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2021/05/19(水)Vol.422

特別寄稿 〈世界バレエフェスティバル〉に寄せて(1) 
植田景子(宝塚歌劇団・演出家)
2021/05/19(水)
2021年05月19日号
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第16回世界バレエフェスティバル

特別寄稿 〈世界バレエフェスティバル〉に寄せて(1) 
植田景子(宝塚歌劇団・演出家)

〈世界バレエフェスティバル〉は、バレエ・ファンにとっては言わずもがなのバレエ界最高峰の"祭典"ですが、これをきっかけにバレエの虜になったという方も多いようです。今夏の開催に向けて、さまざまな分野の方から〈世界バレエフェスティバル〉との関わりや思いを寄せていただきます。1回目は、宝塚歌劇団初の女性演出家として活躍する植田景子さんです。

学びと気づきだらけの公演は、世界の一流の芸術に触れられる楽しみ以上の貴重な機会

奈良の田舎で、舞台とは全く無縁に育った私が、10代の時、宝塚歌劇に出会い、その舞台を創る人になろうと決意し、そのために、色々な舞台を観て勉強せねばと、本格的にバレエを見始めたのは、20代になってからでした。海外のバレエも作品も何も知らなかった私が、1994年春、ハンブルク・バレエ団来日公演を観て心奪われ、人生が変わりました。敬愛するジョン・ノイマイヤー氏の仕事を間近で見たくて、2003-2004年度の文化庁新進芸術家海外研修制度でハンブルク・バレエ団に留学。その時のご縁が公私共に今に繋がり、私にとって、バレエの世界から与えて頂いたものの大きさは計り知れません。こうして今、日本が世界に誇る〈世界バレエフェスティバル〉について書かせて頂けること、心から光栄に感じています。

マリシア・ハイデ&リチャード・クラガン
『あなたに逢うまでの百日』(1994年)
Photos: Kiyonori Hasegawa

初めて観た〈世界バレエフェスティバル〉は1994年。

当時、20代だった私は、観劇した舞台は全て、勉強の為に観劇ノートを書いていました。それを読むと、マリシア・ハイデとリチャード・クラガンが踊った世界初演『あなたに逢うまでの百日』(デ・オリベイラ振付)が良かったと、その感動が延々と綴られています。アレッサンドラ・フェリとウラジーミル・マラーホフの『マノン』、シルヴィ・ギエム、パトリック・デュポン......若いバレエ・ファンの方にとっては、伝説のようなスターダンサーたちの競演。今にして思うと、バレエ入門中の時期に、このような贅沢な舞台が観られたのは、本当に幸運なことでした。その次の1997年には、ハンブルク・バレエ団のロイド・リギンズとアンナ・ポリカルポヴァが踊るノイマイヤー振付『カルメン』が観られた喜びと、バリ・オペラ座のマニュエル・ルグリとモニク・ルディエールが踊った『椿姫』が、ハンブルクのダンサーとは印象が違うと書いています。その頃の私にとって、このような公演が観られることは、楽しみ以上の、世界の一流の芸術に触れられる貴重な機会。学びと気付きだらけで、宝塚の演出助手の安月給の身には少々、高いチケットでも、どんなに忙しくても、絶対に見に行くぞ!と、3年に一度の夏を心待ちにしていました。

モニク・ルディエール&マニュエル・ルグリ『椿姫』(1997年)
Photo: Kiyonori Hasegawa
アンナ・ポリカルポヴァ&ロイド・リギンズ『カルメン』(1997年)
Photo: Kiyonori Hasegawa

その時代時代に、世界の旬のダンサーたちが日本に会し、クラシックからコンテンポラリー、時には、この機会にしか見られない新作まであり、〈世界バレエフェスティバル〉の歴史は、まさに世界のバレエ史を映し出すと言っても過言ではない唯一無二の祭典。その歴史の中でも、この夏は、特別な意味を持つ公演になると思います。

私事で恐縮ですが、この5月のゴールデンウィークに開幕予定の自作の公演が中止になりました。コロナ禍の今、同じ辛い想いをしている人が沢山いて、やむを得ないことだと言い聞かせながら、行き場のない悔しさに泣くことすら出来ず......。そして、この原稿を書くために、昔の〈世界バレエフェスティバル〉のプログラムを眺めているうち、わけもなく涙が溢れ出しました。この涙は何だろうと思いつつ、これまでに出会った素晴らしい舞台から、どれほどの人生の豊かさを与えてもらったか、そして今、世界中のアーティスト達が舞台に立てずにどんな想いでいるか、様々な感情が胸に去来し、心の底から、今夏の〈世界バレエフェスティバル〉の成功を願わずにはいられません。主催者の方々の尽力と覚悟に敬意を表し、この祭典が、バレエを愛する人々の希望の光となりますよう、祈りを込めて......。

植田景子(宝塚歌劇団・演出家)

植田景子(うえだ けいこ)


1994年宝塚歌劇団入団。1998年宝塚歌劇団初の女性演出家としてデビュー。大劇場デビュー作は2000年『~夢と孤独の果てに~ルートヴィヒII世』。2018年度エイボン女性年度賞芸術賞受賞。最新作は「バレエ・リュス」の史実に着想を得たミュージカル『Hotel Svizra House ホテル スヴィッツラ ハウス』(宙組公演、2021年4月)。著書に「Can you Dream? -夢を生きる-」がある。

公式サイトへ チケット購入

第16回世界バレエフェスティバル

公演日

Aプログラム

8月13日(金)14:00
8月14日(土)14:00
8月15日(日)14:00
8月16日(月)14:00

Bプログラム

8月19日(木)14:00
8月20日(金)14:00
8月21日(土)14:00
8月22日(日)14:00

ガラ

8月25日(水)14:00

会場:東京文化会館(上野)

予定されるプログラム(順不同)

「海賊」
「ドン・キホーテ」
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”
「グラン・パ・クラシック」
「マルグリットとアルマン」
「オネーギン」
「ロミオとジュリエット」
「3つのプレリュード」 ほか

※上記の演目はA・Bプロいずれかで上演されます。
プログラム内容の詳細は公式サイトをご覧ください。


指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:菊池洋子

入場料[税込]

Aプロ、Bプロ
S=¥27,000
A=¥24,000
B=¥21,000
C=¥17,000
D=¥13,000
E=¥ 9,000
U25シート ¥4,500
※2演目セット券あり(S,A,B席)
期間限定発売
※ペア割引あり(S,A,B席)
※親子割引あり(S,A,B席)


ガラ
S=¥33,000
A=¥30,000
B=¥27,000
C=¥22,000
D=¥18,000
E=¥13,000