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ロベルト・ボッレ、 マチュー・ガニオ <br>『失われた時を求めて』 (2018年)<br> Photo: Kiyonori Hasegawa

2021/05/06(木)Vol.421

第16回世界バレエフェスティバルの魅力(2)
2021/05/06(木)
2021年05月06日号
TOPニュース
第16回世界バレエフェスティバル

ロベルト・ボッレ、 マチュー・ガニオ
『失われた時を求めて』 (2018年)
Photo: Kiyonori Hasegawa

第16回世界バレエフェスティバルの魅力(2)

舞踊評論家の新藤弘子さんによる「〈世界バレエフェスティバル〉の魅力」2回目は、このフェスティバルの楽しみ方について紹介していただきます。

名舞台の思い出とともに現在の舞台を観る

世界のトップ・ダンサーが一堂に会し、古典からコンテンポラリーまで多彩な作品を披露する〈世界バレエフェスティバル〉。異なる歴史や文化に支えられた超一流の踊り手たちが、様々な作品を通して個性を競う姿は、それだけでも計り知れない魅力がある。AプロとBプロ、ガラを含めれば3種類のプログラムの中で、観客はダンサーの妙技を楽しみながら、最先端のバレエ、ダンスの世界地図を体感することができるのだ。
第15回参加のスターたちの舞台は、踊り手の個性とそれぞれの伝統が響き合い、素晴らしい見応えだった。たとえばパリ・オペラ座バレエ団のドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオが踊る『マノン』『シンデレラ』の香水のような甘美さ。ボリショイ・バレエのマリーヤ・アレクサンドロワとウラディスラフ・ラントラートフによる『ファラオの娘』『ローレンシア』の豪放かつ繊細な古典の魅力。ハンブルク・バレエ団のシルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコらが踊るノイマイヤー作品の深い余韻。

マリーヤ・アレクサンドロワ、ウラディスラフ・ラントラートフ『ファラオの娘』(2018年)
Photos: Kiyonori Hasegawa

同じ作品を異なるダンサーの踊りで観比べるのも、醍醐味の一つだ。ミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマン、マリア・コチェトコワとダニール・シムキン、タマラ・ロホとイサック・フェルナンデスの3組が、各プロの最後を飾る『ドン・キホーテ』で鮮やかなテクニックを披露したのは記憶に新しい。レオニード・サラファーノフら男性3人が共演した『アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?』のように、意外な顔合わせが実現するのも見逃せない。

マリア・コチェトコワ、ダニール・シムキン『ドン・キホーテ』(2018年)
Photo: Kiyonori Hasegawa

そして長年のファンが知る〈世界バレエフェスティバル〉のもう一つの、最高の楽しみ方が、「名舞台の思い出とともに現在の舞台を観る」ことではなかろうか。
3年に1度というペースは、時の流れを感じるには絶妙だ。若くして登場したダンサーが世界的なスターに成長し、円熟の踊りを見せていたダンサーが感謝とともに卒業を宣言する。作品自体も移り変わり、観客側にも人生経験が加わり、鑑賞眼も肥えていく。1988年の第5回で初登場したシルヴィ・ギエムが、マニュエル・ルグリやジョナサン・コープらと組んで『グラン・パ・クラシック』『マノン』『ヘルマン・シュメルマン』などを踊り、エスカレートする観客の期待を毎回楽々と超えていったのは、もはや伝説。『ロミオとジュリエット』『椿姫』『オネーギン』など演劇的バレエの傑作が、アレッサンドラ・フェリら各世代を代表するダンサーによって踊り継がれていく様に感銘を受ける向きも多いだろう(誰もがマイ・ベストはこれ、という名舞台を胸に刻んでいるはずだ)。そしてジル・ロマンのように、独自の輝きと存在感を見せるダンサーもいる。彼が若き日、そして年輪を加えながら見せた『アダージェット』は、〈世界バレエフェスティバル〉を貫く時間軸の象徴のように、深く心に残っている。

(左)シルヴィ・ギエム『グラン・パ・クラシック』(1997年)
Photo: Kiyonori Hasegawa
(右)ジル・ロマン『アダージェット』(2006年)
Photo: Kiyonori Hasegawa

今を盛りと咲き誇るダンサーの舞台は、それを観ることのできた幸運をしみじみと感じさせてやまない。前回ロベルト・ボッレとガニオが踊った『プルーストー失われた時を求めてー』の眩しさは、未だ目に焼き付いている。さて今回はどうだろう? 胸をときめかせて開幕を待つ、何よりそれが、このフェスティバルを楽しむ極意なのかもしれない。

新藤弘子(舞踊評論家)

公式サイトへ チケット購入

第16回世界バレエフェスティバル

公演日

Aプログラム

8月13日(金)14:00
8月14日(土)14:00
8月15日(日)14:00
8月16日(月)14:00

Bプログラム

8月19日(木)14:00
8月20日(金)14:00
8月21日(土)14:00
8月22日(日)14:00

ガラ

8月25日(水)14:00

会場:東京文化会館(上野)

予定されるプログラム(順不同)

「海賊」
「ドン・キホーテ」
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”
「グラン・パ・クラシック」
「マルグリットとアルマン」
「オネーギン」
「ロミオとジュリエット」
「3つのプレリュード」 ほか

※上記の演目はA・Bプロいずれかで上演されます。
プログラム内容の詳細は公式サイトをご覧ください。


指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:菊池洋子

入場料[税込]

Aプロ、Bプロ
S=¥27,000
A=¥24,000
B=¥21,000
C=¥17,000
D=¥13,000
E=¥ 9,000
U25シート ¥4,500
※2演目セット券あり(S,A,B席)
期間限定発売
※ペア割引あり(S,A,B席)
※親子割引あり(S,A,B席)


ガラ
S=¥33,000
A=¥30,000
B=¥27,000
C=¥22,000
D=¥18,000
E=¥13,000