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Photo: Shoko Matsuhashi

2021/05/19(水)Vol.422

第16回世界バレエフェスティバル
特別インタビュー(2)アレッサンドラ・フェリ
2021/05/19(水)
2021年05月19日号
バレエ
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インタビュー
第16回世界バレエフェスティバル

Photo: Shoko Matsuhashi

第16回世界バレエフェスティバル
特別インタビュー(2)アレッサンドラ・フェリ

〈世界バレエフェスティバル〉出演ダンサーのインタビュー・シリーズ、2回目はアレッサンドラ・フェリ。ロンドン在住の實川絢子さんによるインタビューです。

「今の私が選ぶ作品は、年齢も、何も隠す必要のない、私のこれまでの人生経験を伝えられる作品」

――度重なるロックダウンに劇場閉鎖と、ダンス界にとっても前代未聞の一年となりました。

フェリ : 自分自身と向き合う時間がたっぷりありました。種をまいた後、冬の間雪の下にはちゃんと命が育っているように、この困難な日々からも何か独創的なものが生まれてくるはず、そう思いながら過ごしてきました。

一方、日々のレッスンを続ける努力をしても、やはり以前とまったく同じというわけにはいかないので、身体のコンディションに関しては不安もありました。そんな時に私を救ってくれたのが、バレエという厳格な規律でした。どんなに落ち込んでいる時でも、起きてすぐ何も考えずにレッスンをすることで、世界は止まっていないんだと実感することができました。このことが、世界中のダンサーを救ったのではないでしょうか。オンラインレッスン等を通じて、ダンスコミュニティが団結したことも、素晴らしいことでした。

でも、私の一年間のスケジュールは見事に白紙になってしまいました。バレエ団に所属していない私にとっては、キャンセルされた公演は二度と戻ってきません。もう20代でない私にとって、今出来なければ、もう永遠に起こり得ないかもしれない。その事実を受け入れるのは、なかなか辛いことです。

そんな中で、また自由が戻ってきたら何をしたいかじっくり考えた結果、二つの新しいプロジェクトに挑戦し始めました。一つ目は、私自身がプロデュースするベジャール振付の『L'Heure Exquise(恍惚の時)』という作品。台詞が多い役のため、ロックダウン中からボイストレーニングを始めています。もう一つは、教えること。昔は想像もつきませんでしたが、これまで培った経験と知識のすべてを与えシェアすることは、本当に素晴らしいことだと気づきました。

――〈世界バレエフェスティバル〉には、1985年から前回の2018年まで、これまでに6回出演されています。初出演の第4回は、ジョルジュ・ドンやカルラ・フラッチなど、錚々たる顔ぶれでした。

フェリ : 初出演した当時はインターネットもなく、本の中の写真でしか見ることができなかった名だたるダンサーの舞台を目の当たりにできて、夢のようでした。

正直なところ、〈世界バレエフェスティバル〉は、観客よりもむしろ、出演者が楽しむためのイベントなのでは、と思う時すらあります(笑)。普段目にするのとは違う踊り方や、めったに観られない作品に出合える貴重な機会であり、出演者同士が親しくなって皆で支え合える、本当に特別なイベントです。

私は何年にもわたって出演させていただき、さまざまな世代のダンサーと、その移り変わりを見てきました。それはまるで、ダンスの歴史を間近で目撃してきたようなものです。最年少で出演した私が、いつの間にか最年長のバレリーナになっていましたが、前回も22歳で出演したときと同じくらいワクワクしましたね。

1994年、第7回世界バレエフェスティバルより
『ロミオとジュリエット』(マキシミリアーノ・グエラと)
Photo: Kiyonori Kasegawa

――舞台復帰されて8年、ダンスに対する今の思いや今後の展望をお聞かせください。

フェリ : ダンスは私にとって、私という人間の魂を表現するための言語です。当然、私の身体は以前とは違います。どんなにトレーニングをしても、取り戻せない部分があるのは事実。でもダンスは、それ以上のものです。ダンスは人生であり、人生がダンスになります。

今の私が選ぶ作品は、年齢も、何も隠す必要のない、私のこれまでの人生経験を伝えられる作品。そんな作品を通して、人生をあらゆる形で、あらゆる側面から祝福したいと思っています。歳を重ねると、人としてより深みを増し、ある意味強くもなりますが、同時に脆くもなります。私はそれをすべて見せたいし、人間のそういった部分を恥じて隠したくはないんです。

将来については、特にプランは立てていません。このパンデミックは、私たちにプランを立てず、今いる場所、今できることに集中することの大切さを教えてくれたと思います。もちろん、お客さまに何かを与えられると思う限り、踊り続けたいとは思っていますが。

第15回世界バレエフェスティバル(2018年)より
『オネーギン』パ・ド・ドゥ(マルセロ・ゴメスと)
Photo: Kiyonori Hasegawa

――最後にファンの皆様へ一言お願いします。

フェリ : この夏、皆さまとあの素晴らしいイベントを共有できるなら、それだけで私は感激してしまうと思います。それはきっと、幸福感と希望に満ちたダンスの祝祭になるでしょう。このフェスティバルは、私たち皆が愛するものの祝祭ですから、ぜひ一緒に新たな始まりを祝いましょう!

實川絢子(在ロンドン 舞踊ライター)

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第16回世界バレエフェスティバル

公演日

Aプログラム

8月13日(金)14:00
8月14日(土)14:00
8月15日(日)14:00
8月16日(月)14:00

Bプログラム

8月19日(木)14:00
8月20日(金)14:00
8月21日(土)14:00
8月22日(日)14:00

ガラ

8月25日(水)14:00

会場:東京文化会館(上野)

予定されるプログラム(順不同)

「海賊」
「ドン・キホーテ」
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”
「グラン・パ・クラシック」
「マルグリットとアルマン」
「オネーギン」
「ロミオとジュリエット」
「3つのプレリュード」 ほか

※上記の演目はA・Bプロいずれかで上演されます。
プログラム内容の詳細は公式サイトをご覧ください。


指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:菊池洋子

入場料[税込]

Aプロ、Bプロ
S=¥27,000
A=¥24,000
B=¥21,000
C=¥17,000
D=¥13,000
E=¥ 9,000
U25シート ¥4,500
※2演目セット券あり(S,A,B席)
期間限定発売
※ペア割引あり(S,A,B席)
※親子割引あり(S,A,B席)


ガラ
S=¥33,000
A=¥30,000
B=¥27,000
C=¥22,000
D=¥18,000
E=¥13,000