2020/09/16(水)Vol.406
2020/09/16(水) | |
2020年09月16日号 | |
ダンサーズ・トピックス 特集 |
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バレエ |
Photo: Yuji Namba
インタビューしたのは2月〜3月のパリ・オペラ座バレエ団日本公演の際。3年前の〈バレエ・スプリーム〉公演の思い出や作品のことなど、数々の質問に熱く、真摯に答えてくれた。
ーー3年前の〈バレエ・スプリーム〉では、英国ロイヤル・バレエ団のダンサーたちとの競演が大いに盛り上がりました。
ユーゴ・マルシャン:これまで馴染みのなかったレパートリーに触れることができたし、何と言っても(『眠れる森の美女』ディヴェルティスマンで)青い鳥を踊ったことがいい思い出に! コーダの部分を(英国ロイヤル・バレエ団のフランチェスカ・ヘイワードとマルセリーノ・サンベと)3人で一緒に踊ったのがすごく楽しかった(笑)! 僕らはレパートリーも違うし雰囲気も違うので、お互いに会って知るのはとっても面白いこと。自分たちがどういうものを持っているのか実感できるし、自分たちに何が足りないか、どこを掘り下げていくべきかということもわかります。
ーーでは、オペラ座らしさ、とはどんなところにあると思いますか。
マルシャン:オペラ座で踊りを習う時は、単に技術の向上を目指すのではなく、踊りの一つひとつのステップを言語として語ることを目指して学びます。動きのコーディネーションをたくさん練習することで、踊りはストーリーを語る手段となる。それが、オペラ座の力なのです。
ーー日本公演でエトワールに任命されて3年。その後いろいろな経験をされたのではないでしょうか。
マルシャン:たくさんあります!
新たな作品では、サシャ・ヴァルツの『ロミオとジュリエット』がすごく好きでした。従来の『ロミオとジュリエット』とは全く違う舞踊言語に、音楽もベルリオーズと、とても興味深い経験でした。ドロテ・ジルベールと組んで『白鳥の湖』を踊ったことも、夢が叶って嬉しかった! 芸術的にも感情的にも全身全霊を込めて取り組んだので、終わった時には疲れ果て、5日間も休まざるをえない状況に(笑)。
昨年12月3日には、オペラ座が長期ストに入る直前にバスティーユで1回だけ『ライモンダ』の公演が行われましたが、僕はその日に主役を踊ることができた! たった1回の公演です!!
それから、怪我──。脚を骨折して4カ月半もの間、休んでいました。これまでになかった経験です。ショックでしたが、身体のことを考え直すことができました。
プライベートでも変化はあるけれど、一生懸命立ち向かうことで、踊りも自分自信も変化するもの。エトワールに任命されて1年ほど経った頃、『オネーギン』で主役を踊ることになりました。人生でいろんなことを経験するからこそ、また違ったオネーギンを表現できるようになるのではと思います。
ーー2019年の9月に杉本博司演出『鷹の井戸』を踊って大きな話題に。現代作品には、どんな思いで取り組んでいますか。
マルシャン:その後クリスタル・パイトの作品も踊っています。大作ではありませんが、内面的に掘り下げていくようなところがとても面白く感じました。クラシックの作品と身体的に求められるものが異なるので、同時にやるのはとても大変ですが、いま生きている振付家と作品を創ることはとても興味深く、自分自身の中を探ることができる。学ぶことが多いと思っています。
取材・文 加藤智子 フリーライター
ユーゴ・マルシャン Hugo Marchand
パリ・オぺラ座バレエ学校を経て、2011年にパリ・オペラ座バレエ団に入団。2017年3月3日、日本公演『ラ・シルフィード』終演後に、芸術監督オレリー・デュポンからエトワール任命が発表された。同バレエ団のエトワール任命は公演終了後に行われるのが恒例となっているが、外国の舞台で行われることは珍しく、日本公演では初のことだった。