、手っ取り早くお肉と野菜を摂るようにしたり......なるべく自炊でバランスのよい食生活を心がけています」
夜は毎晩、湯船に浸かって、入浴後はチャコットのトレーニングサンダル『グーポ』で丁寧にケアをしている。
「私は何度か、ふくらはぎの肉離れを経験しているので、『グーポ』を愛用しています。履いてかかとをつけるだけでふくらはぎが伸びますし、履いた状態で前屈をするとハムストリングスまでしっかり伸ばせます。お風呂上がりに100回くらい、グーポを履いてストレッチして、マッサージしてから寝ています」
お休みは取れているのかを聞くと「取れてます!」と即答。
「お休みの日はたくさん寝て、お散歩して......。事前に予定を立てるのがあまり得意ではないので、思い立ったときに、そのとき思い浮かんだ場所に行きます。あとアクセサリーを作るのが好きで、それもいい気分転換になっています。集中して無心になれると頭がすっきりするんですよね」
どんなにハードスケジュールが続いても、金子がいつも晴れやかな笑顔を見せてくれる秘密は、この私生活にあるのだろう。その自然体で大らかな姿は、彼女が踊るオーロラ姫に重なって見えた。
取材・文=富永明子(編集者・ライター)